続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

旅路〜ダグスク〜

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　出発の日、空は紺碧の色濃い青色だった。

「船だぁー！！」

　海に浮かぶ大きな船にパティは大きな声を上げた。
　
「でも、どうやって乗るの？
　昨日まで港にあったのに。」

　不思議そうなスコルにレイナードが教えてくれた。

「昨日は積荷を積み込むために接岸していたんだ。
　そのままだと、船が動き出すまでに時間がかかるからな。
　今日は船を港から離しておいて、いつでも出発できるようにしているだよ。
　中型の船に乗って、使節船に近づくと階段が降りてくる。
　その階段から乗り込むんだ。
　少し不安定だから気をつけろ。」

「うん！
　楽しそう。」

　レイナードはスコルの頭を撫でると、不安そうなナギの背中を撫でた。

「大丈夫だ。
　足に力を入れて登れば楽に登れる。
　山登りと一緒だよ。」

「うん。頑張る。」

　
　使節船が出発すると聞き、野次馬が増えていた。
　その中からイオリはエナを見つけると走り寄った。

「来てくれたんですか？」

「暫くは手に入らないだろう？　
　持っておいき。」

　昆布や鰹節、海苔にひじきなど大量の乾物を渡されたイオリは眉を下げた。

「一応、俺も買い込んだんですよ？
　こんなに貰ったら悪いですよ。」

「腐りゃしないんだから、持っておいき。」

　頑ななエナを助けるようにテンとディスまでもが頷いている。

「グラトニーの旦那に聞いたんだ。
　簡単には帰れないだろうって。
　だから、持っていってください。」

「そうだよ。
　ウチの乾物はアッチでは手に入らないよ。
　向こうでも美味いもの食うんでしょう？
　絶対に必要だって。」

　そんな3人の脇からグレータが申し訳なさそうに顔を出した。

「こう言ってますから、お持ちください。
　みんなイオリさん達の無事を祈っているんです。」

　グレータにまで言われてイオリは観念した。

「ありがとうございます。
　大切に食べますね。
　エナばあちゃんも皆さんもお体に気をつけて。
　また、会いましょう。」

　イオリが大切そうに腰バックに乾物を入れたのを確認するとエナは満足そうに頷いた。
　
「ちゃんと護符は手に入れたね？
　お前さんも達者でな。」

　孫を送り出すように、イオリの腕を心配そうにさするエナにイオリはニッコリと頷いた。
　
「行ってきます！！」

「「「「バイバイ！」」」」

　子供達も楽しそうに手を振っている。



「間に合ったぁぁぁぁ！！」

「ロジャー！
　だから言ったろう！
　昨日のうちに荷物を詰めて置けって！」

　息を上げるロジャーの隣でアレックスが怒っている。

「そんなこと言ってもさぁ。
　あれもこれも詰め込みたくて、考えてたら寝ちゃったんだ。
　アハっ。」

　誤魔化すロジャーに青筋を立てるアレックスが怒気を孕んだ時だった。

「五月蝿い！！
　今日はオーウェン様ならず、お前らの依頼主となられる方がいらっしゃるのだ。
　お前達Sランク冒険者を送り出すダグスクに恥をかかすな！」

　レイナードの怒号が響き渡った。

「うっ・・・父上。
　申し訳ありません。」

「レイパパ。
　御免なさい。」

　縮こまる2人にソフィアンヌが追い討ちをかける。

「ボンクラ息子共。
　依頼主を危険に晒してごらん。
　国よりも先に私が海の藻屑にしてやるからね。
　いや、もう一度、王都のギルマスとサブマスに預けようかね～。」

「母上！！」

「分かってるよ！
　大丈夫だよ！」

「だったら、気合を入れ直しなさいな。
　子供達の方が頼りになるわよ。」

「「うっす！！」」

　オーウェンは冷や汗をかきながらディビットに頭を下げた。

「本当に頼りになる2人なんです。
　出発を騒がしくさせ・・・申し訳ありません。」

　ディビットは笑いを堪えるように咳をした。

「ゴホッゴホッ。
　賑やかで何よりです。
　大丈夫。
　Sランクの冒険者の実力を疑うような事はありませんよ。
　楽しい旅になりそうです。」

　
　ダグスクの港は賑やかだった。
　
カーン！カーン！カーン！


　乗り込む時間になった。
　ドラの音が響き渡ると、それぞれが別れをしている。
　
　イオリは旅の仲間達と顔を合わせると、ニッコリとした。

「さぁ、行きましょうか。
　海の旅へ！」