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旅路 〜カプリースへ〜

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 そこには誰も知らない美しい光景があった。

 キラキラとした玉が揶揄うように純白の巨体を突っついている。
 眠っていたが擽ったいと体を捩れば、光の玉が少し離れ、また暫くすると纏わりついていた。
 
 鋭い牙、鋭利な爪、そして鋼鉄のような純白の鱗を持った彼を人々は“空の王”と崇めていた。
 
 そんな“空の王”の耳がピクリと動いた。
 
 少し開いた瞼から金色の瞳が見えた。

『そろそろ来るか。イオリよ。』

 そうして“空の王”は再び眠りについたのだった。
 
____________

「フンフン♪ 」

 草原で低い声で鼻歌を奏でる男がいた。

「久しぶりの馬車は楽しいな。
 なっ?アウラ。」

「ヒヒンっ!!」

 御者席に座っているヒューゴが声を掛けるとアウラが嬉しそうに嘶いた。
 “パライソの森”から渓谷に入り、“グランヌス”の火山までの間に馬車を使う事が程んど無かった為に、久しぶりにイオリ達を乗せるアウラは気合いが入っていた。

 ヒューゴの視界にキラッとした何かが写った。
 
「おい。サンダーバイソンがいるぞ。」

 後の荷台に声を掛けると嬉しそうな声がしてパティとスコルが顔を出す。

「どこ?」
「大きい?」

 “グランヌス”での収穫祭の折に、ありったけの食材を放出した一同は目的地までの間に糧を増やそうと、躍起になっている。

「左の方角、あっちも俺達に気づいてるぞ。
 行くのか?」

「「行く!」」

 双子は嬉々として手を挙げると、馬車の後方からゼンに跨り飛び出して行った。

「気をつけてねー。」

 見送るニナに手を振るとゼンと双子は草原の向こう側に消えていった。
 暫くしてから雷鳴と生き物の倒れる音がした。

「ヒューゴさん。
 そろそろ休憩とって、狩猟した魔獣や動物達の解体に時間を当てましょう。」

「それなら水辺が良いな。
 ここまで来るまでに狩猟した数もあるし泊まっていくか?」

「良いですね。
 良い場所を探しましょう。」
 
 馬車から身を乗り上げ、周囲を見回すイオリにナギが声をかけた。

「この一帯を過ぎた所に川があるって。
 カンスケ爺やさんに貰った地図に書いてあるよ。」

 ニッコリと微笑むとイオリは親指を立てた。

「流石のナギだね。
 ヒューゴさん。
 この一帯を抜けて下さい。
 ゼンなら後を追いかけてきます。」

「了解。
 アウラ、頼むぞ。」

「ヒヒン!」

 日常が戻ってきたイオリ達の旅であるが、目的地“カプリース”への謎は解けてはいない。

 姿を現さない気まぐれな国・・・変わった住人とはなんだろうか。
 まだまだ知らない事が多い。
 改めて世界は広いと思い知らされるイオリだった。

「「ただいまぁ!」」

 サンダーバイソンを狩って戻ってきた双子とゼンが馬車に飛び乗ろうとすると安定の声が叫んだ。

「ちょっと待って!」

 いつでも、どこでも綺麗好きのニナが汚れたままで馬車に乗るのを許さない。
 洗浄魔法を掛けると満足そうに頷いた。

「おかえり。」

 ーーーあぁ。いつも通りだ。

 イオリは当たり前の幸せを噛み締めるのだった。
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