約束の沖縄

神楽堂

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第5話 敵飛行場に強行着陸

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昭和20年5月24日。
宮里たちの出撃の日がきた。

12機の重爆撃機が熊本の健軍飛行場から飛び立つ。
すっかり日が暮れて、あたりは真っ暗である。
無線を使うと、敵に出撃が分かってしまうため、操縦士は計器を頼りに沖縄へと機体を向ける。

12機100名以上の大部隊であったが、途中で4機がエンジン不調のために引き返すことになった。
それでも、8機は沖縄本島に向けて飛行を続ける。

海面すれすれの低空飛行だ。
練習飛行では、鳥にぶつかったり、
波でプロペラが破損したこともあった。

操縦士たちは猛特訓を重ねており、海の上を敵に発見されることなく飛行することができた。

宮里たちが乗る4番機には、航空要員が2名。空挺隊員が8名乗っている。
皆、体中に武器や爆弾を身につけている。

沖縄本島が見えた。
ここで、読谷よみたん飛行場へ向かう4機と、嘉手納かでな飛行場に向かう4機とに分かれる。
宮里の乗る機は、読谷飛行場への強行着陸を行うことになっていた。
飛行場が近づいてきた。
さすがに、米軍に察知されたようだ。
対空砲を撃ってくる。
空を飛んでいる飛行機に大砲の弾を当てるのは至難の業だ。
なので、対空砲の砲弾は、空中で炸裂するようになっている。

宮里たちが乗る爆撃機の近くで、砲弾が炸裂した。
機体が吹き飛ばされ、大きく傾く。
が、衝撃だけで済んだようだ。
飛行には問題ない。
続けて、近くで何発も炸裂する音が聞こえる。

急に、1番機が爆発した。
高射砲の弾が直撃したようだ。
低空飛行は、レーダーに発見されづらいというメリットはあるが、
地上からの攻撃を受けやすいのが欠点だ。
機体にはたくさんの爆弾も積んである。
1番機は、搭載している爆弾が誘爆したのか、大爆発を起こして夜空に消えていった。

宮里の足下の床から、轟音が鳴る。
地上からの機関銃の弾が命中したようだ。
着陸するまで、機体はもつのだろうか。

2番機が炎に包まれた。
燃料タンクに被弾したようだ。
そのまま、隊列を離れていく。
暗い森林の中で大きな炎が上がったのが見えた。
あっという間に、2機が撃墜されてしまった。

「着陸はまだか!」

「もう少しです!」

そのとき、3番機が被弾した。
宮里は窓を見る。
3番機は速度が落ち、どんどん高度が下がっていく。
これまで一緒に訓練を重ねてきた仲間が乗っている。
ここで墜ちたら、あの訓練は何だったんだ!
宮里の目に涙があふれた。

3番機は炎を上げながら、敵の高射砲陣地に突入した。
途端に大爆発が起きる。

敵の陣地は跡形もなく吹っ飛んだ。
搭載していた爆弾と、敵の高射砲の爆弾とが誘爆し合って、飛行場は真昼のように明るくなった。

「降下、30秒前!」
早く降下しないと、4番機も撃墜されてしまう。
宮里たちは、装備を確認し、扉の前に待機した。

強い衝撃が機体を揺らした。
着陸成功!
「突撃、5秒前……3、2、1」
扉が開いた!
機体はまだ完全には停止していなかったが、空挺隊員たちは降下訓練で身につけた着地法を使い、ケガなく滑走路に転がり降りる。
まずは煙幕だ。
発煙筒を炊いて、大量の煙を発生させ、身を隠す。
宮里は、その間に機関銃を構えた。
機体周辺を制圧しなければならない。
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