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4章.竜の研究者
4.
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ホウミが扉を叩くと中から
「返す金はないよ」
という大きな声が聞こえてきた。呆気に取られたサントたちに対して、苦笑いを浮かべるホウミ。再度、扉を叩くと、小難しい顔をした老婆が現れ、こちらを大して見もせずに、
「うるさいね。何度言ったら分かるんだい。金は無いよ」
と言った。
「あの…」
ホウミが恐る恐ると言った感じで声を発するとようやく、こちらに目を向けた。そして、ホウミに気が付いたようだ。
「何だ、あんたかい。また、借金取りが来たのかと思ったよ」
そう言いながらサントたちにも気が付く。
「…後ろのは?まさか…」
「いや、違いますよ。バナさんにお話を伺いたいという人たちを連れてきただけです」
「ふーん。そうかね。まぁ、確かにこんな間抜けそうな顔をした借金取りはいないだろう。…中に入りな」
その老婆の迫力に圧倒されながらも、その言葉に従った。こういうのも含めて案内が必要だろうと判断したのだろうか。ホウミが一緒で良かったとサントたちが最も安堵した瞬間だった。
「バナ。お客さんだよ」
老婆がそう言うと、屋根裏からひょっこりと男が姿を現した。見た目はまだ若いという感じだったが、ちょっとくたびれた感じで、外見をあまり気にしない性格らしい。どうやら、その男がバナだったらしい。
「副所長に言われて、バナさんのお話を伺いたいという方をお連れしました」
ホウミが事情を説明する。
「はあ、そうですか」
ちょっと気の抜けた返事をしながら、バナは屋根裏から出てくるとサントたちの前に姿を現した。ラテアが改めて事情を説明する。
「竜の噂ですか。それならいろいろとありますよ」
とぼけたような口調で話し始めたバナだったが、話し始めると、途端に生き生きとした口調になった。バナの話は様々で語り継がれている伝説のような話から、本当に近所の噂話と言ったレベルの話まで延々と続いていった。
最初の内は熱心に話を聞いていたサントも途中からうんざりしていた。リラとラテア、そして、ホウミは興味深そうに聞いていた。ホウミはすでに何度か話を聞いた事があったようで、バナが言ったことに補足したり、合いの手を入れていた。そうする事で話がまた膨らんでいき更に延々と話が続いていく事になる。
「お客さんが飽き飽きしているよ」
そう助け舟を出してくれたのが、さきほどの老婆だった。その老婆、ルメ・タリはバナの世話をいろいろと焼いている人のようだ。
「ああ、すいません。話し始めると止まらなくなるといつも怒られるんです」
バナはちょっと照れくさそうに言った。
「返す金はないよ」
という大きな声が聞こえてきた。呆気に取られたサントたちに対して、苦笑いを浮かべるホウミ。再度、扉を叩くと、小難しい顔をした老婆が現れ、こちらを大して見もせずに、
「うるさいね。何度言ったら分かるんだい。金は無いよ」
と言った。
「あの…」
ホウミが恐る恐ると言った感じで声を発するとようやく、こちらに目を向けた。そして、ホウミに気が付いたようだ。
「何だ、あんたかい。また、借金取りが来たのかと思ったよ」
そう言いながらサントたちにも気が付く。
「…後ろのは?まさか…」
「いや、違いますよ。バナさんにお話を伺いたいという人たちを連れてきただけです」
「ふーん。そうかね。まぁ、確かにこんな間抜けそうな顔をした借金取りはいないだろう。…中に入りな」
その老婆の迫力に圧倒されながらも、その言葉に従った。こういうのも含めて案内が必要だろうと判断したのだろうか。ホウミが一緒で良かったとサントたちが最も安堵した瞬間だった。
「バナ。お客さんだよ」
老婆がそう言うと、屋根裏からひょっこりと男が姿を現した。見た目はまだ若いという感じだったが、ちょっとくたびれた感じで、外見をあまり気にしない性格らしい。どうやら、その男がバナだったらしい。
「副所長に言われて、バナさんのお話を伺いたいという方をお連れしました」
ホウミが事情を説明する。
「はあ、そうですか」
ちょっと気の抜けた返事をしながら、バナは屋根裏から出てくるとサントたちの前に姿を現した。ラテアが改めて事情を説明する。
「竜の噂ですか。それならいろいろとありますよ」
とぼけたような口調で話し始めたバナだったが、話し始めると、途端に生き生きとした口調になった。バナの話は様々で語り継がれている伝説のような話から、本当に近所の噂話と言ったレベルの話まで延々と続いていった。
最初の内は熱心に話を聞いていたサントも途中からうんざりしていた。リラとラテア、そして、ホウミは興味深そうに聞いていた。ホウミはすでに何度か話を聞いた事があったようで、バナが言ったことに補足したり、合いの手を入れていた。そうする事で話がまた膨らんでいき更に延々と話が続いていく事になる。
「お客さんが飽き飽きしているよ」
そう助け舟を出してくれたのが、さきほどの老婆だった。その老婆、ルメ・タリはバナの世話をいろいろと焼いている人のようだ。
「ああ、すいません。話し始めると止まらなくなるといつも怒られるんです」
バナはちょっと照れくさそうに言った。
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