黒の魅了師は最強悪魔を使役する

暁 晴海

文字の大きさ
上 下
25 / 194
第一章

魔力操作が壊滅的……だと!?

しおりを挟む
『う~ん…。それにしてもなぁ…』

ローレンス王子も馬鹿だなと思う。

ユキヤには劣るが見た目だけはかなり良いのだ。テオの前ではしおらしくして、逆にユキヤを誉めてさえいれば、まだ脈があったかもしれないのに。

…いや、それはないか。

テオの理想はユキヤなのだから、見た目が良いという以外共通点がまるで無い王子様には、万が一でも勝ち目などないだろう。そう考えると、少しだけローレンス王子が気の毒になってしまう。

...いや、こんだけアホなことをやらかしてくれたので、同情はこれっぽっちもないけど。

テオは生まれた時からずっと傍にいたユキヤをそれはそれは慕っている。



学院に入ってからは、なんとか兄離れをしようと頑張っているようだが、あまり上手くいってない。ユキヤにもただの反抗期ととらえられているようだ。

俺らからしてみれば、存分に甘えられる弟という美味しいポジションなんて、超絶羨ましい限りだが。根が真面目な奴だし、当のユキヤが危機感が薄く割と抜けているので、自分がしっかりしなければと思っているのかもしれないな。



と、そこで自分と同じく謹慎させられていたアドルファスとキーランが息を切らせながらこちらへやって来るのが見えた。

「テオ!エイトール!」

「ユキヤは!?」

「安心しろ。まだ来てない」

「そうか…。だが、ユキヤは大丈夫なのか?テオ、セオドア様かウェズレイ公爵から、何か連絡があったりしなかったか?」

アドルファスの言葉に、テオが首を横に振る。

「いや。パーティーが終わるまでは、俺を含めた全生徒が外部との接触禁止だったから」

「じゃあ、ユキヤがどう対策を立てているのかは分からないか…」

「ああ。兄上はセオドア母上と御生母のベハティ様に鍛えられているから、武術全般でいけば多分俺より強い筈…。問題は魔力を使った戦いだ。なにせ兄上、魔力はあるけど魔力操作が壊滅的だから…」

溜息交じりにサラリと呟かれたテオの言葉に、その場の三人の目が点になる。

そこでハッとして『あ、しまった』と言った様に慌てて口に手を当てたテオを、エイトール達はジト目で睨み付けた。

「…は?何だ今の台詞?」

「…ユキヤの魔力操作が壊滅的…?」

「おい、テオ。それ俺達初耳なんだけど?」

「…秘密にしていたんだから、知らなくて当然だろ。だいたい、知ればお前達の事だ。即、兄上に決闘申し込むに決まってるだろうが!」

もはや言い訳不可能だと悟ったのだろう。開き直ったようにそう言い放つテオに、三人がブチ切れた。

「当たり前だ!んな美味しい…いや、重要な事知ってりゃ、何が何でも決闘にこぎつけていたわ!!」

「そうだ!こんなどうしようもない状態になる前に手を打てただろうが!」

「魔力が使えないなら、武術がどれだけ強くても勝てていたのに…!」

「だから内緒にしてたんだよ!だいたいお前らに奪われるぐらいなら、俺が決闘申し込んで兄上を守る!」

「娶るの間違いだろが!」

「大体、お前の父上は魔力操作の達人だろ!?セオドア様との決闘もそれで勝利したって聞いたぞ!なのになんで、ユキヤに魔力操作を教えてなかったんだ!?」

「それは…」

口ごもり、視線を反らしたテオの目に、見慣れた家紋が彫られた馬車が正門を抜けてくるのが映った。

「兄上!」

テオがその場から走り出す。

エイトール達も慌ててテオを追うが、その周囲にいた者達は一斉に、たった今到着した重厚な造りの馬車に視線を向けた。




「おい!あれ…!」

「アスタール公爵家の家紋。じゃあ…あの馬車の中に…」

話題の人が乗る馬車の登場に、場が騒然となる、

そうして開け放たれた馬車のドアから一人の青年が出てくると、今迄騒がしかった場が一転、水を打ったように静まり返った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

天涯孤独になった少年は、元兵士の優しいオジサンと幸せに生きる

ir(いる)
BL
ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元兵士の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。 ※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。 ※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話) ※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい? ※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。 ※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。 ※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子 ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ そんな主人公が、BLゲームの世界で モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを 楽しみにしていた。 だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない…… そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし BL要素は、軽めです。

気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた

しののめ
BL
クーレル侯爵家に末っ子として生まれたノエル・クーレルがなんだかんだあって、兄×2や学園の友達etc…に溺愛される??? 家庭環境複雑だけれど、皆に愛されながら毎日を必死に生きる、ノエルの物語です。 R表現の際には※をつけさせて頂きます。当分は無い予定です。 現在文章の大工事中です。複数表現を改める、大きくシーンの描写を改める箇所があると思います。当時は時間が取れず以降の投稿が出来ませんでしたが、現在まで多くの方に閲覧頂いている為、改稿が終わり次第完結までの展開を書き進めようと思っております。閲覧ありがとうございます。 (第1章の改稿が完了しました。2024/11/17) (第2章の改稿が完了しました。2024/12/18)

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

処理中です...