続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

旅路〜王都〜

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　教会を後にし冒険者ギルドの扉を開くと、そこに珍しい人間がいた。

「アクセル！！」

　真っ先にスコルが気づき駆け寄った。

「やあ、みんな。」

　笑顔で荷物を抱えていたのはグラトニー商会のアクセルだった。

「どうしたんだい？
　依頼かい？」

　イオリが話しかけるとアクセルは頷いた。

「はい。
　実家に王都の商品を送ろうと思いまして。
　個人的な事なので、冒険者ギルドに依頼しにきました。」

　アクセルが持つ荷物の中には可愛らしい人形や服、絵本なども入っていた。
　恐らく、弟妹の為に選んだんだろう。

「それなら、俺達が届けよう。
　今からダグスクなんだ。」

　すると、アクセルは首をブンブンと横に振った。

「Sランク冒険者に頼む依頼じゃありませんよ！
　そんな事したら、旦那様や父に怒られます。」
　
　届け物などは下位ランクの冒険者の仕事だと、アクセルは拒んだ。

「そんなものかな？」

　世の中の常識が欠けているイオリは首を傾げた。
　すかさず後ろからヒューゴの声が飛んだ。

「構わんだろう。
　ウチには立派なDランクとCランクの冒険者がいる。
　この子達の依頼なら良いんじゃないか？」

　そうしてナギとニナを押し出した。

「おつかい？
　良いよ！
　僕やる！」

「ニナも！」

　やる気に満ちた顔の2人にアクセルは困惑気味だ。

「・・・でも。」

「そう言えば、双子とナギは個人的に依頼を受けた事があるけど、ニナはないね。
　初めてのおつかいだな。」

　イオリが微笑むとニナは益々力強く頷いた。

「ミラさんに言えば大丈夫だと思うよ。
　ミラさん何処かな？」

「あっ！今、ギルマスの部屋に旦那様とリロイさんがいるんです。
　ミラさんも一緒だと思います。」

「そうなの？
　じゃあ、一緒に行こうか。」

　アクセルを引き連れてイオリはSランク冒険者の受付の後ろにあるギルマスの部屋の扉をノックした。

　暫くして扉が開かれるとイオリの腰ほどの身長のミラが顔を出した。

「おや、来たのかい？
　お入り。」

　中にはギルマス・ハンターの他にグラトニー商会の会頭・ロスと秘書のリロイがソファに腰掛けていた。
　壁側にはアレックスとロジャーが寄りかかっていて、挨拶がわりに手を挙げていた。

「おはようございます。
　お待たせしましたか？」

「こちらも、こちらで話がありましたしね。
　大して待ってませんよ。」

　シルクハットを被ったハンターが柔かに手招きをした。

「どうした。アレックス？
　荷物を預けるんじゃなかったのか？」

　リロイの問いかけに、ヒューゴの隣に立っていたアレックスは困り顔で頷いた。

「そのつもりだったんですけど・・・。」

　アレックスを助けるようにイオリはミラに受付を頼んだ。

「アレックスさんの依頼なんですけど、この子達に受けさせたいんですけどダメですか？」

「なんだって？」

　キョトンとするミラの前にニナが進み出て依頼書を差し出した。

「お願いします！」

「パーティーじゃなくて、ニナが依頼を受けるのかい？」

「うん！ニナとナギちゃん！」

　ニナの後ろからナギがニコニコと顔を出した。
　ミラはイオリとヒューゴのニヤリ顔を見て納得したように頷いた。

「・・・なるほどね。
　分かったよ。
　大切な依頼者からの届け物だ。
　責任持ってグダスクまで届けておくれ。」

「「はーい！！」」

「でも、大丈夫かい？
　お前達の小さいイベントリで入るのかい？」

　ミラは2人の腰バックを指差した。
　
「僕とニナで分けて運ぶよ。
　これくらいならギリギリ平気だよ。」

　ナギがポンポンと腰バックを叩き微笑んだ。
　すると、側で見守っていた双子がナギとニナの肩を掴んだ。

「じゃあ、グダスクまでの間、2人の荷物は俺達が持つよ。
　お菓子が食べたくならったら言って。
　すぐに渡すから。」

　スコルの案にナギとニナは喜んだ。
　決まりとばかりに子供達はアクセルを連れて部屋の隅で荷物整理を始めてしまった。
　
「子供の成長ってのは早いもんだね。
　前に来た時なんてニナは自己主張なんてしなかったろう。
　・・・良い事だ。
　
　知り合いの依頼だと言っても、立派な依頼者だ。
　下手打つ前に手助けしておやりよ。」

　ミラは依頼書を手に子供達の元に歩いて行った。

「ありがとうございます。」

　イオリはニッコリとしてミラの背にお礼を言ったのだった。