神の使徒は闇を走り、道化師は戯れる。ー 異世界、世直し道中記 ー

久遠 れんり

文字の大きさ
35 / 117
最悪な国、ニコ国

第34話 ヨウシア国 王都アルドリット

しおりを挟む
「お嬢様、ご無事でしたか」
 ミノヤキーノ商会店長テンダーは、クレメンスティーナだけが現れ、父親ターナボッターの姿も、荷物を積んでいたはずの荷車もないことに、当然だが気がついている。

「ごめんなさい。父も荷物も盗賊に……」
「ひょっとして、カモネギー様も?」
「ええ」
「そうでございますか」

 テンダーはこの時、商品がなくて困っていたのだが、その事は顔に出さない。
 とにかく、トリヤキー商会へと向かう。

 店としては商売敵、だが店主同士が仲がよく、姉妹店のような感じであった。
「ソリレスさん」
「はい……」
 そう答えてこちらを向いた顔は、やつれて死にそうだった。

 だが…… 
「お嬢様、ご無事でしたかぁ」
 そう言って飛びつき、躱されて転ぶ……

「いたた、ひどい」
 だが顔は一瞬で血色がよくなっていた。

「こちらも、売り物がありませんね」
「ええ。この王都で材料を仕入れて作ると、同じ物でも値段が三倍ほどになってしまうのでしょう。うちも同じです」
 二人ともそう言って悲しそうだ……

「材料出すから、二軒で分けて」
「ここじゃ駄目。出すなら部屋でゆっくり」
 妙に色っぽい顔で、そんな事を言いながら、クレメンスティーナとセセリーが飛びついてくる。

「それもそうか」
 納得したところで、ミノヤキーノ商会店長テンダーとトリヤキー商会、番頭ソリレスの目付きが厳しくなる。
 それに気がついた二人は……

「旦那様です」
 クレメンスティーナが、照れ照れしながら嘘を言う。

「ふざけないで」
 セセリーが叫び、ディアナが割り込む。
「駄目です、カグラは私の」
 とまあ、言い合いが始まる。

「私たちが盗賊に捕まっていたのを、助けてくださった方です」
 収拾が付かないところを、トシュテン商会の娘イーリスが説明する。
 彼女の家は、紙の卸と小売りだから、盗まれた損は出るが、この二軒のように商品がなくて困ることはないだろう。

 心配なのは父親の容態くらいだが、それは見てあげることになっている。

 早速店に入って行くと、奥の扉を開き、店を突き抜けて倉庫へ向かう。

「生糸と木綿で良いのか?」
「はい」
 盗賊から奪ったものやなんやかや……
 あの時、ダミアン王国王都ヴァハマーで情報収集したら、なぜか亜空間庫の中に増えていた商品達。
 やっと捌ける。

 ついでに、生地なども出していく。

 娘二人は、やっぱりカグラさんとか言っているが、店主さんと番頭さんは、目が点……

「どうして何もないところから品物が……」
「そっちか、気にするな。こういう事もある」
 ぶった切る。

 そして、出てきた物を見て……
「どこの王家から持って来たのです?」
 反物には、家紋が入っていたらしい。
「気になるならのけてくれ。もうなくなった国の物だ」
 後で知ったが、家紋などは知られており、勝手にそれを使うと首が飛ぶそうだ。

「商売になりそうか?」
「ええ、ええっ? これは一体?」
 俺が趣味で作ったタッパーと、おそろいで試しに作った白磁の器達。

「そう、それステキでしょ」
 全セットを出すのは初めてだから、クレメンスティーナとセセリーが飛びついてくる。

「この透き通るような薄さ、そして白さ。そして金? この装飾が素晴らしい」
 装飾をするときペイズリーが思い出せなくて、唐草みたいな、葛の葉っぱのような、要するに蔓草で葉っぱをハートにして装飾をした。金みたいなのは金だ。
 比重は測っていないから本物か不明だが。
 念じたら空間に出現をした。

 ちなみに、金で形を作り、カップとは分子レベルで融合してある。
 一般的な、王水で溶かした金を塗って、窯で焼く物とは強度が違う。

 そうこの器を再現するために、俺は火山などを巡り、硫黄を探したり陶石鉱床を探したりした。無論硝石も……

 んでまあ、硝石を見つけたら、黒色火薬を作りたくなるじゃない。
 まあ、ワタはあるし、ニトロ化してその方が簡単だけどね……
 皆高校生の時、化学実験室に忍び込んで、一度は作ったよね。火薬……
「ふははははぁ」
「どうされたのでしょうか?」
 高笑いをしたら、かわいそうな目で見られた。

「やはり無理でしょうか?」
 そう今まさに、ミノヤキーノ商会店長テンダーとトリヤキー商会、番頭ソリレスさんが、この器を作りたいと仰ったのだ。

「作るなら、土が必要です。この近くに火山か火山だったところはありませんか?」
 試しに聞くと、即答で帰ってきた。
「あります」


 それでまあ、数日間。死にそうだった商店を復活させて、ついでに、トシュテン商会へイーリスと共に向かう。
「おっおおっ、無事じゃったのかぁ」
 そう言って、お父さんが走ってくるが、器用にひらりと身を翻し、お父さんは通りへ、顔から突っ込む事に。ナイススライディング。

 顔中擦り傷、そして、血を吐く……
「お父さん」
 流石に、心配してイーリスも駆け寄る。

「おや、無事だったのかい」
 店の奥から、女将さん登場。
 なんと言うか恰幅が良い。
 イーリスも年を取ると、こうなるのかと少し想像。

「私のお母さんは、亡くなって、マーシーさんは後妻さんです」
「あっそうなんだ」
 何かを読んだかのように、イーリスに突っ込まれた。

「どれ?」
 お父さんの体をスキャン。
 おやっさん、スキフネーさんは胃潰瘍。

 その時、周囲が光ったぁ……
 まあ、いつものあれです。
 
 不思議そうな顔をする本人と、ニコニコ顔のイーリス。
「まあ中に入ってお茶でも」
 なぜか俺がそう言って、店の中へ入る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

令和日本では五十代、異世界では十代、この二つの人生を生きていきます。

越路遼介
ファンタジー
篠永俊樹、五十四歳は三十年以上務めた消防士を早期退職し、日本一周の旅に出た。失敗の人生を振り返っていた彼は東尋坊で不思議な老爺と出会い、歳の離れた友人となる。老爺はその後に他界するも、俊樹に手紙を残してあった。老爺は言った。『儂はセイラシアという世界で魔王で、勇者に討たれたあと魔王の記憶を持ったまま日本に転生した』と。信じがたい思いを秘めつつ俊樹は手紙にあった通り、老爺の自宅物置の扉に合言葉と同時に開けると、そこには見たこともない大草原が広がっていた。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...