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旅路〜ダグスク〜

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 ーーーザックス・ヒル。
 
 アースガイルには守護者の王立騎士団とは別に軍がある。
 戦の最前線に立つ彼らを人は“シルバーファング”と呼ぶ。彼はそのトップに君臨する唯一無二の大将軍だ。

 ただ、激烈な性格の為に国王であるアルフレッドは勿論、ポーレット公爵であるテオルドも手を焼いている人物だ。
 武力に反して人懐っこいが押しが強く、人の迷惑などお構まいなしの行動に周囲の人間は振り回される事も日常茶飯事だ。
 憎めない性格から嫌う人間もなく、彼の周りには何故か人が集まる。

 かく言うイオリも、彼の興味を惹き、好奇心に巻き込まれた経験がある。

「お久しぶりです。ヒル将軍。」

「おう!嬉しいか?
 俺に会えて嬉しかろう?!」

 子供みたいに高い高いをされイオリは苦笑するしかない。

「将軍も“デザリア”に?」

「そうしたいが、アルフレッドが駄目だと言うんだ。」

 納得していない顔をするザックス・ヒルにディビットが慌てて声をかけた。

「ヒル将軍はアースガイルの要ですから!
 国から離すわけにはいきませんよ。
 ダグスクまで一緒に来てくれて感謝しています。
 将軍は私が帰るまで王都を・・・国をお守り頂きたい。」

 必死なディビットの姿にザックス・ヒルは満面の笑みを浮かべた。

「おう!
 任せろ!
 お前も無事に帰って来いよ。
 俺は暫くしたら王都に帰るぞ。」

 部屋中が安堵したところで、ディビットがオーウェンに顔を向けた。

「と言う事で、ヒル将軍とはここで別れます。
 そこで、ダグクス侯爵に頼みたいのです。
 勿論、騎士達を引き連れてきましたがダグスクからも良き人材が入れば手を貸して頂きたい。」

 オーウェンは考慮すると頷いた。

「でしたら、良き者達がいます。」

 オーウェンの視線を受け、レイナードが一礼をして前に出た。

「僭越ではありますが、我が息子達をお連れ下さい。
 騎士ではありませんが、Sランク冒険者であります。
 先のイルツクの事件からイオリ殿達と行動を共にしており連携も取れるでしょう。」

「それは、良い出会いです。
 確か、アレックスとロジャーでしたね。
 子供達が楽しそうに話しているのを聞きました。
 是非、頼みたい。
 Sランク冒険者という事は、ギルマスにも許可を得なければいけませんね。」

「お任せ下さい。」

 レイナードは直ぐ様に行動に移した。

 ギルドマスターのソフィアンナに連絡をとり、アレックスとロジャーの国外へ出る準備を始めた。
 本人達に任務内容を伝えルと、彼らは準備を始めた。

 その間にディビットは教会に足を向けた。
 ディビットも第2王子として初代国王マテオとジュウゾウの想いに寄り添いたいと思っていた。
 流石に、エナやテスなどジュウゾウの子孫達との面会は憚られたのか、「そっとしておくように。」とオーウェンに伝えていた。

「ただ、感謝している事は伝えて欲しい。
 我ら王族がジュウゾウの功績を表沙汰にしていない間にも、彼の想いを受け継いでいた一族を我々は二度と忘れないと。」

 学者気質のディビットの事だ。
 ジュウゾウについても調べているのだろう。
 イオリと共に海を見つめるディビットにも国を愛する王族の自負が見られた。
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