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第六章 星の救済

第95話 気がつけば管理者

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 襲ってくる奴らを凍らせながら、ドリアードを呼ぶが来ない。こいつら植物じゃなく、動物系モンスターかよ。

 すべてを凍らせ、落ち着いたところで、中央に立つ黒いオリフィスを読む。

『力あるものよ。我を呼べ。さすれば力を与えよう』
 呼べって言っても、マスターとしか聞いていないよな。
「おい、居るのか?」
 呼びかけても、出ない。留守のようだ。

「仕方ないな」
 黒いオリフィスに触れ、魔力でもながそうかと思ったら、表面が粘い。
 思わず手を離し、掌を見ると、……表面に。なんと言うことでしょう。黒いうにょうにょがいて、掌から俺の体へ、入ってこようとしている。

「うげっ。こういうときは浄化か?」
 うにょうにょは嫌いなので、周辺ごと力を解放する。一気に浄化をして、綺麗にする。
 
 この時、地表にも何か影響が出たようで、地面がもだえるような地震が発生。震度三から四程度の地震だったが、今まで地震は少なかったようで、大騒ぎとなったようだ。

 チトセでは揺れたね、位で大したことはなかったが、他の王国やメリディウムポーツム経済共和制の各州では、違法鉱山の崩落や建物の倒壊が発生した。

 無事、手の平のうにょうにょは、霧のように消滅をしていき、浄化の光が周囲を埋め尽くすと、襲ってきていた花たちも消えていく。

 黒だと思っていたオリフィスは、透明なクリスタルで、光を発し始める。
「こんな物に文字を刻んでも、光で見えないじゃないか。これをした奴バカだろ」

 ぼやきながら、試しに『我』とやらを呼んでみる。

 するとだな、来たよ。『我』は『奴』だった。
 うん。記憶にある奴が現れた。

 あの時とは違い、土下座はしていない。
「おまえか、我を呼んだのは。あっぱれじゃ。力を……」
 当然、俺に気がつき目を見開き、俺から出ている神気とその波動を感じたのだろう。
 だらだらと汗を流し、ガクガクと震え始める。

「あっあのぉ。そうだ、おまえに与える力は無いが、大いなる業績を加味して。えーとそのぉ、内緒だが因果をいじり、元にもどしてあげよう。どうじゃ、よくある勇者召喚のハッピーエンド。事故の直前に戻るが、おまえ。いやあなた様のその力なら、問題はないはず。えぇーと…… いかがでしょうか? そもそも、あなた様は一体? どう考えても、その波動。私より階位が上だと思うのですがぁ」
 じぶんでは、気がついていないだろうが、体全体が揺れ始めた。最初は、ヘッドバンギング状態だったが。見た感じは、静かな世界で一人だけ、ヘビメタのノリで振動している変な奴。

「まあ、落ち着け。こちらでの生活にも慣れたし、家族も出来た。おおっと、転移は出来ないだろ。逃げようとするな」
 そう説明すると、絶望的な表情になる。

「今更、因果をいじって元に戻すなら、そうだな、縛り付けてくすぐり地獄を万年単位でしてやろう」
 言葉もなく、マガツヒはふるふると首を振る。

「それに、おまえが向こうに対して、勝手に干渉したことは、上にすでにばれている。次の査定が楽しみだな」
 にやっと笑う。

「ひぃぃ。私も一生懸命だったのです。お許しください」
「判断をするのは俺じゃない明王様か、菩薩様辺りかなぁ」
 そう言うと、顔が伏せられ、ふるふるしていたが、おもむろに顔が上がる。

「ちっ。使えねえ」
 そう言うと、どっかりと座り込む。

 開き直ったようだ、表情が完全にやさぐれ「けっ」とか言っている。

 わらわらと、みんなが集まり、マガツヒを眺める。
「このちんちくりんは、なんです?」
 炎呪が、すなおな評価で、疑問を聞いてくる。

「この世界の管理? いや観測者と言ったな」
「誰がそんなことを。私は管理者だ」
「言ったのは多分、吉祥天様だ」
 いきなり座り込み。拝み出す。

「はい。私めは、観測者でございます」

「そうね。管理者はあなたがなさい。マガツヒは聞きたいことがあるから、一緒に来なさい」
 水の精霊、瑠璃が突然現れ、周囲にいきなり本物の花が咲き乱れる。
「えぇ。あっ」
 その言葉を残し、マガツヒは消える。

 その後、この施設のことが、頭に振ってきて理解した。
 この星で、生命を育もうとして失敗。
 物理的何かが違うのか、星自体も冷え始めた。それをごまかす為、この施設を造り延命させた。

 ちなみに、中央の柱。
 あれは、エレベーターだった。
 最初に、精霊の像に魔力を与えたのが間違いだった様だ。
 この数ヶ月の苦労は一体?
 思わず、膝をつく。

 周りのみんなは、分けががわからず。放心状態だが、仕事が終わったのは理解できたようだ。

「さあ帰ろう」
 みんなを促し、横並びに一歩を踏み出す。
 その顔は、晴れ晴れとかやり遂げたではなく、呆然なのは仕方が無い。

 寝ていて、起きたら、ほとんど終わっていたからな。
 苦労したのは、この数ヶ月の退屈。
 あっいや、その前の、鍾乳洞は大変だったか。

 柱に向けて、力を加える。
 光を発し、これもクリスタルだったようだ。

 扉が開き、乗り込む。
 床が透明なのが怖い、だが光っているので少しはましだ。
 みんなは、不思議がって外を見ているが、暗くてらせん階段があるだけなので、景色は変わらない。

 凄い加速が終わると、もう減速が始まってくる。
 どう考えても、移動距離を考えるとおかしいが、途中で空間をスキップしたようで三〇分程度で上に着いた。

 見たドームだが、来た時と違い、間接照明のように、光の柱が幾筋も通っている。

 少し休憩後、俺たちは、鍾乳洞となっている通路へ足を踏み出す。
 そう、その時誰も思いつかなかった。最悪なことに。
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