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派手派手しいギャラリーたちのおかげで、着飾った自分が霞んでいます
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アシェルから手の甲に口付けを落とされるという不測の事態で、ノアの微笑みは崩れてしまった。
(ひょえぇっ……や、やばい!!)
焦ったノアは、反射的にグレイアス先生を見る。
夜会嫌いではアシェルと肩を並べるグレンシスだが、今日に限っては参加をしてくれた。
それは教え子である自分を補佐するため。だから有事の際にはいつでも助けに入るよう……いや、きっといらんことをした場合に強制的に待ったをかけられるようすぐ近くにいてくれる。
だから失態を犯した自分に、コラっと目線でお叱り出すかと思いきやーー彼は持ち場を離れていた。
キョロキョロと小さな彼を探すこと数秒。グレイアス先生は妹のフレシアの隣にいた。
ちなみにフレシアも、招待客に扮してグレイアスと同様にノアの補佐として会場の隅に控えている。
フレシアは美人だ。着飾った状態で、しかも一人ポツンと壁の花でいれば男性が放っておくことは無い。実際、現在フレシアの周りには下心丸出しの貴族青年達が輪を作っている。
ああ見えて妹を溺愛しているグレイアスが、それを見逃すはずはない。だから教え子をほったらかしにするのはある意味自然の摂理である。
当然ノアもフレシアを口説こうとする連中を追い払ってくれるグレンシスにエールを送る。身体が二つに分離できるなら、ノアも加勢したい所存である。
しかし魔力ゼロの自分にはそんな高度なことはできない。
そんなわけでノアは今自分にできることを精一杯しようと再び笑みを作る。
それが合図になったかのように、アシェルはノアの手の甲から唇を離して口を開いた。
「ですから……どうか兄上、あまりノアを虐めないでやってください。先日、ノアは兄上と会ってから、盲目の私でもわかるくらいずっと気落ちしております。これからノアは王族の一員として、兄上と長い付き合いをするのですから」
神妙な口調で言ったアシェルは、奇麗な所作でローガンに顔を下げた。
すぐさま辺りから悲鳴やら、ローガンを非難する声があがる。ノアはすかさず寂しそうな笑みを作った。これもグレイアス先生からの指示だ。
『殿下が意味不明なことを言ったら、とにかく寂しそうに笑え』
その指示自体がもう意味不明で、ノアは乾いた笑いを浮かべたのは記憶に新しい。秒速でグレイアス先生から「違うっ、そんな笑みじゃない」と教科書の角で頭をぐりぐりされたのは今でも鮮明だ。何がって?痛みが、だ。
などとノアが意識をよそに向けていれば、辺りはさらにざわざわと騒がしくなった。
(……まぁ、どこの馬の骨ともわからん私が殿下の婚約者ってことになってるから、そりゃあ驚くよね。あと敢えてわざわざこんな場で”虐めるな”って言われたローガンは面目丸つぶれだよねー)
実際、虐められていたかどうかは別として、ノアはずっと元気だった。ちょっとは気落ちすべきだったかな?と思うほど。
という事の真相を知っているノアだけは冷静に考えながら、とにかく笑みを絶やさないことだけを意識する。
そんな中でも、ざわめきはどんどん大きくなる。さすがにおかしいとノアも異変に気付いた。
その原因をこっそり探ろうとしたノアであったが、結果としてすぐにわかった。慣れ親しんだ声が耳朶を刺したから。
「はぁーん。ノア、あんた割の良い仕事が見つかったって言ってたけど、まさか殿下の奥様ーーいわゆる永久就職するとは、あたしゃ知らんかったわ」
背後から聞こえたそれは、お上品な会場にそぐわない下町言葉。加えて語尾がやたらと強い鬼ババアとしか思えない独得な口調。
これが誰かなど、振り返って確認しなくてもわかる。ノアの育った孤児院の院長ロキである。
思いもよらない人物の登場に、ノアは「ひょえぅぇっっ~」っと間抜けな悲鳴を上げてしまった。
(ひょえぇっ……や、やばい!!)
