異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり

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第六章 星の救済

第96話 ねえ、気がついたんだけど

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 来る時と同じように、ひた走る。

 そうだよ、同じ転移使いが六人も居たのに……。
 その時の俺達は、おかしなテンションで走っていた。

 そして、あれは三日目の夜だった。
「道照」
 甘えてくるシルヴィは俺の膝の上。横からラウラと炎呪が甘えてくる。
 まわりに、四天王たちが居るため、原初の呪いに入ってから、御無沙汰になっている。

「もう、帰ろう」
「ああ、なるべく急ぐが、距離と移動のしにくさはネックだな」
「ここって別に、変な魔法も掛かっていないし、どうして転移をしないの?」
 うんすごく、甘えた感じでね。シルヴィは我慢の限界だったのかな?

 だがその一言が、俺達に与えた衝撃は大きかった。
 なんなら、地下の一件が終わったときに飛べば良かった。
 あそこの空間管理は、俺に移っていた。
 あの知識。

 エレベーターが有ると分かった瞬間、もうそちらに意識が行ってしまった。

 その瞬間、皆は立ち上がり、何故か宣言する。
「「「「帰ろう。今すぐ」」」」

 チトセの、天守閣。あそこなら誰も居ない。

 いや、便利だね。
 穴蔵とは違う、清涼なる空気。
 これは、山から吹き下ろす風だ。

 明るくなった世界に、秒で対応して周りを見る。
 そこには、外を眺めている、ご婦人がたたずんでいた。
 その女の人は、一瞬こちらに来ようとして立ち止まる。
「道照、ばばっちぃ」
 テレザじゃん。

 全員を浄化をする。
 そして、よく見ると、ちっこいのが抱っこされている。
「おおっ。そのこは?」
「そうよ。皆行ったっきり、帰ってこないんだもの。生まれちゃった。男の子。名前はまだ無いからきめてね」

 そう言って、自然な雰囲気で抱きついてくる。
「心配したか?」
「やっぱり多少はね。幾ら強くても、連絡も全然無かったし、夜帰ってくるかと思ったけど帰ってこないし。でも、三日くらい前に地揺れをしたの。その後この子がご機嫌でね。なんとなく無事だと分かったの。それとね、あー叱られるかもしれないけれど、子供が出来たから、もう用済みとか色々考えて。そっちの方が辛かった」
 そう言いながら、泣き笑い。俺達の行動を考えれば、とんでもない話だ。

「そんなわけ無いだろう。帰ってこられなかったのは、向こうが狭くてな。こっちへ飛んで、また向こうへ帰るのが出来なかった。まあ後は、いつものノリだな。悪かった」
「もう。全部終わったの?」
 珍しい、ふくれっ面を見せる。

「ああ、たぶんな。何故か、この世界の管理者にもなったようだし」
 さらっと暴露して、うん? という感じでテレザが首をひねる。
「まあ、今は理解できなくても良い。追々教えよう」

 そんなやり取りを、皆が見ているシュールな状態。
 だが、その後ろに、見た事がある奴らが、ものすごい笑顔で立っている。
 しかも、会いたくない奴ら。

「せっかくの感動する場面ですが、魔王様。お仕事の時間です」
 それはもう、これ以上無い満面の笑みだが、どっちが魔王か分からない迫力で、宰相セバスタン=プリミニが、歩み寄ってくる。
 なぜか、フラマまで居て、炎呪相手に鍛えあげた、拘束魔法を四天王たちに掛けている。

 そして当然、有無を言わさず、魔王城へ。

「お帰りなさいませ。魔王様」
 しばらく見ない間に、統制ができている。
 ビシッと並び、こちらを注目する兵達。

 その奥には、ずらっと並ぶ文官達。

 その手に持つ紙束が、恐怖心をかき立てる。
 日本でも、こんな量の仕事はした事無い。
 早急に、労働基準法を制定しよう。
 
 それまでに、俺は生きているのだろうか?
 俺の後ろを、囚人のように連れて行かれる四天王。
 一様に顔は暗い。
 星のために、頑張ったのにな。

 その後、俺で一週間かんづめ。
 いま横でへたばっている、シルヴィの功績は大きい。思いっきり甘えさせてあげよう。

 だがそこへ、宰相セバスタン=プリミニが、入室してくる。
「魔王様」
 話を遮り、報告をする。

「書類のチェックと、承認は済んだぞ」
 だが、ピクッともせず。言葉を進める。

「それは、ようございました。ですが、これは別件。魔王領飛び地。いえ、魔王領ではなく、魔王様直轄地、チトセとを繋ぐゲートの魔道具。開通式典を執り行います。さっさと着替えてください」
「聞いていないぞ」
「大丈夫です。大まかな事は、向こうの評議会と決め、承認は先ほど終わったと言われた中にあったはずでございます」
 宰相の目がキラリと光る。

「あっはい」
 渋々、迎えに来た文官達に拘束されて、部屋を出て行く。

 なんだか初めて見る、軍服に見える服に着替えさせられて、広間へ連れて行かれる。そこで、テレザが立っており、手が差し出される。
 手を取り壇上へと進む。

 複数台の魔道具が、こちらを向く。
 あれは、映像中継用魔道具だな。

 壇上に立ち、発表用原稿が渡される。
「えー諸君。長らく留守にしたが、この星に訪れていた危機は私たちが、対処を行い問題は終了した。そして、今回私が管理をしている、獣人の大陸にあるチトセと言われる、ドラゴンたちが守る、奇跡の町とのゲートが開通した。そして、テレザとの結婚と、跡継ぎ」
 名前が空白。この場で考えろって言う事なのか?
 男の子、これから色々な事を、背負わなければならないだろう。

 悠司(ゆうじ)。優しく司れ。

「悠司の誕生。それでは、披露の宴を行う。それはみな、カンパーイ」
 目前の会場、見た事ある奴や無い奴までそろっている。
 獣人達まで案内したようで、久々に見る。
 ミクス・マーキス・ハウンド侯爵が居るぞ。

「あの方は、ビスタリウム王国の、王となられたようです」
 宰相が耳打ちしてくれる。
 あのどさくさの後、王に収まったのか。やるな。
 
「そして、獣人族の共和国側、力のあるものには声を開け、転移で連れてきました。十分にお話をして。色々と納得して貰ってから、お帰り頂きましょう。あとは、ヒト族の方々でも、大手の方々。ノーブル=ナーガ様とフィーデ=ヨーシュ様が、現状を存分に理解させるようと仰っておりました。魔王様にすべてお任せすると」
 会場を見ると、二人がしっかりと飲んでいた。横の変な格好は公家か?

 テレザが、何か気がついたようだ。
「これって結婚式?」
「それも入っているな」
 いきなり、満面の笑みになる。
「正式に、私で良いの?」
 そう言って、涙ぐむテレザ。
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