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おかしい。お愛想で可愛いと言われてただけなのにドキッとするなんて
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「ノアが……そこまで頑張りたい理由を教えてもらえるかい?」
アシェルはノアの足の裏から手を離さず言った。
「それは……その……」
ノアは至極簡単な質問のはずなのに、言葉を濁す。なぜかお仕事の為だと即答できないのだ。
しかしアシェルの無言の圧は、本日も半端ない。どうしてそこまで聞きたいの?と逆に問いただしたくなるくらいだ。
だが足の裏の手当てをしてもらった今、質問を質問で返すなんていう失礼なことはノアの立場からしてできなかった。
「えっと……頑張った先に、楽しみが待っているからです」
ノアはむぎゅっと渋面を作りながら答えた。
ぶっちゃけ答えたあとに「ああ、そっか」と自分自身が納得するものだった。
そしてアシェルもその答えは、満足いくものだったようだ。
「そっか。なら、無理はするなと言えても、やめろとは言えないな」
ふんわりと笑いながらそう言ったアシェルは、どことなく不本意そうであった。形の良い眉も、ちょっと下がっている。
でもノアは、ここは都合よくニュアンスよりも吐いた言葉だけを重視することにした。
「はい、私、今回は駄目って言われても、やめろって言われてもやり続けますから。あ、でも……ワガママを許されるなら、一つだけお願いが。私、殿下に”頑張れ”って言って欲しいです」
へへっと笑ったノアは、2拍遅れて自分がとんでもないことを要求してしまったことに気付いた。
(しまったっ! しっかりがっつりお給金をいただいている身なのに、これ以上何を望んでいるんだっ、私)
まったくもって図々しい発言に、きっとアシェルは呆れかえっているだろうと思った。
けれど、予想に反してアシェルの唇は弧を描いていた。ただ、それはなぜかノアの目の前にあった。
「で、殿下!?」
秒速でアシェルが顔を近づけた意味がわからないノアは、目を白黒させた。
そんなアタフタするノアの耳元にアシェルは口を寄せる。
「頑張れ、ノア」
「ひゃいっ」
囁くように紡がれた言葉は、何故か檄を飛ばすというよりも手の甲で撫でられるような温もりがあった。
「……足りない? もっと言おうか?」
「足りますた!充分、満たしゃれました!!」
噛みっ噛みで即答したノアに、アシェルは低く笑う。
その度に耳に盲目王子の息がかかるから、ノアはくすぐったくて仕方が無い。しかも、時折彼の唇が耳たぶに触れるのだ。
そりゃあアシェルは盲目だ。だから距離間が掴めないのは、わかる。……わかるのだけれど、される側としたら、平常心を保つのは無理な話で。
しかしそこから逃げようとしても、アシェルはノアに覆いかぶさるように背もたれに両手を付いているから、彼の腕が邪魔して身動きすらできないのだ。
無論、この不埒な男を押しのけるなんていう発想はノアには無い。
だって、アシェルは自分の雇用主であり、この国の王子であり、妙に庇護欲をそそる人であり、己を必要としてくれる相手なのだ。
そんな彼に対して無下な態度を取るなんてできないノアは、雨の中震える仔猫のように身を縮こませることしかできなかった。
アシェルはノアの足の裏から手を離さず言った。
「それは……その……」
ノアは至極簡単な質問のはずなのに、言葉を濁す。なぜかお仕事の為だと即答できないのだ。
しかしアシェルの無言の圧は、本日も半端ない。どうしてそこまで聞きたいの?と逆に問いただしたくなるくらいだ。
だが足の裏の手当てをしてもらった今、質問を質問で返すなんていう失礼なことはノアの立場からしてできなかった。
「えっと……頑張った先に、楽しみが待っているからです」
ノアはむぎゅっと渋面を作りながら答えた。
ぶっちゃけ答えたあとに「ああ、そっか」と自分自身が納得するものだった。
そしてアシェルもその答えは、満足いくものだったようだ。
「そっか。なら、無理はするなと言えても、やめろとは言えないな」
ふんわりと笑いながらそう言ったアシェルは、どことなく不本意そうであった。形の良い眉も、ちょっと下がっている。
でもノアは、ここは都合よくニュアンスよりも吐いた言葉だけを重視することにした。
「はい、私、今回は駄目って言われても、やめろって言われてもやり続けますから。あ、でも……ワガママを許されるなら、一つだけお願いが。私、殿下に”頑張れ”って言って欲しいです」
へへっと笑ったノアは、2拍遅れて自分がとんでもないことを要求してしまったことに気付いた。
(しまったっ! しっかりがっつりお給金をいただいている身なのに、これ以上何を望んでいるんだっ、私)
まったくもって図々しい発言に、きっとアシェルは呆れかえっているだろうと思った。
けれど、予想に反してアシェルの唇は弧を描いていた。ただ、それはなぜかノアの目の前にあった。
「で、殿下!?」
秒速でアシェルが顔を近づけた意味がわからないノアは、目を白黒させた。
そんなアタフタするノアの耳元にアシェルは口を寄せる。
「頑張れ、ノア」
「ひゃいっ」
囁くように紡がれた言葉は、何故か檄を飛ばすというよりも手の甲で撫でられるような温もりがあった。
「……足りない? もっと言おうか?」
「足りますた!充分、満たしゃれました!!」
噛みっ噛みで即答したノアに、アシェルは低く笑う。
その度に耳に盲目王子の息がかかるから、ノアはくすぐったくて仕方が無い。しかも、時折彼の唇が耳たぶに触れるのだ。
そりゃあアシェルは盲目だ。だから距離間が掴めないのは、わかる。……わかるのだけれど、される側としたら、平常心を保つのは無理な話で。
しかしそこから逃げようとしても、アシェルはノアに覆いかぶさるように背もたれに両手を付いているから、彼の腕が邪魔して身動きすらできないのだ。
無論、この不埒な男を押しのけるなんていう発想はノアには無い。
だって、アシェルは自分の雇用主であり、この国の王子であり、妙に庇護欲をそそる人であり、己を必要としてくれる相手なのだ。
そんな彼に対して無下な態度を取るなんてできないノアは、雨の中震える仔猫のように身を縮こませることしかできなかった。
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