続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・ガレー〜

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「もしもーし。
 アルさーん。」

 呼びかけるイオリに嬉々としたアルフレッド・アースガイル王の声が届いた。

《イオリかっ!
 どうした?!
 何があった?
 面白い事か?》

 指輪から矢継ぎ早に質問の言葉が飛んでくるとイオリは苦笑した。

「あっ、アルさん。
 お久しぶりです。」

《本当に不精者めが!
 ヒューゴの方が、よっぽど律儀だ。》

《イオリ。
 どうしたのです?
 昨日、ヒューゴが詳しい話を連絡してきましたよ。
 こちらもデザリア王と情報共有をしようと準備しているところです。》

 グレン・ターナーの声がして、イオリは微笑んだ。

「グレンさんもいるんですね。
 丁度良いです。
 はい。
 ジュードさん。
 どうぞ。」

 突然にイオリに指輪を向けられてガレーの領主ジュード・ガレーは慌てて立ち上がった。

「わっ私が話すのか!?
 相手は誰なのだ?」

「アースガイルの王様ですよ。
 アルさんの名前って、アルフレッド・アースガイルですよね?」

《そうだぞ。
 お前は今、ガレーにいるのだろう?
 カカオの事か?》

《・・・イオリ。
 まさかとは思いますが、お相手に説明せずに連絡してきたのですか?
 はぁ・・・貴方という人は。》

 相手がアースガイル王と聞き、初めは訝しげだったジュード・ガレーだったが現実が見え始めたのか驚愕してオロオロとし始めた。

 ジュード・ガレーだけではない。
 聞いていたタージ・ラバンを始めとしたラバン商会の面々も度肝を抜かれたよう固まっている。

 1人クスクスと笑うリルラが助けの手をあげた。

「イオリ様。
 宜しければ、私が説明しましょう。」

「そうですか?
 お願いします。」

 嬉々として指輪の手を差し出すイオリにリルラは笑いが止まらない。
 まるで、手に口づけをするように顔を近づけた。

「国王陛下、宰相閣下
 “”のリルラでございます。」

 あえてリルラがホワイトキャビンと名乗った事で指輪の向こうから冷静な声が聞こえた。

《リルラ、どうしたのです?
 イオリと共に行動している事は分かっています。
 何があったのです?》

 どこか心配そうなグレン・ターナーの声にリルラは答えた。

「オンリールの逃れ者がデザリアで・・・ガレーの地で迷惑をかけています。」

《何だと?
 詳しく話せ。》

 直様にアルフレッドの怒りの声が聞こえてきた。
 どれほどにオンリールの事件に心を砕いていた事だろう。
 リルラの話に指輪から2人の唸り声が聞こえてきた。

《話は分かった。
 ガレー侯爵と話したい。》

 イオリはジュード・ガレーに近づき手を差し出す。
 ジュード・ガレーはイオリの反応を見ながら恐々と顔を近づける。

「デザリア国ガレー領主を務めます。
 ジュード・ガレーと申します。
 アルフレッド・アースガイル国王におかれまして、このようにお話が出来る機会がございますとは・・・。」

《そこまでで良い。
 どうやら、我が国の問題が貴殿の地までに迷惑をかけたようだ。
 その“カズブール”と申す者はデザリアの法律でお好きに処罰なされよ。
 我らは、この事も含めデザリア王へ報告と謝罪を致そう。》

「はっ!」

 アースガイルの国王は何1つ疑う事なく謝罪の意を示している事に驚いたジュード・ガレーは短い返事をする事しか出来なかった。

《イオリは我が国の・・・いや、世界の宝となる男だ。
 何卒よろしく頼む。》

「・・・理解しております。
 我が領地に赴いてくれた事に感謝しております。」

 ラバン商会の面々がいる事を忘れていないジュード・ガレーはアルフレッドに気持ちを伝えるのに最低限の言葉を送った。

《イオリは笑っているか?》

 アースガイル王の言葉にジュード・ガレーは思わずイオリを見上げた。
 当人は先程からずっとニコニコとしている。

「そのようです。」

《ならばよい。
 ではな。
 イオリ、後は任せた。》

「了解です。」

 通信を切ったイオリを確認するとドッと汗を流し、椅子に倒れ込むジュード・ガレーの姿があった。
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