焦ったノアは、反射的にグレイアス先生を見る。
夜会嫌いではアシェルと肩を並べるグレンシスだが、今日に限っては参加をしてくれた。
それは教え子である自分を補佐するため。だから有事の際にはいつでも助けに入るよう……いや、きっといらんことをした場合に強制的に待ったをかけられるようすぐ近くにいてくれる。
だから失態を犯した自分に、コラっと目線でお叱り出すかと思いきやーー彼は持ち場を離れていた。
キョロキョロと小さな彼を探すこと数秒。グレイアス先生は妹のフレシアの隣にいた。
ちなみにフレシアも、招待客に扮してグレイアスと同様にノアの補佐として会場の隅に控えている。
フレシアは美人だ。着飾った状態で、しかも一人ポツンと壁の花でいれば男性が放っておくことは無い。実際、現在フレシアの周りには下心丸出しの貴族青年達が輪を作っている。
ああ見えて妹を溺愛しているグレイアスが、それを見逃すはずはない。だから教え子をほったらかしにするのはある意味自然の摂理である。
当然ノアもフレシアを口説こうとする連中を追い払ってくれるグレンシスにエールを送る。身体が二つに分離できるなら、ノアも加勢したい所存である。
しかし魔力ゼロの自分にはそんな高度なことはできない。
そんなわけでノアは今自分にできることを精一杯しようと再び笑みを作る。
それが合図になったかのように、アシェルはノアの手の甲から唇を離して口を開いた。
「ですから……どうか兄上、あまりノアを虐めないでやってください。先日、ノアは兄上と会ってから、盲目の私でもわかるくらいずっと気落ちしております。これからノアは王族の一員として、兄上と長い付き合いをするのですから」
神妙な口調で言ったアシェルは、奇麗な所作でローガンに顔を下げた。
すぐさま辺りから悲鳴やら、ローガンを非難する声があがる。ノアはすかさず寂しそうな笑みを作った。これもグレイアス先生からの指示だ。
『殿下が意味不明なことを言ったら、とにかく寂しそうに笑え』
その指示自体がもう意味不明で、ノアは乾いた笑いを浮かべたのは記憶に新しい。秒速でグレイアス先生から「違うっ、そんな笑みじゃない」と教科書の角で頭をぐりぐりされたのは今でも鮮明だ。何がって?痛みが、だ。
などとノアが意識をよそに向けていれば、辺りはさらにざわざわと騒がしくなった。
(……まぁ、どこの馬の骨ともわからん私が殿下の婚約者ってことになってるから、そりゃあ驚くよね。あと敢えてわざわざこんな場で”虐めるな”って言われたローガンは面目丸つぶれだよねー)
実際、虐められていたかどうかは別として、ノアはずっと元気だった。ちょっとは気落ちすべきだったかな?と思うほど。
という事の真相を知っているノアだけは冷静に考えながら、とにかく笑みを絶やさないことだけを意識する。
そんな中でも、ざわめきはどんどん大きくなる。さすがにおかしいとノアも異変に気付いた。
その原因をこっそり探ろうとしたノアであったが、結果としてすぐにわかった。慣れ親しんだ声が耳朶を刺したから。
「はぁーん。ノア、あんた割の良い仕事が見つかったって言ってたけど、まさか殿下の奥様ーーいわゆる永久就職するとは、あたしゃ知らんかったわ」
背後から聞こえたそれは、お上品な会場にそぐわない下町言葉。加えて語尾がやたらと強い鬼ババアとしか思えない独得な口調。
これが誰かなど、振り返って確認しなくてもわかる。ノアの育った孤児院の院長ロキである。
思いもよらない人物の登場に、ノアは「ひょえぅぇっっ~」っと間抜けな悲鳴を上げてしまった。
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