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始めるために、終わりにしよう。それがどんなに辛くても……ぐすんっ
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『私は王位継承の儀を行ったんだ』
自分が気を失っていた間に状況が好転して良かったと思う前に、その後に続いた『その時、精霊王に会ったんだ』という言葉に、ノアはぎょっとした。
「殿下っ、大丈夫でしたか!?なんか嫌なこと言われませんでしたか!?殴られたり、蹴られたり、痛い思いはしませんでしたか!?」
精霊王は娘が泣いているのに無視をかます非情な男だ。憎い相手の子孫と会った日には、それはもう酷い目にあわすに違いない。
そう思って、ノアは心配のあまり怪我をしてないかアシェルの身体をペタペタと触る。
でも装飾が多い衣装では、触診したってわからない。さらに不安になるノアを見て、アシェルは拗ねた顔になった。
「世間話をしただけだよ」
「……そんなはず」
ーーあるわけない。
最後の言葉は声に出せなかった。アシェルの親指の腹で、唇を押さえられたから。
「ノアこそ、ここどうしたの?切れているじゃないか。何があったんだ」
「……」
怖い顔をして尋ねられたって、答えることなんてできない。
だって口を開いたらアシェルの指が口の中に入ってしまうかもしないから。
「これもだんまり?ならまた」
さっきみたいにギラリと眼光を鋭くしたアシェルから視線を外して、ノアは彼の手を自分の口から強制的に剥ぎ取った。そうしてから、ちゃんと質問に答えた。
「……自分でうっかり嚙んだだけです。殿下、精霊王と何のお話したんですか?誤魔化さずに言ってください」
アシェルの手を握ったまま問いかければ、その手の持ち主はにこやかに笑う。
「だから世間話をしただけだよ」
「……一生精霊姫の生まれ変わりに尽くすことが世間話なんですか?」
「ああ、それは私が望んでいることだから、話題にも出なかったよ」
「なっ」
「あと今頃、精霊王とニヒ殿は和解してると思うよ。だって世間話の主な内容は”人間界における娘に嫌われる父親ランキング”だったからね。あ、親子間で和解ってのも変か。うーん。仲直りって言った方が良いかな?それとも関係修復?ちょっと言い方が硬いか。っというか、そもそも喧嘩をしていたわけじゃないから、他の言い方にするべきかな?」
「……」
真剣に和解の別名に悩むアシェルに、ノアは「そうじゃない!そういうことじゃない!!」と叫びたい。
でも、わかってしまった。アシェルがわざと話題を逸らしたのは、これ以上語る気がないということを。
だからノアは彼が一番聞きたいことを喋ってくれないならこっちも自分勝手にさせてもらうことを選んだ。
「私は殿下に尽くされるのは嫌です。殿下には幸せになって欲しいんです。私なんかに縛られちゃ駄目です」
「どうして?」
「だ、だって王様になるんですよね?ならそれに相応しい人じゃないと」
「だからノアが良いんだ」
「いや、でも……っ……は?……はぁ!?」
なんだか愛の告白を受けている錯覚を覚えてノアは素っ頓狂な声を上げる。
無論、これが自分の勘違いだというのは存じ上げている。でも好きな人からそんなことを言われて顔を赤くしない女子なんてこの世にいない。
「目が赤いね。泣いたの?」
顔を赤くしたノアの頬にアシェルが手を置いた。痛ましそうに眉を下げるが、次に放たれた言葉は慰めのものじゃなかった。
「自惚れて良いなら、それは私と離れるのが辛かったから?口の端が切れているのは、何かを我慢するために嚙んだから?」
「……」
嫌な質問だ。
図星ばかりさしてくるアシェルにノアは誰が答えてやるもんかと意地を張って唇を噛もうとした。
でもできなかった。
なぜなら、アシェルがそれを阻止したから。あろうことか彼は己の唇をノアの唇に押し当てたのだ。
自分が気を失っていた間に状況が好転して良かったと思う前に、その後に続いた『その時、精霊王に会ったんだ』という言葉に、ノアはぎょっとした。
「殿下っ、大丈夫でしたか!?なんか嫌なこと言われませんでしたか!?殴られたり、蹴られたり、痛い思いはしませんでしたか!?」
精霊王は娘が泣いているのに無視をかます非情な男だ。憎い相手の子孫と会った日には、それはもう酷い目にあわすに違いない。
そう思って、ノアは心配のあまり怪我をしてないかアシェルの身体をペタペタと触る。
でも装飾が多い衣装では、触診したってわからない。さらに不安になるノアを見て、アシェルは拗ねた顔になった。
「世間話をしただけだよ」
「……そんなはず」
ーーあるわけない。
最後の言葉は声に出せなかった。アシェルの親指の腹で、唇を押さえられたから。
「ノアこそ、ここどうしたの?切れているじゃないか。何があったんだ」
「……」
怖い顔をして尋ねられたって、答えることなんてできない。
だって口を開いたらアシェルの指が口の中に入ってしまうかもしないから。
「これもだんまり?ならまた」
さっきみたいにギラリと眼光を鋭くしたアシェルから視線を外して、ノアは彼の手を自分の口から強制的に剥ぎ取った。そうしてから、ちゃんと質問に答えた。
「……自分でうっかり嚙んだだけです。殿下、精霊王と何のお話したんですか?誤魔化さずに言ってください」
アシェルの手を握ったまま問いかければ、その手の持ち主はにこやかに笑う。
「だから世間話をしただけだよ」
「……一生精霊姫の生まれ変わりに尽くすことが世間話なんですか?」
「ああ、それは私が望んでいることだから、話題にも出なかったよ」
「なっ」
「あと今頃、精霊王とニヒ殿は和解してると思うよ。だって世間話の主な内容は”人間界における娘に嫌われる父親ランキング”だったからね。あ、親子間で和解ってのも変か。うーん。仲直りって言った方が良いかな?それとも関係修復?ちょっと言い方が硬いか。っというか、そもそも喧嘩をしていたわけじゃないから、他の言い方にするべきかな?」
「……」
真剣に和解の別名に悩むアシェルに、ノアは「そうじゃない!そういうことじゃない!!」と叫びたい。
でも、わかってしまった。アシェルがわざと話題を逸らしたのは、これ以上語る気がないということを。
だからノアは彼が一番聞きたいことを喋ってくれないならこっちも自分勝手にさせてもらうことを選んだ。
「私は殿下に尽くされるのは嫌です。殿下には幸せになって欲しいんです。私なんかに縛られちゃ駄目です」
「どうして?」
「だ、だって王様になるんですよね?ならそれに相応しい人じゃないと」
「だからノアが良いんだ」
「いや、でも……っ……は?……はぁ!?」
なんだか愛の告白を受けている錯覚を覚えてノアは素っ頓狂な声を上げる。
無論、これが自分の勘違いだというのは存じ上げている。でも好きな人からそんなことを言われて顔を赤くしない女子なんてこの世にいない。
「目が赤いね。泣いたの?」
顔を赤くしたノアの頬にアシェルが手を置いた。痛ましそうに眉を下げるが、次に放たれた言葉は慰めのものじゃなかった。
「自惚れて良いなら、それは私と離れるのが辛かったから?口の端が切れているのは、何かを我慢するために嚙んだから?」
「……」
嫌な質問だ。
図星ばかりさしてくるアシェルにノアは誰が答えてやるもんかと意地を張って唇を噛もうとした。
でもできなかった。
なぜなら、アシェルがそれを阻止したから。あろうことか彼は己の唇をノアの唇に押し当てたのだ。
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