9 / 105
庇護欲をそそるという言葉は、何も女子供に向けてのものだけじゃない
2
しおりを挟む
アシェルは盲目で王位継承権は剝奪されたが、れっきとした王族だ。見栄えだけなら、ローガンより遥かに王族だ。
そして、王族と結婚したいと思う女性はごまんといるし、何が何でも自分の娘を王族に嫁がせたいと思う親はもっといる。
ご存知の通り彼はイケメンでありながら、目が見えない。
本来なら盲目というのは結婚においてハンデとなる可能性が高いのだが、女性側からすると大チャンスになる。
彼の目が見えないことを良いことに、容姿が二流三流だってイケるんじゃないかと思う貴族令嬢が殺到して、見合い話は後を経たないのだ。
しかもそれは、一過性のものではなく年を取るごとに件数が増えている。
毎日毎日、官僚から見合いをせっつかれ娘から預かった恋文をポケットにねじ込まれ、めったに参加しない夜会に出れば令嬢達にもみくちゃにされる日々。
目が見えない相手に文をしたためる女性の神経がわからないが、愛の力で何とかなると思っているらしい。
まぁそれは置いておいて、とにかくこんな生活が続いた寛容王子は我慢の限界を迎えてしまったのだ。
聞いたところによると、アシェルは結婚する気はないらしい。
後継者問題で揉めるのは世の常であるから。自分の種がのちに、内乱を招くかもしれないことを知っているし、彼はそれを一番恐れている。
だからアシェルは、ノアにこう持ちかけた。
「一先ず、私と婚約しませんか?仕事として」と。
契約内容は一ヶ月更新の日給制。残業ナシ。賄い付きの、昼寝付き。もちろん婚約者として傍にいなければならないが婚前交渉という名の不埒な要求は一切ナシ。
貧乏孤児院を支えるべく、そろそろ自立して大きな町で出稼ぎに行きたいと思っていた矢先の提案であり、ノアはその有難すぎる申し出に二つ返事で頷いた。
ただ、これは一部の人間しか知らないこと。
王様だって知らない。バレたら虚偽罪あーんど不敬罪で間違いなく絞首台に直行だ。
もちろんそのことをちゃんと理解して提案してくれたアシェルは、「絶対に大丈夫。もし仮にバレたり、疑われたら私が全部責任を取るから」と言ってくれた。
だが、自分だって罪だとわかっていて乗っかったのだから責任は折半が正しい。とはいえ、死にたくはない。
だからノアは必死に婚約者を演じる。
まだ見ぬキノコを食す為に。そして、お世話になった貧乏孤児院に恩返しをするために。
そんなこんなで、ノアはアシェルの為に得体の知れない焼き菓子───正式名称ファーブルトンを取り分ける。
でも、アシェルの前に置く前に、ノアは一口失敬する。
別に食い意地が張っているわけではない。自発的に毒見をしているだけだ。
好きでここに来たわけではないが、多すぎるほどの給金はいただいているので、それなりの働きはするつもりだ。
身の丈に合わない贅沢は身を亡ぼす。
孤児院長のロキの教えを忠実に守る真面目で働き者─── それがノアなのである。
ま、嫌になったらすぐにおさらばできるという気軽さからそうできているのもあるが、それくらいはご愛嬌ということで。
そして、王族と結婚したいと思う女性はごまんといるし、何が何でも自分の娘を王族に嫁がせたいと思う親はもっといる。
ご存知の通り彼はイケメンでありながら、目が見えない。
本来なら盲目というのは結婚においてハンデとなる可能性が高いのだが、女性側からすると大チャンスになる。
彼の目が見えないことを良いことに、容姿が二流三流だってイケるんじゃないかと思う貴族令嬢が殺到して、見合い話は後を経たないのだ。
しかもそれは、一過性のものではなく年を取るごとに件数が増えている。
毎日毎日、官僚から見合いをせっつかれ娘から預かった恋文をポケットにねじ込まれ、めったに参加しない夜会に出れば令嬢達にもみくちゃにされる日々。
目が見えない相手に文をしたためる女性の神経がわからないが、愛の力で何とかなると思っているらしい。
まぁそれは置いておいて、とにかくこんな生活が続いた寛容王子は我慢の限界を迎えてしまったのだ。
聞いたところによると、アシェルは結婚する気はないらしい。
後継者問題で揉めるのは世の常であるから。自分の種がのちに、内乱を招くかもしれないことを知っているし、彼はそれを一番恐れている。
だからアシェルは、ノアにこう持ちかけた。
「一先ず、私と婚約しませんか?仕事として」と。
契約内容は一ヶ月更新の日給制。残業ナシ。賄い付きの、昼寝付き。もちろん婚約者として傍にいなければならないが婚前交渉という名の不埒な要求は一切ナシ。
貧乏孤児院を支えるべく、そろそろ自立して大きな町で出稼ぎに行きたいと思っていた矢先の提案であり、ノアはその有難すぎる申し出に二つ返事で頷いた。
ただ、これは一部の人間しか知らないこと。
王様だって知らない。バレたら虚偽罪あーんど不敬罪で間違いなく絞首台に直行だ。
もちろんそのことをちゃんと理解して提案してくれたアシェルは、「絶対に大丈夫。もし仮にバレたり、疑われたら私が全部責任を取るから」と言ってくれた。
だが、自分だって罪だとわかっていて乗っかったのだから責任は折半が正しい。とはいえ、死にたくはない。
だからノアは必死に婚約者を演じる。
まだ見ぬキノコを食す為に。そして、お世話になった貧乏孤児院に恩返しをするために。
そんなこんなで、ノアはアシェルの為に得体の知れない焼き菓子───正式名称ファーブルトンを取り分ける。
でも、アシェルの前に置く前に、ノアは一口失敬する。
別に食い意地が張っているわけではない。自発的に毒見をしているだけだ。
好きでここに来たわけではないが、多すぎるほどの給金はいただいているので、それなりの働きはするつもりだ。
身の丈に合わない贅沢は身を亡ぼす。
孤児院長のロキの教えを忠実に守る真面目で働き者─── それがノアなのである。
ま、嫌になったらすぐにおさらばできるという気軽さからそうできているのもあるが、それくらいはご愛嬌ということで。
42
あなたにおすすめの小説
妹なんだから助けて? お断りします
たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です
流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。
父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。
無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。
純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる