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精霊使い認定
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アウストブルクに滞在する間、私は恐れ多くも王城の貴賓室で寝泊まりさせて頂いている。
アレクサンダーお義兄様の義妹として順当な扱いなのかもしれないが、平民として暮らしていた数年前には、まさか自分がこんな事になるなんて想像も出来なかった。
思えば遠くへ来たもんだなぁ。色んな意味で。
ちなみに、恐れ多いとか言いながらも朝ご飯はきっちりたっぷり頂いた。めっちゃ美味しかった。
「奥様、今日は私はお供しなくて本当に良いのですか?」
私の髪を整えながら、マリーが聞いてくる。
鏡越しに見るマリーは少し口を尖らせているので、言葉には出さないが本当は置いていかれるのが不服なのだろう。
「ええ、今日は少し内密な話もあるから、マリーにはお城で待ってて貰えると私も安心だわ」
今日は精霊使いの認定を受ける為に、カーミラ王女殿下と外出する事になっているのだ。
そう、結局私はアウストブルクの精霊使いの認定を受ける事にした。もちろんフォスとクンツとカイヤも納得済みだ。
精霊の事をマリーに内緒にしたい訳ではないけれど、国家機密も絡んでくるし、何よりフェアランブルの貴族であるマリーに精霊の存在を一から理解して貰うのは中々に難しい。
ゆくゆくは打ち明けるかもしれないが、今はまだそのタイミングでは無いだろう。
「お城のパティシエさんが、今日のお茶の時間にナッツをたっぷり使ったアウストブルクの伝統菓子を作って下さるって言ってたわ。マリーが見学しても構わないそうよ?」
私がそう言うと、マリーの顔がパァァッと輝いた。
うん、パティシエさんに頼んでおいて正解だったな。
すっかりご機嫌になったマリーに見送られ、王女殿下と共に王都にある神殿へ向かう。
この神殿は精霊王を祀るための物で、魔力測定や精霊使いの認定はここで行われるらしい。
王都を馬車で走れば、神々しいまでに純白の神殿は直ぐに目に飛び込んで来る。アウストブルクの建築物は色彩が豊かな物が多いので、真っ白なこの神殿は、まるでそこだけ別世界かの様に見えるのだ。
『よー、カーミラ! そっちは新しい精霊使いか!?』
神殿へ一歩足を踏み入れると、数人の国守精霊がふわふわと私達に寄って来た。
国守精霊とは、前に王女殿下が話してくれた『国と契約している』精霊たちの総称だ。
「そうよ。でも、この子は隣の国の貴族なの。それに、もう契約している精霊もいるのよ」
『『『えー』』』
王女殿下がそう説明すると何故か国守精霊たちは不満げな声を上げ、私を囲んでワイワイ騒ぎ始めた。
みんな言葉も達者だし個性も豊かだ。
領地に沢山いる精霊たちより、やはりリアちゃんに雰囲気が近い。
『せっかく魔力が強い子が来たと思ったのに!』
『この子とだったら契約しても良かったのになー』
『私も! ねえ、あと二、三人くらいならイケるんじゃない!?』
おお。何これ私、モテ期? 精霊限定だけど。
「あと二、三人って……。アナの魔力ってそこまで凄いの?」
『凄いよー! それに精霊にとって凄くいい魔力の質だし、ちょっと人間離れしてるっていうか……あ!』
『え? なになにー? ……あー』
え、何? 私なんか変ですか?
私の周りを飛んでいた国守精霊たちは、何かに気付いたかの様に互いに顔を見合わせて『ウンウン』と頷きあっている。
「みんなどうしたの? アナに何か?」
私に代わって王女殿下が尋ねてくれたが、それを聞いた途端バッと国守精霊たちが一斉に不思議なポーズを取った。
足をクロスさせ腰をねじる様に背中越しにこちらを見て、顔の前で手で大きくバツを作るのだ。
インパクトしかない。
「……じゃあアナ、まず魔力測定から始めましょうか?」
まさかのスルー!!
「あ、あの、王女殿下……?」
「アナ、あれはね、国守精霊たちが精霊側の機密事項に触れそうになった時にとるポーズよ」
王女殿下は至極真面目な表情で私にそっと耳打ちをする。
あんなコミカルなのに!?
「覚えておいてね。精霊たちがあのポーズを取ったら、絶対にその話題を続けてはダメよ?」
王女殿下の迫力に圧倒されてツッコむ事も出来ず、ただコクコクと頷く。
精霊との付き合い方……奥が深い。
その後、リアちゃんから別室で精霊用のレクチャーを受けていたフォスとクンツとカイヤと合流し、無事私はアウストブルクの精霊使いの認定を受ける事が出来た。
と言っても、私は既に精霊と契約してしまっているので、適性を調べたり試験を受けたりする事もなく、ほとんどが事務手続きと説明で終わった。
唯一行うはずだった魔力測定も、魔力を測る為の水晶玉が私の魔力に耐えきれず砕け散るというとんでもない事態になった。
こうして、フェアランブルの貴族でありながらアウストブルクの認定を受けた、魔力量測定不能で複数の精霊と直接契約を結ぶというとんでも精霊使いが歴史上に爆誕したのである。
アレクサンダーお義兄様の義妹として順当な扱いなのかもしれないが、平民として暮らしていた数年前には、まさか自分がこんな事になるなんて想像も出来なかった。
思えば遠くへ来たもんだなぁ。色んな意味で。
ちなみに、恐れ多いとか言いながらも朝ご飯はきっちりたっぷり頂いた。めっちゃ美味しかった。
「奥様、今日は私はお供しなくて本当に良いのですか?」
私の髪を整えながら、マリーが聞いてくる。
鏡越しに見るマリーは少し口を尖らせているので、言葉には出さないが本当は置いていかれるのが不服なのだろう。
「ええ、今日は少し内密な話もあるから、マリーにはお城で待ってて貰えると私も安心だわ」
今日は精霊使いの認定を受ける為に、カーミラ王女殿下と外出する事になっているのだ。
そう、結局私はアウストブルクの精霊使いの認定を受ける事にした。もちろんフォスとクンツとカイヤも納得済みだ。
精霊の事をマリーに内緒にしたい訳ではないけれど、国家機密も絡んでくるし、何よりフェアランブルの貴族であるマリーに精霊の存在を一から理解して貰うのは中々に難しい。
ゆくゆくは打ち明けるかもしれないが、今はまだそのタイミングでは無いだろう。
「お城のパティシエさんが、今日のお茶の時間にナッツをたっぷり使ったアウストブルクの伝統菓子を作って下さるって言ってたわ。マリーが見学しても構わないそうよ?」
私がそう言うと、マリーの顔がパァァッと輝いた。
うん、パティシエさんに頼んでおいて正解だったな。
すっかりご機嫌になったマリーに見送られ、王女殿下と共に王都にある神殿へ向かう。
この神殿は精霊王を祀るための物で、魔力測定や精霊使いの認定はここで行われるらしい。
王都を馬車で走れば、神々しいまでに純白の神殿は直ぐに目に飛び込んで来る。アウストブルクの建築物は色彩が豊かな物が多いので、真っ白なこの神殿は、まるでそこだけ別世界かの様に見えるのだ。
『よー、カーミラ! そっちは新しい精霊使いか!?』
神殿へ一歩足を踏み入れると、数人の国守精霊がふわふわと私達に寄って来た。
国守精霊とは、前に王女殿下が話してくれた『国と契約している』精霊たちの総称だ。
「そうよ。でも、この子は隣の国の貴族なの。それに、もう契約している精霊もいるのよ」
『『『えー』』』
王女殿下がそう説明すると何故か国守精霊たちは不満げな声を上げ、私を囲んでワイワイ騒ぎ始めた。
みんな言葉も達者だし個性も豊かだ。
領地に沢山いる精霊たちより、やはりリアちゃんに雰囲気が近い。
『せっかく魔力が強い子が来たと思ったのに!』
『この子とだったら契約しても良かったのになー』
『私も! ねえ、あと二、三人くらいならイケるんじゃない!?』
おお。何これ私、モテ期? 精霊限定だけど。
「あと二、三人って……。アナの魔力ってそこまで凄いの?」
『凄いよー! それに精霊にとって凄くいい魔力の質だし、ちょっと人間離れしてるっていうか……あ!』
『え? なになにー? ……あー』
え、何? 私なんか変ですか?
私の周りを飛んでいた国守精霊たちは、何かに気付いたかの様に互いに顔を見合わせて『ウンウン』と頷きあっている。
「みんなどうしたの? アナに何か?」
私に代わって王女殿下が尋ねてくれたが、それを聞いた途端バッと国守精霊たちが一斉に不思議なポーズを取った。
足をクロスさせ腰をねじる様に背中越しにこちらを見て、顔の前で手で大きくバツを作るのだ。
インパクトしかない。
「……じゃあアナ、まず魔力測定から始めましょうか?」
まさかのスルー!!
「あ、あの、王女殿下……?」
「アナ、あれはね、国守精霊たちが精霊側の機密事項に触れそうになった時にとるポーズよ」
王女殿下は至極真面目な表情で私にそっと耳打ちをする。
あんなコミカルなのに!?
「覚えておいてね。精霊たちがあのポーズを取ったら、絶対にその話題を続けてはダメよ?」
王女殿下の迫力に圧倒されてツッコむ事も出来ず、ただコクコクと頷く。
精霊との付き合い方……奥が深い。
その後、リアちゃんから別室で精霊用のレクチャーを受けていたフォスとクンツとカイヤと合流し、無事私はアウストブルクの精霊使いの認定を受ける事が出来た。
と言っても、私は既に精霊と契約してしまっているので、適性を調べたり試験を受けたりする事もなく、ほとんどが事務手続きと説明で終わった。
唯一行うはずだった魔力測定も、魔力を測る為の水晶玉が私の魔力に耐えきれず砕け散るというとんでもない事態になった。
こうして、フェアランブルの貴族でありながらアウストブルクの認定を受けた、魔力量測定不能で複数の精霊と直接契約を結ぶというとんでも精霊使いが歴史上に爆誕したのである。
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