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旅路〜デザリア・王宮〜

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 3年前、イオリがポーレットにいた頃。
 “明けない魔の森”にスタンピードが起こった。
 
 原因はパライソの森の主であるアマメ・・・鹿の姿をした大型の魔獣が出没した事だった。

 アマメの出現に“明けない魔の森”の魔獣達は怯え、森から逃げ惑ったのだ。
 結果的にポーレットの街も襲われる事態になった。

 アースガイルの貴族であったラモン家の陰謀によって、子供を攫われたアマメは闇に染まる危険を冒しても誘われるように“明けない魔の森”を彷徨ったのであった。

 アースガイル王は激怒した。
 よりによって、王弟が治めるポーレットの街を狙ったのだ。
 他国の神獣であるアマメを利用したラモン家は“パライソの森”に送られ、処分された。
 アースガイル王・アルフレッドは迷惑をかけた当事者に処分を委ねたのだ。

 アースガイル王は“パライソの森”と共に生きる“ルーシュピケ”に対しても謝罪し賠償を行った。
 ルーシュピケ側もエルフや獣人の迫害をやめさせ、保護に勤めた大国アースガイルと争うのは避けたい思惑があったのだろう。
 両国は和平を望んだ。
 
 ーーー表向きは・・・。



「あの時、“パライソの森”の大規模が死の森と化していった。
 “パライソの森”と共に生きる“ルーシュピケ”の者達は原因の分からない事態に大パニックに陥ったんだ。」

 ギルマス・ウェッジは眉間に皺を寄せた。

「“デザリア”にも救援要請が来ていた。
 あの恐怖の1週間を“ルーシュピケは忘れていない。
 原因がアースガイル・・・ミズガルドにあったと分かった時、彼らの中に《やはり人間の仕業か・・・。》とシコリが残っているに違いないんだ。」

 聞けば、当然の感情だろう。

 先祖達が人間に追われ、自分達が人間の身勝手で脅威に貶められたのだ。
 誰だって、気に入らないに決まっている。

「基本は気の良い奴らだ。
 あの国の冒険者ギルドのギルマスは獣人だ。
 俺からも口添えをしておこう。」

「有難うございます。」

 自然を愛するイオリにとっては苦い話だった。
 心配そうな子供達の頭を撫でると安心させるように優しく微笑んだ。

「大丈夫。
 アマメに会えるんだ。
 みんなも楽しみだろう?」

「「「うん!」」」

 ニッコリとした子供達は“ルーシュピケ”が楽しみのようだ。

「ニナも楽しもうね。」

「・・・うん。」

 アマメの事件の時には出会っていなかったヒューゴとニナである。
 人間でもある2人にとっては“ルーシュピケ”に向かうのは心配なのかもしれない。

 賢いニナだ。
 ギルマスの話の内容を理解して少し落ち込んでいるようだった。
 双子やナギ程、楽しみにはなっていないようだ。

「大丈夫さ。
 ポーレット公爵の従魔のバンデのお母さんの森だぞ?
 ニナが自然を壊したりしない子だって知ってくれるさ。」

 ヒューゴはニナを抱き上げると優しく撫でてやるのだった。




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