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最悪な国、ニコ国
第27話 国の乗っ取り
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「それはまことか?」
「ええ。王子様を相手に嘘は申しませぬ」
商人らしからぬ悪い笑顔が三つ。
「ふうむ。ダミアン王国を抑えれば、我が国は街道を得ることになる。確かに大きな話」
そんな提案がなされ、そのために必要なら第二王子エーバリが王位を取るのを支援するとの話だ。
「ええ。バークヘア様は、元ダミアン王国のウィリアム子爵家。お力をお貸し頂けるならば、それに報いるとのこと。悪くはない話でございましょ」
揉み手が乱舞する。
室内にもぎゅもぎゅと音がする中、にちゃあと言う音まで。
「よし機会は与えよう。進捗を見て全面協力をするか考える」
意外と王子は慎重派だった。
だが、城内の人的相関図と商人達がいれば、貧乏小国で苦労をして来た貴族達の懐柔は思ったより簡単だった。
そう、此処で手を貸せば、ダミアン王国を切り取り街道に出られる。
ダミアン王国が、強引な下剋上で王が変わったことは知られており、潰されて恨みを持った貴族達は沢山いる。
それに対して、顔が利くというのである。
にわかに信憑性が上がり、小国でくすぶっていた貴族達の大半は目が金貨になった。
無論伝統的に、自領の商を行っている領主達の中にはそれを否定をするが、その伝統的な商品を、大々的に販売できる商機であるところには惹かれる。
「うむむ。我が祖先が見いだしたる伝統的な彫り物。鮭を取り合うクレージーベアとゴブリンの戦い。それが大々的に認められるのは嬉しい。だが、王と王太子に刃を向けるのは……」
そう言いながら、フターミ領領主であるヤクーモ=アーサーヒ伯爵は特産である木彫り、クレージーベアとゴブリンの戦いを愛おしそうになでる。
クレージーベアが鮭を咥え、諸手を挙げて集ってきたゴブリン達と戦う緊迫した一瞬を切り取った名作である。
領内で豊富な木を使い、名産として作られている。
「少し考えさせて頂こう」
「お早めに参加すれば、功績も大となります」
商人らしい、意地悪な物言い。
「判っておる」
そう、今代の王も、先代も融和外交を進めてきた。
「民が平和に暮らせればそれで良い」
姫達を婚姻に使い、周辺国と血を繋ぎ平和を得てきた。
ただまあ、それにも自身の欲が絡んだ連中からの反対もある。
「姫様を道具のようにお使いになるとは、納得できませぬな」
「ではそちは、戦争。事を構えて数千の民を殺せと?」
王はじろっと睨み付ける。
「勝てば良いだけのこと。我が国で作られる鎧は無敵でございます」
なんて言っていた貴族の心の内は、姫様を私が妻に迎えようと……
幼きときから目を付けて、本人からも良いわよと返事を頂いていたのに。
ヤマーケイ=ロリスキー侯爵は悔しがったとか……
まあそう言う感じで、善政をしても連綿と続く王家と貴族の確執は多少あるものである。
その情報を元に、あっという間に懐柔が進む。
巧みな言葉により、人々の欲を刺激する。
それは悪魔の囁きというもの。
姫の拉致が報じられた後、兵を集めて王は救出を命じた。
そう、王家周辺にいる兵達が、王命により我先にと出て行く。
「行ったな」
王都近くでのろしが上がる。
周囲の貴族家から派遣された兵達は、少し遅れて王都テイネィへと集結をする。
そしてそれらは、姫の救出では無く、王に対して牙をむく。
無論城内には兵がいるのだが、この時には近衛を含めて、少数しか残っていなかったのだ。
それはあっという間の出来事だった。
「ぬっ、これはどういう事?」
「それは、こういう事です。ご安心ください。私が王となり、これからこの国は大国への一歩を踏み出すのです」
第二王子エーバリと、後から入ってくる者達。
