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10. 決意 ~ぼくの羽はきれいですか?~
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カラスは、お気に入りの木の上から湖をながめていました。
自分の失敗にあとから気がついて、とほうにくれています。
《七色のしずく》は湖の底、つまり、水の中にあるのです。
女神さまに、水にふれたら魔法が消えてしまうと言われたことを、うっかり忘れていました。
「どうしよう……」
あの水にふれたら最後、また元のまっ黒なカラスにもどってしまうのです。そう思うと、大好きな景色がおそろしいもののように思えてきました。
それでなくとも、陸のいきものにとって水はとても危険です。王子さまを助けるために飛びこんだことがあるので、カラスにもそれはよく分かっていました。
王子さまが《七色のしずく》をさがしに行かれないのは、王さまや家来たちに止められているからでした。
王子さまはいずれこの国の王さまになるお方です。王子さまの身に何かあれば、それは国の一大事になります。そして王子さまもまた、だれにも危険をおかしてほしくはないと思っていました。
カラスも王子さまに止められましたが、王子さまのために何とかしたいと思いました。少しでも王子さまの力になりたかったのです。
カラスは大空に飛びたちました。
空の上から見れば、湖の底が見えるかもしれません。
しかし、太陽の光が反射して、湖の浅いところですら見えません。
それじゃあと、カラスは湖に住む魚たちが、水から顔を出すのを待ちました。そして顔を出した魚たちに、湖の底に《七色のしずく》が落ちていないかたずねました。
魚たちはみな首を横にふるので、カラスはがっかりしました。
そして、何の手がかりもないまま数日が過ぎました。
「王子さま、すこしは休んでください」
カラスが心配して言うと、王子さまは決まって笑顔を見せます。そして、必ずこう返しました。
「ありがとう。だが、早く仕事をかたづけて姫の病のことを調べたいのだ」
そういう王子さまの顔は見るからに青白く、つかれているのが分かりました。
このままでは、王子さまが倒れてしまうとカラスは思いました。
だから、その日の夜――カラスはあることを決意しました。
もう何日も王子さまといっしょに過ごしたふかふかのベッドの中で、カラスは王子さまにたずねました。
「王子さま、ぼくの羽はきれいですか?」
その時、窓からは明るい月の光がさしこんでいて、七色の羽をふんわり包んでいました。
王子さまは、カラスのあたまをなでると、やわらかくほほえみました。
「ああ、きれいだな」
王子さまのうかべた笑みは、羽から飛び散った水滴をきれいだと言ったお顔と、まったく同じでした。
自分の失敗にあとから気がついて、とほうにくれています。
《七色のしずく》は湖の底、つまり、水の中にあるのです。
女神さまに、水にふれたら魔法が消えてしまうと言われたことを、うっかり忘れていました。
「どうしよう……」
あの水にふれたら最後、また元のまっ黒なカラスにもどってしまうのです。そう思うと、大好きな景色がおそろしいもののように思えてきました。
それでなくとも、陸のいきものにとって水はとても危険です。王子さまを助けるために飛びこんだことがあるので、カラスにもそれはよく分かっていました。
王子さまが《七色のしずく》をさがしに行かれないのは、王さまや家来たちに止められているからでした。
王子さまはいずれこの国の王さまになるお方です。王子さまの身に何かあれば、それは国の一大事になります。そして王子さまもまた、だれにも危険をおかしてほしくはないと思っていました。
カラスも王子さまに止められましたが、王子さまのために何とかしたいと思いました。少しでも王子さまの力になりたかったのです。
カラスは大空に飛びたちました。
空の上から見れば、湖の底が見えるかもしれません。
しかし、太陽の光が反射して、湖の浅いところですら見えません。
それじゃあと、カラスは湖に住む魚たちが、水から顔を出すのを待ちました。そして顔を出した魚たちに、湖の底に《七色のしずく》が落ちていないかたずねました。
魚たちはみな首を横にふるので、カラスはがっかりしました。
そして、何の手がかりもないまま数日が過ぎました。
「王子さま、すこしは休んでください」
カラスが心配して言うと、王子さまは決まって笑顔を見せます。そして、必ずこう返しました。
「ありがとう。だが、早く仕事をかたづけて姫の病のことを調べたいのだ」
そういう王子さまの顔は見るからに青白く、つかれているのが分かりました。
このままでは、王子さまが倒れてしまうとカラスは思いました。
だから、その日の夜――カラスはあることを決意しました。
もう何日も王子さまといっしょに過ごしたふかふかのベッドの中で、カラスは王子さまにたずねました。
「王子さま、ぼくの羽はきれいですか?」
その時、窓からは明るい月の光がさしこんでいて、七色の羽をふんわり包んでいました。
王子さまは、カラスのあたまをなでると、やわらかくほほえみました。
「ああ、きれいだな」
王子さまのうかべた笑みは、羽から飛び散った水滴をきれいだと言ったお顔と、まったく同じでした。
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