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旅路 〜カプリース〜
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空に浮かぶ2頭のドラゴンは石造りの塔に到着しても、暫くの間、降りてこようとしなかった。
どうしたら良いのかとキョロキョロとしている藍色のドラゴンに比べて、漆黒のドラゴンは何かを見極めようと見下ろしている様だった。
『うわ、厄介なのが来たな。』
太陽の光を遮るように手を翳して空を見上げたリオンが顔を顰めた。
『あらぁ。
弟にご不満?』
耳元で聞こえたポワソンの囁きにリオンはゾクっとした。
『やめろ!
ったく、お前ら姉弟は!
大体、同じ親から産まれたからと言って、お前等に姉弟としての感情はないだろうが。』
『あら、貴方によりかは愛情を感じているわよ。』
そう微笑むとポワソンは漆黒のドラゴンにゆっくりと手を振った。
「ドラゴンって兄弟がいるの?」
目を丸くするナギにポワソンは優しく目を細めた。
『えぇ、あの黒いドラゴンは私と同じ親から産まれた正真正銘の弟よ。
でも、ドラゴンは親離れが早いの。
産まれて数ヶ月で独立する個体もいるのよ。
あの子と私には150年余りの年の差があるから、互いに過ごした時間はないの。
お互い自立しているしね。
それでも、私は可愛いと思っているわよ。』
ポワソンの声が聞こえたのだろう。
漆黒のドラゴンは眉間に皺を寄せると素早く人型になり地面に降り立った。
『余計な事を言わなくて結構。
姉殿。』
『あら、ごめんなさん。』
S字に体をくねらせ微笑むポワソンを睨み付けたのは、漆黒の髪をオールバックにした目の鋭い男だった。
ドーーンッ!!
背後で木々が倒れていった。
「何事だ?」
慌てたヴァルトにマルクルが、辛うじて見える、ひっくり返った藍色のドラゴンの足を指差した。
「何か、よろけて転けていったぞ。」
漆黒のドラゴンの唐突の行動に慌てたのは藍色のドラゴンだった。
動く気配のなかった漆黒のドラゴンが突如、人型になった事でパニックになり上空でバランスを崩し、鬱蒼とする木々の中に落ちていったのだ。
バタつかせていた足が消え、木々の中から頭を摩りながら男が出て来た。
『何だよ。トラゴス。
降りるなら言ってよ。
ビックリしちゃったじゃないか。』
藍色の髪の間から草木が見え隠れしている男に真っ黒なオールバックの男が涼しい目を向けた。
『すまん。』
藍色の髪の男は自分を見つめるイオリ達に気づくと苦笑した。
『もっと格好良い登場したかったな。
俺は“顧慮する激昂”リブラ。
カプリースへようこそ、客人。』
爽やかに笑う男にイオリはペコリと会釈した。
『お前、相変わらず鈍臭いな。
何やってんだよ。』
ケラケラと笑うリオンにリブラは肩パンをした。
『言うなよ。
恥ずかしいだろ。』
仲良い友人のような2人の様子に安堵していると、イオリの前に真っ黒なオールバックの男が立った。
『初めてお目に掛かる。
私は“至誠なる叡智”トラゴス。
今代の“愛し子”に会えて嬉しく思う。』
見た目通りの堅い挨拶にイオリはニコリとした。
「初めまして、トラゴスさん。
冒険者をしてます。イオリです。
カプリースの叡智にお会いできて光栄です。」
イオリの挨拶にトラゴスは表情を変える事なくコクリと頷いた。
『“愛し子”は我らが王への面会を求めているのだな?
ならば、我らからの試練を受けねばならぬ。』
今までのドラゴン達と違い、イオリの要件を端的に処理するトラゴスの登場でカプリースの滞在は大きく動き出すのだった。
どうしたら良いのかとキョロキョロとしている藍色のドラゴンに比べて、漆黒のドラゴンは何かを見極めようと見下ろしている様だった。
『うわ、厄介なのが来たな。』
太陽の光を遮るように手を翳して空を見上げたリオンが顔を顰めた。
『あらぁ。
弟にご不満?』
耳元で聞こえたポワソンの囁きにリオンはゾクっとした。
『やめろ!
ったく、お前ら姉弟は!
大体、同じ親から産まれたからと言って、お前等に姉弟としての感情はないだろうが。』
『あら、貴方によりかは愛情を感じているわよ。』
そう微笑むとポワソンは漆黒のドラゴンにゆっくりと手を振った。
「ドラゴンって兄弟がいるの?」
目を丸くするナギにポワソンは優しく目を細めた。
『えぇ、あの黒いドラゴンは私と同じ親から産まれた正真正銘の弟よ。
でも、ドラゴンは親離れが早いの。
産まれて数ヶ月で独立する個体もいるのよ。
あの子と私には150年余りの年の差があるから、互いに過ごした時間はないの。
お互い自立しているしね。
それでも、私は可愛いと思っているわよ。』
ポワソンの声が聞こえたのだろう。
漆黒のドラゴンは眉間に皺を寄せると素早く人型になり地面に降り立った。
『余計な事を言わなくて結構。
姉殿。』
『あら、ごめんなさん。』
S字に体をくねらせ微笑むポワソンを睨み付けたのは、漆黒の髪をオールバックにした目の鋭い男だった。
ドーーンッ!!
背後で木々が倒れていった。
「何事だ?」
慌てたヴァルトにマルクルが、辛うじて見える、ひっくり返った藍色のドラゴンの足を指差した。
「何か、よろけて転けていったぞ。」
漆黒のドラゴンの唐突の行動に慌てたのは藍色のドラゴンだった。
動く気配のなかった漆黒のドラゴンが突如、人型になった事でパニックになり上空でバランスを崩し、鬱蒼とする木々の中に落ちていったのだ。
バタつかせていた足が消え、木々の中から頭を摩りながら男が出て来た。
『何だよ。トラゴス。
降りるなら言ってよ。
ビックリしちゃったじゃないか。』
藍色の髪の間から草木が見え隠れしている男に真っ黒なオールバックの男が涼しい目を向けた。
『すまん。』
藍色の髪の男は自分を見つめるイオリ達に気づくと苦笑した。
『もっと格好良い登場したかったな。
俺は“顧慮する激昂”リブラ。
カプリースへようこそ、客人。』
爽やかに笑う男にイオリはペコリと会釈した。
『お前、相変わらず鈍臭いな。
何やってんだよ。』
ケラケラと笑うリオンにリブラは肩パンをした。
『言うなよ。
恥ずかしいだろ。』
仲良い友人のような2人の様子に安堵していると、イオリの前に真っ黒なオールバックの男が立った。
『初めてお目に掛かる。
私は“至誠なる叡智”トラゴス。
今代の“愛し子”に会えて嬉しく思う。』
見た目通りの堅い挨拶にイオリはニコリとした。
「初めまして、トラゴスさん。
冒険者をしてます。イオリです。
カプリースの叡智にお会いできて光栄です。」
イオリの挨拶にトラゴスは表情を変える事なくコクリと頷いた。
『“愛し子”は我らが王への面会を求めているのだな?
ならば、我らからの試練を受けねばならぬ。』
今までのドラゴン達と違い、イオリの要件を端的に処理するトラゴスの登場でカプリースの滞在は大きく動き出すのだった。
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