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監視塔に隠された秘密
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「この塔を使えば一瞬で行けるってどういう事? お母さん?」
「この塔はね、対になった塔がアウストブルク側にも建っていて、転移装置になっているの」
そういえば、アウストブルク側にも確かにあった! 監視塔!
「むかーし昔、フェイヤームが滅びて民達がバラバラになった時にね。ここに残った民はアウストブルクへ渡った民の事を、アウストブルクに渡った民はここに残った民の事を、お互いに心配してこの塔を建てたの。同胞たちが元気にしているか、お互い毎日塔を登って確認する健気な民を見て、精霊王が転移の術を施したのよ。いざという時、お互いの所へ逃げられる様に」
まるで見て来た事の様に語るお母さんは、何だか私の知っているお母さんじゃないみたいで少し不思議だった。
「じゃあ、元々は国境を監視する為の物じゃなかったんだね」
「ええ、長い年月の間に形が変わってしまったのでしょうね。フェイラー伯爵家や精霊教と、私たち精霊姫の末裔との関係が変わってしまったみたいに。人間って不思議よね」
うっすら光る手を崩れていない方の壁に沿わせ、お母さんが祈りの様な、呪文の様な言葉を発しながらゆっくりと手を動かしていく。
まるで歌っている様にも聞こえるその声に思わず聞き惚れていると、精霊達も嬉しそうにクルクル周り始めた。
ああ、懐かしい。
そういえば刺繍をしたり、クッキーを焼いたりする時も、お母さんはいつもこんな感じで歌の様な物を歌っていた気がする。
「さぁ、準備は出来たわ。転移するのはここのフロアにいるみんなでいいのかしら? 精霊たちや、小さな魔狼ちゃんも付いて来るの?」
『『『もっちろん!!』』』
『わっふぅ!』
ん? 魔狼??
お母さんの言葉に驚いて周りを見渡すと、丁度小さい子犬サイズのもふもふが、旦那様に抱かれる様に飛びつく所だった。
ええっ! ちょ、何それ、可愛いぃぃー!!
私が思わず旦那様と白いもふもふに吸い寄せられる様に手を伸ばした所で、周りが目を開けていられない程の眩しい光に包まれる。
「それじゃあ、みんなで行くわよー!
いち、にの、さーん、で……
はい! 到着ー!」
『ええっ、もう!?』と思いながらお母さんの声を聞いて目を開けると、そこはさっきまでいたのと良く似た塔の中だった。
でも、壁は崩れていない。
……ほんとに、転移したんだ……。
「これは……凄いな。もうアウストブルクへ入ったのか?」
白いもふもふを抱っこした旦那様がそう呟く。
お父さんもお母さんもケロッとしているし、精霊達は大はしゃぎしているので、驚いているのは私と旦那様、そしてクリスティーナだけの様だ。
私たちは自分がどこにいるのか確かめようと窓に駆け寄って外を見たけど、……うん、森しか見えない。
ただ、少し離れた所に壁の崩れた塔がある。
やはりここは、アウストブルク側にあった監視塔の様だ。
「さぁアナ、今度はどうするの?」
お母さんがにこにこと聞いてくる。
「森での目的はもう果たしたの。森の入り口付近にアウストブルクのカーミラ王女殿下がいるはずたから、合流しましょう!」
私はそう言ってみんなを振り返った。
アウストブルクまで来れば追っ手もそう簡単には追ってこれない。
無事旦那様も取り戻したし、後は森の外へ出ればいいだけだ。
ついでに、途中で縛って吊るしてきた騎士が無事かも確認しておこう。
別に心配しているとかではなく、彼は貴重な情報源だからね!
旦那様の事を無事に取り返した今、次は犯人達に地獄を見せる番なのだ。もちろん合法的に。
その為にも情報というものは、あればある程いい。
カーミラ王女殿下も手伝ってくれると言っていたし、背後関係までしっかり調べて黒幕も引っ張り出さないとね……。
もう二度とうちの旦那様に手を出す様な輩が現れない様に、キッチリ罰を受けて頂きましょう!
