異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり

文字の大きさ
19 / 100
第二章 人? との交流

第19話 初めての経験。

しおりを挟む
「なあ。やめないか?」
「ああ? なんだこの亜人がぁ。ビビっている腰抜けなら、避けずに切られやがれ」
「やだよ。切られると痛いんだぞ。血も出るし。死んじゃうこともある。すると残りの人生で、得られるかもしれなかった良いことも得られず損をするじゃないか。今まで運が悪ければ、これから良いことがあるかもしれない。何故まともに働き暮らさないんだ?」

「やかましい。俺たちは生まれながらの農奴なんだ。働いても働いても一生報われない。親父達もずっとそうだった。俺たちは、辛かったんだぁ」
 ふむ。一理ある。
 生まれたときから決まっている人生。それはつまらんかもしれない。
 俺も、自由にできなかったら、神官だった。

「よし分かった。ここを治めている奴がいる。人から何かを力尽くで奪うなんておまえ達が嫌っている領主と一緒じゃ無いか。それでも良いのか?」

 そう叫ぶと、兵達がなんだとぉ。という顔になり、盗賊達もなんだとぉ、という顔になる。

 そして、全体の動きが止まる。

 領主側。二十人くらい。
 盗賊側。六十人くらいの大所帯。

 どちらも、まだ、けが人で済んでいる。


 少し前。
 俺は馬車に乗り、走り始めてからえらく時間がかかることに不安になり、どこに向かっているのか聞くと、『樹の実が必要な娘のところに決まっている』という返事を頂いて、領都シビタスカヌムという町へ強制的に向かっていた。

 まあ良いかと、一応納得はしたが、少し走った頃に周りの様子がおかしくなってきた。周辺探査をすると、百人以上に囲まれていた。

 周りに、兵達も付いているようだが。馬車が止められる。
 ハウンド侯爵には止められたが、俺は馬車から降りる。
 男二人で狭い空間は、いい加減うんざりしていたし。
 なんとなく、獣人の盗賊にも興味があったし、この中で一番強いのは俺だ。
 むろん、この時は殺し合いなどは、意識の外だったし。

 馬車から出てみると、街道沿いに、あまり大きくは無いが、丸太が数本置かれていた。
 だが、馬車を止めるには必要十分。
「なかなか手慣れているな。いつもやっているのか?」
 兵達と、対峙している集団を見る。

 武器は、棍棒に幾本かの剣。
 鎧は無いが、防具を着けている奴がいる。

 黒だな。
 残念ながら、今回が初めてでは無いようだし、山側に潜んでいる四十人程度は家族なのだろう。
 となると家族ぐるみの犯罪組織。
 すると、殴り合いでは済むはずは無く、命の取り合いか?
 少し、悲しくなったが、話くらいは聞いてみるかと、手近な奴。それも剣と防具をを装備している奴に、話しかける。

 すると、だなあ。
「なあ。やめないか?」
「ああ? なんだこの亜人がぁ。……」
 と、言われたわけだ。
 海外へ行って、人種差別を受けた人の気持ちが分かったよ。

 それでも話を聞くと、農奴制に嫌気がさしているらしい。
 ふむ。これは、双方での話し合いが必要だな。

 動きも止まったし、馬車に乗ってハウンド侯爵を丁寧に担いで出てくる。
「ちょっと待ってくれ。外は危険では?」
 そんなことを言って、結構往生際が悪かった。

「よーし。ちゅうーもーくぅ」
 目一杯(めいっぱい)声を張る。
 最近カラオケにも行けてないなぁ。まあ、異世界には無いけど。
 一人でぼけて、一人で突っ込む。
 緊張感のある時って、一人ぼけをするよね。

「こちらにいらっしゃる方を、どなたと思う。恐れ多くも天下の大辺境伯。ミクス・マーキス・ハウンド侯爵だあぁ。皆のもの、頭が高い。ひれ伏せぇ」
 そう叫んでみる。
 まあ元の台詞は知っているが、理解して貰う為それらしく言ってみる。

 当然兵達は、姿を見てオロオロし始めるし、俺を睨んでくる。

 ただ、元農奴の盗賊側は、一瞬ぽかんとした後、両膝をついてしまう。
 ひれ伏せが分からなくて、この状態かな?

「そこの奴。もう一度、俺に言ったことを言ってみろ」
「あっ。はい。生まれが農奴なら、子も孫も農奴というのは嫌でございます。あそこにいる、オクタヴィアンなどは、めっぽう賢くて、手先が器用で仕事さえさせてもらえれば、きっと、土を耕すよりも世の中の役に立てるはずです。むろん彼だけでは無く他にも、立派な奴がいます。そこで指揮を執っていた、コンスタンタンなどは賢く魔力も多い。きっと魔法師として、立派にお役に立てると思いますが、農奴の我々には勉強さえできません。どうか? 勘案(かんあん)して身分を再考していただけませんでしょうか」
 そう言って、頭を下げる。

 それを見て、他の者達も頭を下げる。

 様子がおかしい為か、森から家族達もぞろぞろと出てくる。
 かなり小さい子供達もいる。

 ただまあ。ハウンド侯爵に向かって飛んできた矢を掴んで、射ってきた奴に投げ返す。

 すべてを台無しにする一射だったので、ちょっと力が入ったら頭を穿ってしまった。狐で歳は不明だが、謝る気は無い。
 放っとくと、ハウンド侯爵に当たっていたしな。

「ふむ。それもそうか。考えてみよう」
 後に知ったが、この国では荘園制度では無く、土地そのものが領主貴族の持ち物で、土地や住居。服や食料そのすべてについての使用料や費用を返済と称して収穫作物。つまり収入すべてを没収される。
 一度農奴になれば、脱出することはできない。

 現在の日本でも、多数は似たようなものだがな。
 少し前までの、生活を考えてみる。

「よーし。話は付いたな。ハウンド侯爵は考えてくださるようだ。さて、今度はそちらだ、今までに、罪。人を殺して物を奪った奴。奪ったものを食った奴。前へ出てこい」
 まあ全員だよな。

「罰則に応じて、犯罪奴隷という言葉があるかは知らんが、労働させればどうだ?」
 こそっと、ハウンド侯爵に聞いてみるが、今イチハウンド侯爵殿はご機嫌が斜めのようだ。
「全員。付いてこい」
 勝手に宣言をして、付いてこさせることにする。
「私を盗賊の前に引き出し、あまつさえ頭越しに約定を定めるとは」 
 背後から、何か呪詛が聞こえるがまあ良い。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

処理中です...