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最新鋭機Mig-25。それは、自由への翼ではなく、機密の翼であった。
その軍事機密を西側諸国に漏らすわけにはいかない。

そのため、俺たちパイロットは国家保安委員会KGBからの監視を常に受け続けていた。
自由な外出など許されなかった。
外部の人間との接触も、すべて監視の対象であった。

最新鋭機のパイロットになった俺は、結局のところ、自由を手に入れることなどできなかったのだ。

家庭では毎日のように、妻と喧嘩だ。
もう何度も、離婚を迫られている。
こんな極東の地にはいたくないのだろう。
俺もそう思うようになった。

最前線の基地に張り切って赴任したものの、この待遇は何なんだ。
官舎では電気も水道もすぐ止まり、俺は何度も何度も修理した。
しかし、せっかく直しても妻は感謝するどころかバカにしてくるだけ。


基地の隊員も腐ってやがる。
どいつもこいつもアル中だ。
コックピットのガラスが凍結していたので、俺はアルコールスプレーをかけて融かそうとした。
すると、瞬時に凍ってしまった。
整備のやつら、スプレーの中の氷解用のアルコールを飲みやがったな……
それで、中身を水にすり替えやがったんだ。
氷解用アルコールだけではない。
MiG-25には機体の冷却のためのアルコールも大量に積まれている。
整備兵はそれも飲んでいる。
やつらは飲んだことをごまかすために、空いたタンクに水を入れやがる。
そんな機体を操縦する身になってみろ。
墜落して死ぬのは俺だ。



墜落して死ぬ……


!!

そうか、その手があったか……

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