神の使徒は闇を走り、道化師は戯れる。ー 異世界、世直し道中記 ー

久遠 れんり

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最悪な国、ニコ国

第33話 希望の光、カグラ。

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「なんだと、それはまことか?」
「はい」
 セフレノ=カルイヨン侯爵は報告を受けて、おのれの失職を覚悟した。

「調査をするという形で、なんとか私はこの国に留まる。そなた達は何とか姫を救出をしてくれ。速やかに…… そして共に脱出をしよう」
「はっ」


「―― とは言ったが、あそこって二十四時間人の出入りがあるんだよね」
「それに姫様、どう見ても正気じゃないし」
 男達は意外と普通だが、女達は完全にまともじゃなかった。

 あの頭がぽーっとする香は、女に対して何か特有な効果があるのかもしれない。
「カグラがいればなぁ」
 ブルーノがそう言ったとき、皆は思い出す。

「彼は…… そうだ。急げば、今なら我が国にいるはず」
 そう言われて思い出し、皆が見つめ合う。

「そうだよ、商会の子達を送っていくって」
 落ち込んでいた彼らだが、カグラが自国にいるかもしれない。
 それが希望の光となり、にわかに活気づく。

「なら、とっとと姫を助けて彼の元へ連れて行こう」
 彼らは、盗賊に捕まり精神的におかしくなっていた女の子達を、彼が癒やしの光を与え、治療したのを見ている。

 王族として、もう婚姻の対象とは成れないだろうが、それでも少しは姫様が助かる。

 侯爵に救世主のことも含めて話をして、脱出準備を始める。
 馬車と馬、食料。
 近場で補給を行うことなく、適度な距離を置き補給拠点を作っていく。


「判りやすいなあ、ヨウシア国の奴ら見つけやがったか。まあ地下へ来れば全員行方不明にして…… いや、あの貴族が城内で盗賊に殺されて…… それはまずいか? ああそうか、城外に出れば俺達の責任にはならんな。苦情が来れば何やらあわてて帰りましてと返せば良い。戦争への寄付は勿体ないが、仕方が無い。あの女も、もう飽きた……」
 

 とまあ、あっちにもこっちにも都合があるようで、手薄な警備をくぐり抜けて、薬にと酒にやられている裸の連中などあっという間に蹴散らして、姫様を二人とも解放をする。
 その他の女の子達は、ドアを開け放しておいたので、意識が戻るなら勝手に逃げるだろう。
 その中に、ニコ国の王妃カティーナが居たのだが、誰も気がつかなかった。


 彼らは手はず通り、馬車に二人を乗せると暗闇の中、馬車を走らせる。
 不思議なのは、城門が開いていたこと。

 当然怪しいが、そんな事は言っていられない。
 流石に町の入り口は開いていないが、買収をして、少しの時間だけ開けて貰った。

 だが、彼らの馬車を追うように、武装をした騎馬隊が飛び出してくる。
 当然門番は、彼らが来たら命令により開ける予定だった。
 他国の重鎮ですからと、我が儘を聞いてあげる振りをして、開けろと命令されていたのだが、金を請求する小ずるさを持っていた。

 そして……
「畜生、鎧を着て、闇夜だと全く見えん。野郎ども落馬するなよ」
「あいよ」
 彼らは捕まえに出ようとして、はたと困った。
 城の兵達はつかえない。奴らと話をして事情を話すのは色々とまずい。
 そのため、盗賊達が武装して飛び出したのだ。

 なれていない馬、夜の闇。
 そして、重いフルプレートの鎧。
 人は、武装だけで強くは成れない。

 ヨウシア国の連中は、逃走の準備をしっかりしていた。
「ぬわっ倒木だ、止まれ」
 暗い夜道、見えたときには目の前。
 馬はひらりと飛び越えるが、慣れない鎧を着た盗賊達は次々に落馬をして行った。

 おかげで、彼らはなんとかヨウシア国へと逃走する。



 ―― 少し前、カグラと一緒に移動をしている村娘達、実家へ帰る気は毛頭なかったが、攫われてそのままのため、親に挨拶くらいはすると言って、似たような村があれば寄り道をしていた。

 だがその心は、カグラを幼馴染み達に見せびらかしたい。
 壊れた心は、リハビリを受けてすでに絶好調となっていた。
 カグラに甘えると、治療と称してエッチができる。
 もうすっかり、普通に生活ができるほどの回復を見せていた。

 道中で食べる料理は、村での生活を考えると無茶苦茶ごちそう。
 肉と野菜、それに薬草が混ざっていたが、苦みはあく抜きして抑えてある。
 医食同源の意識を持って料理を作っていたカグラ。

 本人は、この頃米が食いたい発作が出てきていたが、まだ見つかっていない。

 原種は陸稲だと言われているから、どこか探せばありそうだが……

 そうして、やっと村を見つける。
 随分とヨウシア国側だったので、盗賊達は何かをしに来て、女でも欲しくなって攫いに寄ったのかもしれない。

「おおっ、どこへ行っていたんじゃ。心配したぞ」
「お父さん、お母さん」
 娘達を見つけて走り寄ってくる親達。

「これでやっと、援助が受けられる」
 折角の再会、だが…… 彼女達の両親が、物騒な言葉を吐く。

「いや今年は、日照りのせいか、育成が悪くてのう。村全員が困っていたのじゃ」
「そうそう、丁度働き手を探している商店さんが来てねぇ。年頃の娘がいればと話しをしていて…… そしたらお前達がいなくなって、困っていたのよ」

 村人さん達に聞いてみる。
「その商店の人、見たことがある人?」
「いや無い」
 それを聞いて俺は頭を抱える。

「そいつは、多分盗賊の下見だ」
「なん…… じゃと…… では援助は?」
「ないだろ」
 そう答えると、親達は娘の心配ではなく、自分達のことで頭を抱える。

 ちょっと、むっときたが、これがこの世界。
 日本でも昔あった話しだ。

「これをやるから、しばらく食いつなげ。その間に芋だって育つだろ」
 一見雑草のように生えているが、あれは芋の葉っぱだ。

 指さすと、村人はぎょっとした顔をする。
 だが、俺が差し出した干し肉を見て喜ぶ。

 娘達は、複雑そうな顔をしていたが、きっぱりと決別できると喜んでいた。
「私たち、やっぱり冒険者をします。チームメンバーにしてください」
 嬉しそうな顔をして、擦り寄ってくる。

「とりあえず保留で、セセリーの店とかで雇ってもらえるなら、そっちの方が良いだろ」
 そう言うと、彼女達はまた悩み始める。カグラがいても冒険者は危険。
 お店なら、給料は安くても危険は少ない。

 ちなみに、村では彼女達がいなくなったため、幼馴染み達は別の人買いに売られたようだ。それを聞いて彼女達は落ち込んでいた。
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