20 / 24
どんな精神状態でも美味しいと感じる食べ物は本当の好物だと言い切れる(検証済み)
4
しおりを挟む
ウェルドの冷たい視線を受けたティスタは、今のギャグは自分の全力じゃないこと。そしてそんなクソつまらないギャグを言うほどウェルドの発言が信じられなかったこと。
それらを、しっかりウェルドに言葉にして伝える。
特に辛口評価を得たギャグについては、強めに訴える。
そして一通り説明が終わり、念のためもう一度ウェルドに本気でヴァネッサにアランを紹介する気なのかを確認し終えれば─── ティスタは望まぬ答えを貰ってしまったため顔を覆って俯いた。
ちなみにティスタは、念には念を入れて12回もウェルドに確認を取ったが、彼はすべて「相手はアランだ」と言い切った。
「……もうこの国終わったわ」
「いや、勝手に終わらせんな。大丈夫だから」
さらりと答えるウェルドに、ティスタは顔じゃなく頭まで抱えたくなる。
(ああ……何を根拠にそんなことを言うのだろう、この人は)
ヴァネッサが侯爵夫人になるということは、狂戦士バーサーカーに伝説の妖刀を、外道に落ちた魔導士に無尽蔵に使える魔力を、生真面目さしか取り柄がない国王に傾国の美女を宛がうようなものだ。
しかもヴァネッサは年々、陰湿さと暴虐さが増している。
これまで伯爵令嬢というそこまで権力を持ち合わせていない時ですら、大勢の人間を不幸にしてきているのだ。
更に権力と財力を与えてしまったら、夫となるアランがどんなに腕っぷしが良く、頭がキレる男であっても、彼女の暴動を止めることはできないだろう。
「やっぱり終わりだわ、この国。国王陛下さまごめんなさい。そして国民の皆々さまごめんなさい。でも、私ウェルドと結婚はしたい」
「だから、終らないって……あと、最後のやつもっかい言って。ヤバイくらい嬉しいな」
前半はノリ突っ込みの軽さで、後半は照れながらそう言った後、ウェルドはそっとティスタを己の胸に引き寄せる。
ただこれは、絶望の淵にいる婚約者を慰めるわけではない。嬉しさのあまり、ちょっと婚約者に甘いイタズラを仕掛けるつもりでもない。
これから話すことは超機密事項のため、まかり間違っても他人の耳に入れてはいけない内容だから、密着しただけ。
「あのさ、実はこれまで黙っていたけれどアランはね───」
ごにょ、ごにょ、ごにょ、ごにょ。
ウェルドはティスタの唇に耳を寄せると、今後の作戦を詳細に語った。もちろんその中には、侯爵家を揺るがす極秘事項も含まれている。
そうしてウェルドの言葉が耳に落とされるごとに、ティスタは信じられないと言った感じで空色の瞳が大きく開いていった。
それらを、しっかりウェルドに言葉にして伝える。
特に辛口評価を得たギャグについては、強めに訴える。
そして一通り説明が終わり、念のためもう一度ウェルドに本気でヴァネッサにアランを紹介する気なのかを確認し終えれば─── ティスタは望まぬ答えを貰ってしまったため顔を覆って俯いた。
ちなみにティスタは、念には念を入れて12回もウェルドに確認を取ったが、彼はすべて「相手はアランだ」と言い切った。
「……もうこの国終わったわ」
「いや、勝手に終わらせんな。大丈夫だから」
さらりと答えるウェルドに、ティスタは顔じゃなく頭まで抱えたくなる。
(ああ……何を根拠にそんなことを言うのだろう、この人は)
ヴァネッサが侯爵夫人になるということは、狂戦士バーサーカーに伝説の妖刀を、外道に落ちた魔導士に無尽蔵に使える魔力を、生真面目さしか取り柄がない国王に傾国の美女を宛がうようなものだ。
しかもヴァネッサは年々、陰湿さと暴虐さが増している。
これまで伯爵令嬢というそこまで権力を持ち合わせていない時ですら、大勢の人間を不幸にしてきているのだ。
更に権力と財力を与えてしまったら、夫となるアランがどんなに腕っぷしが良く、頭がキレる男であっても、彼女の暴動を止めることはできないだろう。
「やっぱり終わりだわ、この国。国王陛下さまごめんなさい。そして国民の皆々さまごめんなさい。でも、私ウェルドと結婚はしたい」
「だから、終らないって……あと、最後のやつもっかい言って。ヤバイくらい嬉しいな」
前半はノリ突っ込みの軽さで、後半は照れながらそう言った後、ウェルドはそっとティスタを己の胸に引き寄せる。
ただこれは、絶望の淵にいる婚約者を慰めるわけではない。嬉しさのあまり、ちょっと婚約者に甘いイタズラを仕掛けるつもりでもない。
これから話すことは超機密事項のため、まかり間違っても他人の耳に入れてはいけない内容だから、密着しただけ。
「あのさ、実はこれまで黙っていたけれどアランはね───」
ごにょ、ごにょ、ごにょ、ごにょ。
ウェルドはティスタの唇に耳を寄せると、今後の作戦を詳細に語った。もちろんその中には、侯爵家を揺るがす極秘事項も含まれている。
そうしてウェルドの言葉が耳に落とされるごとに、ティスタは信じられないと言った感じで空色の瞳が大きく開いていった。
0
お気に入りに追加
999
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。

冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。

【完】瓶底メガネの聖女様
らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。
傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。
実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。
そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる