続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜王都〜

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 数週間ぶりの王都の街は変わらず賑わいを見せていた。
 日替わり露店の間を興味引かれながら歩く。

「まずは教会に行きたいんだ。
 アレックスさんとロジャーさんと合流したら、自由に行けないからね。
 良いかな?」

「「「「いいよ~。」」」」

「それが良いだろうな。
 マテオールからダグスクへは真っ直ぐだ。
 他の街も寄らずに行った方がいいだろう。」

 教会の扉を開くと待っていたようにディマルコ枢機卿が祭壇の側に立っていた。

「みなさん。おはようございます。
 宰相殿より、イオリさんがお越しになると連絡があり待機しておりました。」

「おはようございます。
 ディマルコ枢機卿。
 これから、旅に出ます。
 最後にリュオン様に挨拶に来ました。」

「えぇ。承知しております。
 どうぞ。」

 ディマルコが誘う場所に膝をつくとイオリは目を閉じた。


ーーーーーーーー

『行くのですか?』

 顔を上げると虹色の髪を靡かせたリュオンが優しく微笑んでいた。

「はい。
 もう少し広い世界を見てきます。」

『相沢さんの目には、どのように映るのでしょうね。』

 リュオンは問いかけるように首を傾げる。

「分かりません。
 ・・・リュオン様。
 俺は愛し子の称号が欲しいわけでも、力や権力が欲しいわけでもありません。」

 イオリの言わんとする事が分かるのか、リュオンは憂いを滲ませた瞳で頷いた。

『いつの時代でも、特別を欲する者がいます。
 愛し子というだけなら、私にとって全ての生命が愛し子なのです。
 使命というのなら、誰にでも使命はあります。
 国を守る事・主人に支える事・道を切り開く事・パンを焼く事・愛する事・・・生きる事。』

 リュオンの想いを感じ取ったイオリは確信する。

「グランヌスにいる“愛し子”も何かしらの使命を持った者。
 それが、リュオン様ではなく別の誰かと言う事ですね?」

 ほら見ろとばかりにゼンが満足そうに頷いた。

 リュオンにとっての特別はイオリだけだ。
 どうしてか、これだけは譲らないゼンをリュオンは優しく撫でた。

『お前は賢いね。
 これからも、相沢さんと共に・・・。』

『はーい。任せて!』

 気分が晴れたのかゼンはリュオンに甘えるように顔を擦り付けた。
 
『相沢さんにとって私が与えたは荷が重いでしょう。
 だから、1人で背負わなくて良いのです。
 1人で全てを成し遂げようとしてルミエールは力を求めました。
 彼との考えの相違は初めからあったのでしょう。
 私は、それに気付かなかった。』

 全てを愛し信じるリュオンと、全てを疑い支配を目的とするルミエールが理解し合える訳がなかった。
 リュオンの優しさは時に災いを起こす。
 神の選択とは残酷までに人間達などの生命に影響するのだ。

「俺は自分の出来る事の領分を知ってますよ。
 だから、出来ない事はテオさんやアルさんに任せて逃げちゃいます。
 心配しないで下さい。
 逃げ足は早いんです。」

 肩を竦めながら笑うイオリにリュオンはキョトンとして吹き出した。

『あははは。
 そうですね。
 相沢さんは心配いらなかったです。
 さぁ、行きなさい。
 十蔵が愛した港町へ。』

 手を振るリュオンが薄れていく。

「行ってきます。
 ゼン!」

「うん!
 行こう!!」

ーーーーーーーー

 瞳を開けたイオリは子供達が待つ扉へと歩き出した。
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