「この塔はね、対になった塔がアウストブルク側にも建っていて、転移装置になっているの」
そういえば、アウストブルク側にも確かにあった! 監視塔!
「むかーし昔、フェイヤームが滅びて民達がバラバラになった時にね。ここに残った民はアウストブルクへ渡った民の事を、アウストブルクに渡った民はここに残った民の事を、お互いに心配してこの塔を建てたの。同胞たちが元気にしているか、お互い毎日塔を登って確認する健気な民を見て、精霊王が転移の術を施したのよ。いざという時、お互いの所へ逃げられる様に」
まるで見て来た事の様に語るお母さんは、何だか私の知っているお母さんじゃないみたいで少し不思議だった。
「じゃあ、元々は国境を監視する為の物じゃなかったんだね」
「ええ、長い年月の間に形が変わってしまったのでしょうね。フェイラー伯爵家や精霊教と、私たち精霊姫の末裔との関係が変わってしまったみたいに。人間って不思議よね」
うっすら光る手を崩れていない方の壁に沿わせ、お母さんが祈りの様な、呪文の様な言葉を発しながらゆっくりと手を動かしていく。
まるで歌っている様にも聞こえるその声に思わず聞き惚れていると、精霊達も嬉しそうにクルクル周り始めた。
ああ、懐かしい。
そういえば刺繍をしたり、クッキーを焼いたりする時も、お母さんはいつもこんな感じで歌の様な物を歌っていた気がする。
「さぁ、準備は出来たわ。転移するのはここのフロアにいるみんなでいいのかしら? 精霊たちや、小さな魔狼ちゃんも付いて来るの?」
『『『もっちろん!!』』』
『わっふぅ!』
ん? 魔狼??
お母さんの言葉に驚いて周りを見渡すと、丁度小さい子犬サイズのもふもふが、旦那様に抱かれる様に飛びつく所だった。
ええっ! ちょ、何それ、可愛いぃぃー!!
私が思わず旦那様と白いもふもふに吸い寄せられる様に手を伸ばした所で、周りが目を開けていられない程の眩しい光に包まれる。
「それじゃあ、みんなで行くわよー!
いち、にの、さーん、で……
はい! 到着ー!」
『ええっ、もう!?』と思いながらお母さんの声を聞いて目を開けると、そこはさっきまでいたのと良く似た塔の中だった。
でも、壁は崩れていない。
……ほんとに、転移したんだ……。
「これは……凄いな。もうアウストブルクへ入ったのか?」
白いもふもふを抱っこした旦那様がそう呟く。
お父さんもお母さんもケロッとしているし、精霊達は大はしゃぎしているので、驚いているのは私と旦那様、そしてクリスティーナだけの様だ。
私たちは自分がどこにいるのか確かめようと窓に駆け寄って外を見たけど、……うん、森しか見えない。
ただ、少し離れた所に壁の崩れた塔がある。
やはりここは、アウストブルク側にあった監視塔の様だ。
「さぁアナ、今度はどうするの?」
お母さんがにこにこと聞いてくる。
「森での目的はもう果たしたの。森の入り口付近にアウストブルクのカーミラ王女殿下がいるはずたから、合流しましょう!」
私はそう言ってみんなを振り返った。
アウストブルクまで来れば追っ手もそう簡単には追ってこれない。
無事旦那様も取り戻したし、後は森の外へ出ればいいだけだ。
ついでに、途中で縛って吊るしてきた騎士が無事かも確認しておこう。
別に心配しているとかではなく、彼は貴重な情報源だからね!
旦那様の事を無事に取り返した今、次は犯人達に地獄を見せる番なのだ。もちろん合法的に。
その為にも情報というものは、あればある程いい。
カーミラ王女殿下も手伝ってくれると言っていたし、背後関係までしっかり調べて黒幕も引っ張り出さないとね……。
もう二度とうちの旦那様に手を出す様な輩が現れない様に、キッチリ罰を受けて頂きましょう!
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