俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177

文字の大きさ
21 / 49
男女混☆合サッカー大会

021 放置芸

しおりを挟む
「それだよ、多田さん! 私の説明を聞いたら、きっと納得してくれるはずだよ!」

 健介が悠奈の援護射撃をしてもいいのだが、土俵際に寄せられた麻里の秘策を目の当たりにしてからでも遅くはない。

 実のところを言うと、健介も本気で手首足首をほどこうとはしなかった。ハッスルが空回りしていた麻里なら、戦時中の捕虜として丁重に扱ってくれるという安心感があったからだ。

「……サッカーの話が、今日あったよね? それも、男女混合の」
「うん、考えた人たちはきっとダイナマイトを爆発させても気づかないんじゃないかな……?」

 彼女らの身体能力をこの目で実体験した健介の感覚は、一般の人から月一個分離れていたようだ。この発言に至るまで、疑問点の一つも湧かなかった。

 ……サッカーで、男女混合……。

 現役サッカー部の男子が、ルールを覚えたての女子にスライディングを仕掛ける。アニメで地上波に放映出来ない内容を、現実で行おうとしているのだ。

 男女がペアになるスポーツそのものが、フィジカル重視の世界では希少な存在。強いてあげるとするのならば、卓球になるのだろうか。

 ゴールキーパーは男子の経験者に任せるとしても、コート上にいる時点で常にタックルの危機が付きまとう。なまじノーマークになることでパスが増え、ケガをしかねない状況が生み出されることが想定される。

 男女平等を謳って提案したサッカー大会は、男子しか出場資格の無いものへと変貌していた。

 共感を獲得して、第一段階はクリア。麻里に課された関門が突破される未来は、意外と近くに眠っているのかもしれない。

「……多田さんは、男女混合だから怖い? メンタルがダメそうなら、ベンチに下がって観戦しててもいいよ?」
「フィジカルの差くらい、私の脚で何とか出来る!」

 制服を上からかぶせてある体は、鍛えられているように思えない。丈の長いスカートに、瞬発力を発揮させる筋肉も潜んでいる。

 ……あの、そろそろ外してくれませんかね、これ……。

 議論がヒートアップするのは構わないが、縛られた体勢を強制されたままでいたくない。一人の男子生徒が冷たくなっていたとニュースで報道される明日は避けたいのだ。

「……ともかく、練習しなかったら絶対に勝てない。だから、健介くんを練習相手に誘ったってこと」
「誘った……? 死んだ魚みたいにくたばってるのに?」

 ……そういう風に見えてるなら、助けてくれよ!

 女子四人がかりで羽交い絞めにして、担架で最上階へ運ぶのが麻里流の誘い方らしい。庶民とは格の違うお方は、ただの勧誘もダイナミックだ。

 悠奈は一瞬健介に目をやって、また強敵に向きなおした。手を出せば揚げ足を取られそうだと判断したのだろうか。健介の健康まで頭を回してほしかった。

「健介くんを勝手に遺影にしないで! ……そういえば、なんで遺影はモノクロ写真なんだろう……」
「最近はカラー写真もあるんじゃなかったっけ……」
「カラーかぁ……」

 古代人が大河を隔てた対岸の街を考察していたように、まだやってくるには早すぎる白黒写真の話が流れた。額縁に写真が飾られそうな急病人が隣に倒れているのは目に入っていない。

 ガムテープで口を塞がれていない健介だが、ここで大声を出しては双方の気分を損ねてしまう。燃え盛る炎に油を注ぎ込んで消火を試みると、大やけどを負って病院に救急搬送されることになる。

 ……口が自由で助けを呼べないなんて、こんな滑稽な事件も無いよな……。

 迷宮入りした暁には、被害者の不可解な沈黙を推理するドキュメンタリー番組が乱発するだろう。高校の日常生活から一歩踏み出したその先が奈落への一方通行など、考えもしなかった。

「……今日の午後位から雨予報だったから、早くグラウンドを取らないと……」
「……でも、野球部とサッカー部で埋まってるよ?」
「そこは心配ご無用! 私の力で……」
「それは見過ごせないかな……」

 正義執行官が凝視する前で権力乱用を示唆するなど、自殺行為に他ならない。そのうち、不穏な会話を検知した悠奈のヘアピンが、こめかみに突き刺さるのではないだろうか。

 正方形のグラウンドは、分割するのに不向きだ。野球の領域をハサミで切り取ってみると、紙の切れ端しか残らない。そこにサッカーグラウンドを詰め込むとなると、なおさらだ。

 練習場所も割り当てられなければ、ルールもガバガバ。クラスの団結を促すどころか、運営に興味を失った生徒が大量発生する結果になる。

 背の高い悠奈が、ジャンプをして窓枠から外を見渡している。階段の踊り場まで戻れば小学生でも景色が映るのだが、熱暴走した精密機械のメモリに容量は残っていなかったようだ。

 頭髪を自然乾燥させる手抜きも増えてきているが、悠奈のきめ細やかな長髪は一本一本が独立している。規律違反のアホ毛は見当たらず、全てが規則正しく流線形を描く。

「……どうしよっか……。雨降ってきても、嫌だし……」
「多田さんの思い通りにはさせないよ?」

 大気には滅多に放電されない雷が、麻里と悠奈の瞳に宿っていた。今彼女らに触れようものなら、感電して骨まで見えてしまう。

 髪を逆立てたまま、ピンクのヘアピン少女と根っからのお嬢様が目を合わせている。目線を切った方が、取って食われる。

 ……あの、俺は……?

 誘拐した張本人も、救世主として屋上まで足を運んだ幼馴染も、にらみ合って階段を駆け下っていく。

 無理な姿勢を取らされたせいで、血流が末端部へと溜まる。かれこれ一時間は束縛されている筋肉は悲鳴を上げて、体の機能を犠牲にしてでももとに戻りたいと喚く。

 寝不足もたたって、健介の視界は上方から黒幕が降りだした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

処理中です...