そして、奴隷のように紐を掛けられ、連れてこられた女達。
「ヴァイオレット…… なんと言う姿に」
拉致されたはずの彼女がそこに…… だが、再び相まみえた姿に、明るく笑う彼女の面影は無かった。
「エーバリ。これはどう言う事だ」
王は一同を睨み付ける。
「おや、察しが悪いですね。先ほど言ったとおり、これからこの国は、大きく変わるのです。この者達と一緒にね」
見知った貴族達、それに混ざるガラの悪い者達。
その中から一人、薄気味悪い男が出てきて、王に対して礼を取る。
「初めまして、ニコ国アルバート王。わたくしは、ダミアン王国ウィリアム子爵家の嫡男バークヘア。お見知りおきをよろしくお願いいたします」
それは見事な振る舞いだった。
ダミアン王国はニコ国に比べると大国。
「これは丁寧に、だが……」
困惑をする王。
「此度は、わたくしめの復権に、ニコ国がバックアップをしてくれるという話し。その慈悲に、わたくし感謝をいたします。御礼と言ってはなんですが、この国に対して些少でございますが便宜を図りましょう。ええ、お約束いたします」
そう言って、彼の浮かべる笑みを見て、王の背筋に冷たいものが流れる。
「そんな話は聞いておらん」
王はもちろん、王妃や王太子ルイージも驚く。
縄を掛けられて転がっているが……
「ええ約定は、新王と結びました。ですので、あなたは速やかにご退位をお願いいたします」
「ふざけるなぁ」
王が叫ぶ。
だが……
「ふざけてはおりません。準備は出来ております」
宰相ジェフリー=ディンブルが、書状などを持ってくる。
「ジェフリー、お前まで」
王は驚く、今朝までそんな素振りは無かった。
「すみませぬ、家族が人質となっておりまして……」
彼の悔しそうな顔、本当にそうなのだろう。
「くっ、サインをする。国璽を此処に」
「はっ」
床に転がる王妃達、サインをすれば殺されることは無いだろうと、王は考えて調印をしてしまった。
だが、盗賊達の考えの元、新王となったエーバリへの牽制のためにも、むごたらしく殺された。
此処に、ニコ国の旧王体制は崩壊をした。
「ええ。王子様を相手に嘘は申しませぬ」
商人らしからぬ悪い笑顔が三つ。
「ふうむ。ダミアン王国を抑えれば、我が国は街道を得ることになる。確かに大きな話」
そんな提案がなされ、そのために必要なら第二王子エーバリが王位を取るのを支援するとの話だ。
「ええ。バークヘア様は、元ダミアン王国のウィリアム子爵家。お力をお貸し頂けるならば、それに報いるとのこと。悪くはない話でございましょ」
揉み手が乱舞する。
室内にもぎゅもぎゅと音がする中、にちゃあと言う音まで。
「よし機会は与えよう。進捗を見て全面協力をするか考える」
意外と王子は慎重派だった。
だが、城内の人的相関図と商人達がいれば、貧乏小国で苦労をして来た貴族達の懐柔は思ったより簡単だった。
そう、此処で手を貸せば、ダミアン王国を切り取り街道に出られる。
ダミアン王国が、強引な下剋上で王が変わったことは知られており、潰されて恨みを持った貴族達は沢山いる。
それに対して、顔が利くというのである。
にわかに信憑性が上がり、小国でくすぶっていた貴族達の大半は目が金貨になった。
無論伝統的に、自領の商を行っている領主達の中にはそれを否定をするが、その伝統的な商品を、大々的に販売できる商機であるところには惹かれる。
「うむむ。我が祖先が見いだしたる伝統的な彫り物。鮭を取り合うクレージーベアとゴブリンの戦い。それが大々的に認められるのは嬉しい。だが、王と王太子に刃を向けるのは……」
そう言いながら、フターミ領領主であるヤクーモ=アーサーヒ伯爵は特産である木彫り、クレージーベアとゴブリンの戦いを愛おしそうになでる。
クレージーベアが鮭を咥え、諸手を挙げて集ってきたゴブリン達と戦う緊迫した一瞬を切り取った名作である。
領内で豊富な木を使い、名産として作られている。
「少し考えさせて頂こう」
「お早めに参加すれば、功績も大となります」
商人らしい、意地悪な物言い。
「判っておる」
そう、今代の王も、先代も融和外交を進めてきた。
「民が平和に暮らせればそれで良い」
姫達を婚姻に使い、周辺国と血を繋ぎ平和を得てきた。
ただまあ、それにも自身の欲が絡んだ連中からの反対もある。
「姫様を道具のようにお使いになるとは、納得できませぬな」
「ではそちは、戦争。事を構えて数千の民を殺せと?」
王はじろっと睨み付ける。
「勝てば良いだけのこと。我が国で作られる鎧は無敵でございます」
なんて言っていた貴族の心の内は、姫様を私が妻に迎えようと……
幼きときから目を付けて、本人からも良いわよと返事を頂いていたのに。
ヤマーケイ=ロリスキー侯爵は悔しがったとか……
まあそう言う感じで、善政をしても連綿と続く王家と貴族の確執は多少あるものである。
その情報を元に、あっという間に懐柔が進む。
巧みな言葉により、人々の欲を刺激する。
それは悪魔の囁きというもの。
姫の拉致が報じられた後、兵を集めて王は救出を命じた。
そう、王家周辺にいる兵達が、王命により我先にと出て行く。
「行ったな」
王都近くでのろしが上がる。
周囲の貴族家から派遣された兵達は、少し遅れて王都テイネィへと集結をする。
そしてそれらは、姫の救出では無く、王に対して牙をむく。
無論城内には兵がいるのだが、この時には近衛を含めて、少数しか残っていなかったのだ。
それはあっという間の出来事だった。
「ぬっ、これはどういう事?」
「それは、こういう事です。ご安心ください。私が王となり、これからこの国は大国への一歩を踏み出すのです」
第二王子エーバリと、後から入ってくる者達。
そして、奴隷のように紐を掛けられ、連れてこられた女達。
「ヴァイオレット…… なんと言う姿に」
拉致されたはずの彼女がそこに…… だが、再び相まみえた姿に、明るく笑う彼女の面影は無かった。
「エーバリ。これはどう言う事だ」
王は一同を睨み付ける。
「おや、察しが悪いですね。先ほど言ったとおり、これからこの国は、大きく変わるのです。この者達と一緒にね」
見知った貴族達、それに混ざるガラの悪い者達。
その中から一人、薄気味悪い男が出てきて、王に対して礼を取る。
「初めまして、ニコ国アルバート王。わたくしは、ダミアン王国ウィリアム子爵家の嫡男バークヘア。お見知りおきをよろしくお願いいたします」
それは見事な振る舞いだった。
ダミアン王国はニコ国に比べると大国。
「これは丁寧に、だが……」
困惑をする王。
「此度は、わたくしめの復権に、ニコ国がバックアップをしてくれるという話し。その慈悲に、わたくし感謝をいたします。御礼と言ってはなんですが、この国に対して些少でございますが便宜を図りましょう。ええ、お約束いたします」
そう言って、彼の浮かべる笑みを見て、王の背筋に冷たいものが流れる。
「そんな話は聞いておらん」
王はもちろん、王妃や王太子ルイージも驚く。
縄を掛けられて転がっているが……
「ええ約定は、新王と結びました。ですので、あなたは速やかにご退位をお願いいたします」
「ふざけるなぁ」
王が叫ぶ。
だが……
「ふざけてはおりません。準備は出来ております」
宰相ジェフリー=ディンブルが、書状などを持ってくる。
「ジェフリー、お前まで」
王は驚く、今朝までそんな素振りは無かった。
「すみませぬ、家族が人質となっておりまして……」
彼の悔しそうな顔、本当にそうなのだろう。
「くっ、サインをする。国璽を此処に」
「はっ」
床に転がる王妃達、サインをすれば殺されることは無いだろうと、王は考えて調印をしてしまった。
だが、盗賊達の考えの元、新王となったエーバリへの牽制のためにも、むごたらしく殺された。
此処に、ニコ国の旧王体制は崩壊をした。
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