盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない

当麻月菜

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派手派手しいギャラリーたちのおかげで、着飾った自分が霞んでいます

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『悪しき魔物は、わたくしの手で仕留めてみせましょう』

 夜迷い事とも思えるその言葉に、目をひん剝いたのはノアだけだった。

 国王陛下は鷹揚に頷くだけだし、ロキは「ならさっさと行け」と顎でしゃくる始末。

 ローガンとクリスティーナは腰を抜かして震えているから論外。とにかくノアだけはアシェルの言葉に頷けなかった。

 だってアシェルは盲目だ。声と地響きで魔物がどこにいるか何となくはわかるかもしれないが、退治するとなれば話は違う。

「殿下、ダメですっ。危ないです!!」

 ノアは半泣きになってアシェルに手を伸ばす。

 肩が脱臼するほど伸ばした手はなんとか彼の上着の端っこを掴むことができたが、引き留めるにはあまりに心許ない。  

「ノア、大丈夫。心配しないでここで待ってなさい」
「やだっ」
「ノア」
「やだっ、やだっ。今日は私が殿下を守る日なんだもんっ。行っちゃ駄目です!危ないです!!」

 もう品のある微笑みも、睡眠時間を削って覚えた宮廷マナーもどうでもいい。

 後でグレイアス先生からお叱りをうけようとも、心待ちにしていたキノコ料理が食べられなくってもかまわない。

 嫌なのだ。アシェルが危険な場所に行くのが。怪我をしてしまうかもしれないのが、このまま帰って来てくれないかもしれないことが怖くてたまらないのだ。

 なのにアシェルは、ちっともそれに気づいてくれない。ただただ柔らかい笑みを浮かべて上着を掴んでいるノアの手に、己の手を重ねるだけ。

 違う。今はそんな優しい仕草なんて望んでいない。望むのはただ一つ。安全な場所に避難して欲しいだけ。

 なのにアシェルは、望まぬ言葉を紡ぐ。これまで目が見えぬとも、まるで見えているかのように気持ちを汲み取ってくれていたというのに。

「すぐに戻って来るよ、ノア。それにロキ殿がそばにいるんだから怖くなんかないだろう?」

 そんな言葉、子供だましも良いところだ。

「嫌です。じゃあ私も一緒に盾代わりとしてーー」
「駄目だよ」

 被せる感じで却下された。まぁ、薄々そう言われることはわかっていたけれど、断固、譲れない。

「何度も言ってますが、それが駄目なんです!ワガママは今日だけにしますから、どうか一緒に」
「何度も言うけれど、それが駄目なんだよ。これからどれだけワガママを言ってもいいから、今日だけは大人しくするんだ。ね?」

 魔物が暴れる中、こんな会話をする二人は傍から見れば場違いなほど甘い。だがしかし、ノアもアシェルも真剣だ。真剣に自分の意思を曲げる気は無い。

 ……なかったのだが、強制的に曲げられた。ノアの意思の方が。
 
「馬鹿なこと言ってんじゃないよ!キノコ採取しか能が無いあんたは、邪魔にしかならないんだから黙ってな!!」

 雷みたいなロキの一括に、ノアは酷い言い草だとつい睨んでしまう。

 しかし急を要する事態にロキは、言葉で説得するより物理的に黙らせる方を選んだ。

「ノア、歯ぁ食いしばりな」

 ーーごっちん!! 

 二度目に頭上に落下された拳骨は、最初のそれより威力は3倍だった。
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