続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜グランヌス・王宮〜

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「“傀儡パペット”」

 扇子を掲げた姫巫女は楽しそうに口元を歪めていた。

「既に我が“魅了”にかかった者は全て私の人形。
 直ぐに城下町で惨劇が起こるぞ。
 助けられぬ命を前に己の弱さに絶望しろ。」

 プライドを傷つけられた姫巫女にとって、引き返す選択など放り捨てた。
 “特別な選ばれた子”の矜持を手放す事など出来なかった。

「今さら城下町に向かっても無駄よ。
 は今にも王宮を目指し始める。
 無力な王族を引き摺り下ろし、この国の新たな王・・・女王を求めるでしょう。
 貴方達に憐れな国民を手にかける事が出来るかしら?」

 再び可憐な娘に戻った姫巫女に、衛兵達はゾッとした。
 空気に飲まれる者達の中で表情を変える事のない男がいた。
 国王トウカ・ノブタカ・ショーグンは誰よりも国を愛する男だった。

「・・・馬鹿にするな。
 この国は、立国の際より王侯貴族や民に関係なく戦いに明け暮れた者達の国。
 子供達であろうとも、落ちている柄杓ひしゃくで戦うだろう。
 お前の“魅了”にかからずにいる者達の足掻きに震えろ。」

「愚かな。」

「嘗て、荒廃した時代を生き抜いた先人達が追い求め、我らの時代まで“強靭への欲望”は脈々と受け継がれてきた。
 何の為だと思う?」

 国王トウカ・ノブタカ・ショーグンは片方の腕を着物から抜き半身を肌けさせた。
 動きやすくする為の、その行動は“エルフの里の戦士”には脅威に見えた。
 己の武器を握りしめ、歯をガチガチと鳴らし威嚇し始める。
 敵を前にしても国王は冷静に1歩、また1歩と前に進む。

「荒廃した世界に安息を地を造りし、初代国王マテオ・アースガイル。
 そして、その右腕として多くの者を救いながらも名声を手放した男・・・大将軍・ジュウゾウ。
 この2人への恩義に応える為だ。」

 国王は己の刀を抜きブンッと一振りした。

「誰も武器を持たずに平和の世を生きるのも良いだろう。
 争いなど無いだけ良いのだ。
 しかし、もし再び世界を混乱に貶める輩が現れた時はどうする?
 マテオ・アースガイルが現れるのを待つのか?
 大将軍が犠牲になるのを見ているだけなのか?
 否ッ!!
 次こそは世界の果てにて剣技を磨く我らが、かの方達の様に世界を守る剣となり盾となるのだ。
 そんな変わり者達がいても良かろう?」

 国王の声に不安を抱えていた衛兵達の目が刀剣士へと変わっていく。
 
「我が名にある“トウカ”の文字は大将軍・ジュウゾウ殿より賜った国を率いる者にだけ受け継がれる。
 トウカとは“灯火ともしび”の意味だと伝わっている。
 暗闇にいても先頭に立つ者が掲げる“灯火”を頼りに辛く苦しい道を進む。 
 それが、我らグランヌスの民だ。
 愚かはお前達の方だ。
 よくも戦闘民族・火の国グランヌスを狙ったな。
 “エルフの里”よ。
 我が国を上げて御相手する。
 いざ、尋常に!」

 犠牲も厭わず国を・・・これから世界を襲う混乱を、ここで止めると覚悟を見せた国王に応えるように衛兵が・・・いや、国中が雄叫びを上げた。

ォォオオオオオオオ!!

「馬鹿馬鹿しい。
 強き者が世界を手に入れる。
 お前達が1番分かっているかと思っていたのに。
 やはり、人間は愚かだった。
 ルミエール様の仰る通りだ。
 お前らなどに、やられるものか。
 脆弱な人間に“エルフの里”は負けはせぬ。」

 今にも飛び出して来そうな“エルフの里の戦士”を前にグランヌスの兵達は覚悟を決めていた。

「はいはい。
 俺を忘れないでくださいよ。」

 イオリは国王の言葉にジュウゾウの名を聞く事が出来て嬉しかった。
 ご機嫌のまま、やる気満々のゼンを撫でると、スナイパーライフルを高々に構え空に向けた。

「教えましょう。
 貴方達が喧嘩を売ったのは、こういう力だ。」


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