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旅路 〜カプリースへ〜

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パチパチ

 音を立てる焚き火に薪を焚べ、イオリは暖かいカモミールティーを啜った。



 流れが緩やかな川にたどり着くと、それぞれテントを張ったり、テーブルを出したり、解体の準備に取り掛かったりとキャンプ地では忙しくした。

 イオリとパティが解体作業をしているとスコルが料理を始めた。
 最近では、ニナも興味があるのか手伝っていた。
 ナギとヒューゴはカンスケ爺やがくれた地図を覗き込み、何から相談事のようだ。

 解体作業を終えた頃には陽が傾いていて、ヒューゴが周囲一帯をシールドで包み込んでいた。
 
 焚き火を囲んで食べた夕飯は家族団欒で楽しく過ごした。
 美味しく出来たシチューをイオリが褒めれば、作ったスコルがまだまだだと眉間に皺を寄せる。
 これ以上、美味しく作ったら料理人になれるとイオリが言えば、スコルは首を振り冒険者が好きだと笑った。

 パティとの解体作業もスムーズに終わり、手際がよく丁寧な作業に成長を感じた。
 学ぶ事の好きなナギの何気ない知識がイオリの旅の手伝いをしてくれている。
 ニナの魔力が精霊と関係があったと知ったのは最近の事。
 何かと話して笑っている少女の些細な変化が嬉しい。



「寝ないのか?」

 1人焚き火を見つめるイオリにテントから出てきたヒューゴが声をかけた。

「久々の移動が楽しくって。」

 柔かに微笑むイオリにヒューゴは強引に顔を覗き込んだ。

「抱え込むなよ?」

 アースガイルを出て様々な出会いを経て、ヒューゴが不安に思ったのは自由を愛するイオリの向かう先が既に決められていると感じた事だった。
 
 これを運命と言う言葉で片付けるにはヒューゴには抵抗があった。

 絶対神に愛され、強い力を持つイオリであってもヒューゴの目には20歳そこらの若者なのだ。
 世界の平和や秩序を守れと言うには荷が重すぎる。
 それは国を司る大人達の仕事だと考えていた。

「大丈夫ですよ。
 カンスケ爺やにも大切な事を言われたんです。
 1人で抱え込んだりしませんって。
 俺、責任とか大嫌いですから。」

 ーーー責任が嫌い

 イオリは、確かにそう言うが、ヒューゴの目には十分に責任感の強いお人好しに見えていた。

 しかし、ヒューゴはそれで良いと思っていた。
 イオリの分まで自分が警戒していれば良い。
 
『大丈夫だよ。
 僕もいる。
 イオリに変な人は近づかせないよ。』

 ゼンがイオリの頬に顔を擦りつけた。

「2人とも、ありがとう。」

 焚き火を消して、テントに潜り込んだイオリは寄り添うように眠る子供達を見下ろした。


《グランヌスのお風呂も良かったけど、やっぱりお家のお風呂が1番好き!》

 そう叫んだパティを思い出し、微笑むイオリはポツリと呟く。

「もう少しで会えそうですね。
 スカイヤ。」
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