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旅路 〜グランヌス・王宮〜
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何度も目にした、その異形な姿。
球体から出てきた“エルフの里の戦士”は状況を掴もうと辺りを見渡し姫巫女に気づくと傅いた。
「まさか仲間を球体に閉じ込めておくとはな・・・。」
“悪魔に魂を売った魔術師”と言われるドミトリー・ドナードが作りし、忌まわしきガラスの球体には生命体を閉じ込めておく事が出来る。
近年ではアースガイルやミズガルドで利用され魔獣を絡む事件で被害を被ってきた。
「ふふふ。
国王よ。
ムネタカの帰還に喜んでいる様だが、他の子供は良いのか?
逞しい我らが戦士と異なり、お前の子供は衰弱していくぞ?」
顔色の変わらない国王を楽しげに見つめていた姫巫女に鋭利な物が投げつけられた。
“エルフの里の戦士”の1人が弾き、当たりはしなかったものの、唐突の出来事に姫巫女は不愉快そうに顔を歪める。
カランッと音を立てて転がったのは、両刃の小刀だった。
その小刀の持ち主は普段の涼しい切長の目に怒りを隠さずに姫巫女を睨みつけていた。
「我が子に手は出させんよ。」
美しい羽織を纏って国王の隣に立ったのは王妃であるソウビだった。
「まぁ王妃様、ご機嫌よう。
今回も大人しく隠れているのかと思っていましたわ。」
馬鹿にしたような姫巫女にソウビ王妃は羽織の袖で口元を隠した。
「世間知らずの小娘と思っていたが“エルフの里”の者とすると・・・お前もしや私より年増だな?
ババアに夫を取られていたかと思えば笑い草だな。」
楽しげに笑う王妃に国王は苦笑した。
姫巫女には、その夫婦のやり取りが気に召さなかったのだろう。
「手は出させないとは?
こちらの手にある物を、どうすると?」
王妃と姫巫女の口合戦に周囲の者達は女の戦いに巻き込まれない様にと緊迫していた。
そんな中、1人マイペースな者が・・・。
「あっ、忘れてた。
それそれ!」
イオリがポンと手を打ち、姫巫女に申し訳なさそうに眉を下げた。
「貴方が眠っている間に俺の仲間が執務室の隠し扉を開けて王子様と姫様方の救出を完了しました。
ソウビ様は既に、お子様と再会されています。
それを踏まえて、続きをどうぞ。」
『話の腰を折ってゴメンね。』とばかりに手をヒラヒラとさせるイオリに憤怒の表情をする姫巫女の姿があった。
「・・・相変わらずッスね。
もはや、あの空気の読めなさは賞賛に値しまスよ。」
変なところに感心するロクにヒューゴは苦笑した。
「いや、俺は分かっててやってると思う。
性格悪いだろ?」
「お互い、上司の癖が強くて大変ッスね。」
肩を叩き合うロクとヒューゴをムネタカとカンスケ爺やが冷めた目で見つめた。
「・・・まだよ。」
“エルフの里の戦士”に暴れされて国を壊滅させるのは簡単な事だった。
姫巫女は、それ以上に彼らにダメージを負わせたいのだ。
「この国の多くの人間は我が手中にあり。
私の命令1つで親兄弟が争い合い。
愛する者の前で自刃にかける事だって出来る。」
“魅了”により国民を人質に取られ、顔色を変える国王や王妃、そして衛兵を見て気分良く微笑んだ姫巫女は、扇子を広げて高く掲げた。
「“傀儡”」
球体から出てきた“エルフの里の戦士”は状況を掴もうと辺りを見渡し姫巫女に気づくと傅いた。
「まさか仲間を球体に閉じ込めておくとはな・・・。」
“悪魔に魂を売った魔術師”と言われるドミトリー・ドナードが作りし、忌まわしきガラスの球体には生命体を閉じ込めておく事が出来る。
近年ではアースガイルやミズガルドで利用され魔獣を絡む事件で被害を被ってきた。
「ふふふ。
国王よ。
ムネタカの帰還に喜んでいる様だが、他の子供は良いのか?
逞しい我らが戦士と異なり、お前の子供は衰弱していくぞ?」
顔色の変わらない国王を楽しげに見つめていた姫巫女に鋭利な物が投げつけられた。
“エルフの里の戦士”の1人が弾き、当たりはしなかったものの、唐突の出来事に姫巫女は不愉快そうに顔を歪める。
カランッと音を立てて転がったのは、両刃の小刀だった。
その小刀の持ち主は普段の涼しい切長の目に怒りを隠さずに姫巫女を睨みつけていた。
「我が子に手は出させんよ。」
美しい羽織を纏って国王の隣に立ったのは王妃であるソウビだった。
「まぁ王妃様、ご機嫌よう。
今回も大人しく隠れているのかと思っていましたわ。」
馬鹿にしたような姫巫女にソウビ王妃は羽織の袖で口元を隠した。
「世間知らずの小娘と思っていたが“エルフの里”の者とすると・・・お前もしや私より年増だな?
ババアに夫を取られていたかと思えば笑い草だな。」
楽しげに笑う王妃に国王は苦笑した。
姫巫女には、その夫婦のやり取りが気に召さなかったのだろう。
「手は出させないとは?
こちらの手にある物を、どうすると?」
王妃と姫巫女の口合戦に周囲の者達は女の戦いに巻き込まれない様にと緊迫していた。
そんな中、1人マイペースな者が・・・。
「あっ、忘れてた。
それそれ!」
イオリがポンと手を打ち、姫巫女に申し訳なさそうに眉を下げた。
「貴方が眠っている間に俺の仲間が執務室の隠し扉を開けて王子様と姫様方の救出を完了しました。
ソウビ様は既に、お子様と再会されています。
それを踏まえて、続きをどうぞ。」
『話の腰を折ってゴメンね。』とばかりに手をヒラヒラとさせるイオリに憤怒の表情をする姫巫女の姿があった。
「・・・相変わらずッスね。
もはや、あの空気の読めなさは賞賛に値しまスよ。」
変なところに感心するロクにヒューゴは苦笑した。
「いや、俺は分かっててやってると思う。
性格悪いだろ?」
「お互い、上司の癖が強くて大変ッスね。」
肩を叩き合うロクとヒューゴをムネタカとカンスケ爺やが冷めた目で見つめた。
「・・・まだよ。」
“エルフの里の戦士”に暴れされて国を壊滅させるのは簡単な事だった。
姫巫女は、それ以上に彼らにダメージを負わせたいのだ。
「この国の多くの人間は我が手中にあり。
私の命令1つで親兄弟が争い合い。
愛する者の前で自刃にかける事だって出来る。」
“魅了”により国民を人質に取られ、顔色を変える国王や王妃、そして衛兵を見て気分良く微笑んだ姫巫女は、扇子を広げて高く掲げた。
「“傀儡”」
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