19 / 24
どんな精神状態でも美味しいと感じる食べ物は本当の好物だと言い切れる(検証済み)
3
しおりを挟む
リスラッドがヴァネッサを妻にする─── その利点は一つしか無い。
「……ウェルド、ずばり聞くけど」
「ん?どうした?」
じっとティスタが口を開くのを待っていたウェルドは、優しく続きを促した。
「リスラッドは、お姉様を人体実験として使いたいのかな?」
「……っ」
「新薬って実用化するのに動物実験が必要なんでしょ? お姉様は人としての心は持ち合わせていないけれど、一応人間だし。ワイン飲んだら顔赤くなるし……」
「はぁ?」
全く理解できないといった顔をされ、ティスタも同じように「はぁ?」と首を傾げてしまう。
そうすればウェルドは、堪えきれないといった感じで吹き出した。
「長々と考えているなって思っていたけど、まさかそんな突拍子も無いことを言いだすとはな、驚きだ」
「そうかなぁ。お姉様の利用価値を考えたら、それしか無くって……。ただ、もしお姉様の命を糧にして新薬を作っても、絶対にヴァネッサの【ヴ】の字も入れない方が良いと思う。誰も使いたがらないと思うし。新薬を開発するまで結構研究費使うそうだから、それがおじゃんになるのは辛いよ」
「まぁ、そうだな。っていうか、吹っ切れた途端になかなかのことを言うんだな、ティスタは」
そう言った後、ウェルドは声を上げて笑った。つられてティスタも笑ってみる。
だが内心では、リスラッドがヴァネッサを気に入る理由がわからなくて、それが気になって仕方が無かった。
はははと笑いながらも、ティスタはソワソワと落ち着かない。
無論、隣にいるウェルドなら、その様子にすぐに気付く。そしてティスタを世界で一番愛している彼は、彼女の思考を読むのは造作も無いこと。
「ティスタは、リスラッドがヴァネッサ嬢の結婚相手になると思っているようだけど……んでもって、その理由を聞きたいみたいだけれど、まず先に言っておく。相手はリスラッドじゃない」
「……え゛、違うの?」
「ああ。彼女の相手はアランだ」
「……あらん、いやぁん。ウェルド様ったら、そんなご冗談を」
「冗談じゃない。本気だ」
ティスタの言葉を遮って、ウェルドは真顔で言った。
ただ彼の灰色の瞳をよく見れば「そのギャクつまらない」と語っている。それ婚約者に向ける目?と聞きたくなるくらい冴え冴えとしている。
言っておくがティスタだって、好きでこんな寒いギャグを口にしたわけでは無い。
思わずクソつまらないことを言ってしまうほど、ウェルドの言葉が信じられなかったのだ。
そう。赤っ恥をかいたのも、婚約者から冷たい視線を向けられたのも、全部ヴァネッサのせいなのだ。
「……ウェルド、ずばり聞くけど」
「ん?どうした?」
じっとティスタが口を開くのを待っていたウェルドは、優しく続きを促した。
「リスラッドは、お姉様を人体実験として使いたいのかな?」
「……っ」
「新薬って実用化するのに動物実験が必要なんでしょ? お姉様は人としての心は持ち合わせていないけれど、一応人間だし。ワイン飲んだら顔赤くなるし……」
「はぁ?」
全く理解できないといった顔をされ、ティスタも同じように「はぁ?」と首を傾げてしまう。
そうすればウェルドは、堪えきれないといった感じで吹き出した。
「長々と考えているなって思っていたけど、まさかそんな突拍子も無いことを言いだすとはな、驚きだ」
「そうかなぁ。お姉様の利用価値を考えたら、それしか無くって……。ただ、もしお姉様の命を糧にして新薬を作っても、絶対にヴァネッサの【ヴ】の字も入れない方が良いと思う。誰も使いたがらないと思うし。新薬を開発するまで結構研究費使うそうだから、それがおじゃんになるのは辛いよ」
「まぁ、そうだな。っていうか、吹っ切れた途端になかなかのことを言うんだな、ティスタは」
そう言った後、ウェルドは声を上げて笑った。つられてティスタも笑ってみる。
だが内心では、リスラッドがヴァネッサを気に入る理由がわからなくて、それが気になって仕方が無かった。
はははと笑いながらも、ティスタはソワソワと落ち着かない。
無論、隣にいるウェルドなら、その様子にすぐに気付く。そしてティスタを世界で一番愛している彼は、彼女の思考を読むのは造作も無いこと。
「ティスタは、リスラッドがヴァネッサ嬢の結婚相手になると思っているようだけど……んでもって、その理由を聞きたいみたいだけれど、まず先に言っておく。相手はリスラッドじゃない」
「……え゛、違うの?」
「ああ。彼女の相手はアランだ」
「……あらん、いやぁん。ウェルド様ったら、そんなご冗談を」
「冗談じゃない。本気だ」
ティスタの言葉を遮って、ウェルドは真顔で言った。
ただ彼の灰色の瞳をよく見れば「そのギャクつまらない」と語っている。それ婚約者に向ける目?と聞きたくなるくらい冴え冴えとしている。
言っておくがティスタだって、好きでこんな寒いギャグを口にしたわけでは無い。
思わずクソつまらないことを言ってしまうほど、ウェルドの言葉が信じられなかったのだ。
そう。赤っ恥をかいたのも、婚約者から冷たい視線を向けられたのも、全部ヴァネッサのせいなのだ。
0
お気に入りに追加
999
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。

【完】瓶底メガネの聖女様
らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。
傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。
実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。
そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる