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第十四局【師団名人戦編①】
2巡目◉取らず
しおりを挟む福島弥生は親戚の影響で麻雀を覚えた。従姉妹の福島社はプロ級の腕前で所作ひとつ呼吸ひとつから相手の手の内を見抜いていくメンタリストのような女だった。彼女の魔法のようなプレーに影響を受けて弥生は麻雀の魅力に取り憑かれた。
(ヤシロちゃん。今日仕事終わったら見に来てくれるって言ってたけどもう着いたかな)
ケータイを確認すると
“そろそろ着くよ。生き延びてる?”とメッセージが届いてた。
“今から3回戦、相手がタイトルホルダーだからきついかも”
“すぐ応援に駆けつけるからね!”
(…とりあえず到着前に敗退してなくて良かった。私の強くなった所。見に来てね!)
プロの対局は観戦自由だ。見られて恥ずかしい麻雀を打つなど言語道断であるのだから後ろ見自由というのが師団の方針であった。むしろ見られて、ファンを獲得していってこそプロプレーヤーというものである。
『それでは3回戦、始めて下さい』
「「よろしくお願いします!」」
————
————
マナミとヤヨイの卓のトップは2人のどちらでもなく諏訪翔太プロの圧倒的な勝利だった。プロ6年目の前年度新人王戦決勝まで行ったあの諏訪プロだ。
「ツモ!」
「ロン」
「ツモ」
「ツモ」
「ツモ!」とまあ何回言われたか分からない。何点叩いても関係ないトップ2着の通過するトーナメントで諏訪翔太は超ダントツトップとなる(意味はない)しかし、それで集中が切れたりはしないのがトーナメントだ。それはそう。2着に残れば同じことなのだから。
諏訪が大暴れする半荘ではあったがオーラスのマナミとヤヨイの2着争いはそれ以上に熱かった!
ヤヨイ手牌
六七七③④⑦⑧⑨789中中 八ツモドラ北
オーラス西家5巡目。3着の南家と800点差の2着目。ラス目とは17200点差。
なお今回のルールはクラシックルールと言って30000点持ちスタートの飛び終了なしのアガり止めなしのゲームである。そこでトップ目は90000点を超えてる親だ。つまりこの局で確実に最終局。
なんとか中が叩けないかと願っていた所に引いた八。テンパイだ。アガれば2着で3回戦突破だが…。
打六!
なんとヤヨイは喉から手が出るほど欲しいはずの『リャンメンテンパイ』を拒否した! アガれば3回戦を突破するのにである。
(ここは『取らず』だ。リーチはかけちゃダメ! 瞬間3着落ちしちゃう。何やってもトップの諏訪さんはリーチ無視も自由だし、何よりラス目に倍満条件が出来ちゃう。ドラが北なら倍満は染めで作れる…! ここは中ポンか三色!)
マナミ手牌
一二三九九③⑨⑨123東東 ツモ①
オーラス南家
(鳴いてける役作ろうとしてたら随分とキレイになったわね。さて、どこを外す…。普通に考えていま下家が切った六のスジがいいか)
打九
「チー」
「はっ?!」マナミは思わず声が出てしまった。選んで落としたものをまさか食われるとは。
そして。
「ツモ」
ヤヨイ手牌
③④⑦⑧⑨789中中 ②ツモ(七八九)
(食い取られた…!)
「300.500」
(やったよ。ヤシロちゃん!)
見事な打ち回しで三色を仕上げた福島弥生が2着を死守! 財前真実は予選3回戦で敗退した。
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