7 / 19
世界①
しおりを挟む
◆世界
余りの衝撃的なことに、僕は立ち尽くすだけでした。
そんな僕を見かねてか、一人の男が、「ほらほら、いい子はお父ちゃんの所に早く戻りな」と急かしました。
男の顔は怖いです。まるで人殺しでも簡単にしそうな顔に見えます。
アケミという子ともっと話したかったのですが、僕は怖くなって、父の元へと駆け出しました。
檻の所にいたのは、数分だったのでしょうか。
父はそれほど心配することなく、先ほどいた所で待っていました。
「陽一・・怖かったか?」
父に名前を呼ばれると、元の世界に戻った気がしました。
僕は「うん」と、強く頷きました。
「すごい場所やろ?」父はそう言いました。
それにしても、父はどうしてこんな場所に僕を連れて来たのでしょう。
父にとってのあの場所は僕の社会見学のようにも思えました。
「あの子ら、閉じ込められてるの?」僕は一番に訊ねました。
すると父は、「たぶん、そんなに長くはいないんとちゃうかな。じきにとこかに移されるはずや」と言いました。
どこかに移される・・その言葉を聞くと余計に怖くなります。
「何かされるん?」
「よそ者に何かすることはあらへん」
「いや、僕のことじゃなくて・・」
あのアケミちゃんが心配だったのです。
「それはお父さんにも分からん」父はそう言いました。
そして、僕の記憶が正しければ、父はこう言ったと思います。
「あの子供たちは、あそこの集落の人が安く買った子供たちや。ここから、またどこかに売られるはずや」
僕は絶句しました。
僕が大人になったら助け出すも何もありません。アケミちゃんは明日にもどこかに売られる運命かもしれないのです。
僕は檻の方を振り返りました。
アケミちゃんは、奥に身を隠しているのか、見えません。
他の子供たちは、僕たち父子を興味深げに見ています。
僕は想像しました。
あの檻に入れられている子供たちは、学校に行くどころか、親もいない子供なのです。
身よりは、同じく檻に入れられている子供たちしかいません。
その子たちも、いずれは引き裂かれるかもしれないのです。
そんな僕の顔を見ながら父は、
「ええか。よく頭に刻み付けておくんやで。あれが世界というもんや・・世界は綺麗な場所ばかりやないんや」と言いました。
父が言うには、この集落には水も電気もないそうです。
「電話はあるん?」
僕が訊ねると、
「そんなもん、あるかいな」と父は言いました。
父はその後「陽一」と僕の名を呼び、
「お前は、お父さんとお母さんの子供に生まれて幸せと思わなあかんで」と強く言いました。
僕は「うん」と頷いた後、
「あの子らを助けてあげること・・檻から出してあげること、できへんの?」
父なら何とかしてくれる。そう思ったのです。
僕の頭にはアケミちゃんのことしかありませんでした。
けれど父は、
「あほか、そんなことしたら、あそこの連中に殺されるわ」と言いました。
更に、「あそこの女ボスの二人は、何人も人を殺しているらしいからな」と続けました。
確かに男の人より、顔が同じ女の人の方が怖く見えました。
「あの女の人らって双子なん?」
「ああそうや、あれは双子や。顔が同じなのを利用して、悪どい犯罪をしているらしい」
顔が同じなのを利用して・・まるで江戸川乱歩の推理小説みたいです。
双子の女の人の目はすごく不気味でした。
三日月みたいな笑っている目です。怒っているようにも、笑っているように見える目です。
父の「何人も殺している」という言葉、それだけは真実のような気がしました。
あの双子なら、人を殺していても不思議ではない。そう思いました。人としての情がない。もっと言えば人間の血が通っていないようにも見えました。
父の話を聞きながら、これ以上、この集落に関わると本当に殺されるかもしれないと思いました。父がよそ者には手を出さないと言っていましたが、安心はできません。
「警察に言うたらええんとちゃうの?」
僕が訊ねると、父は、「日本には、警察とか手が出せない場所もあるんや」と言いました。
愕然としました。
僕は警察というものは悪い人を逮捕してくれる正義の人だと思っています。そんな警察が手を出せないのなら、僕は何を頼りにすればいいのでしょうか。
父の話を聞くうちに、大人であるお父さんのことまで怖くなってきました。
「言うことを聞かないと、檻の中に入れるぞ!」
父の目を見ていると、そんなお仕置きのような言葉が聞こえてきそうです。
余りの衝撃的なことに、僕は立ち尽くすだけでした。
そんな僕を見かねてか、一人の男が、「ほらほら、いい子はお父ちゃんの所に早く戻りな」と急かしました。
男の顔は怖いです。まるで人殺しでも簡単にしそうな顔に見えます。
アケミという子ともっと話したかったのですが、僕は怖くなって、父の元へと駆け出しました。
檻の所にいたのは、数分だったのでしょうか。
父はそれほど心配することなく、先ほどいた所で待っていました。
「陽一・・怖かったか?」
父に名前を呼ばれると、元の世界に戻った気がしました。
僕は「うん」と、強く頷きました。
「すごい場所やろ?」父はそう言いました。
それにしても、父はどうしてこんな場所に僕を連れて来たのでしょう。
父にとってのあの場所は僕の社会見学のようにも思えました。
「あの子ら、閉じ込められてるの?」僕は一番に訊ねました。
すると父は、「たぶん、そんなに長くはいないんとちゃうかな。じきにとこかに移されるはずや」と言いました。
どこかに移される・・その言葉を聞くと余計に怖くなります。
「何かされるん?」
「よそ者に何かすることはあらへん」
「いや、僕のことじゃなくて・・」
あのアケミちゃんが心配だったのです。
「それはお父さんにも分からん」父はそう言いました。
そして、僕の記憶が正しければ、父はこう言ったと思います。
「あの子供たちは、あそこの集落の人が安く買った子供たちや。ここから、またどこかに売られるはずや」
僕は絶句しました。
僕が大人になったら助け出すも何もありません。アケミちゃんは明日にもどこかに売られる運命かもしれないのです。
僕は檻の方を振り返りました。
アケミちゃんは、奥に身を隠しているのか、見えません。
他の子供たちは、僕たち父子を興味深げに見ています。
僕は想像しました。
あの檻に入れられている子供たちは、学校に行くどころか、親もいない子供なのです。
身よりは、同じく檻に入れられている子供たちしかいません。
その子たちも、いずれは引き裂かれるかもしれないのです。
そんな僕の顔を見ながら父は、
「ええか。よく頭に刻み付けておくんやで。あれが世界というもんや・・世界は綺麗な場所ばかりやないんや」と言いました。
父が言うには、この集落には水も電気もないそうです。
「電話はあるん?」
僕が訊ねると、
「そんなもん、あるかいな」と父は言いました。
父はその後「陽一」と僕の名を呼び、
「お前は、お父さんとお母さんの子供に生まれて幸せと思わなあかんで」と強く言いました。
僕は「うん」と頷いた後、
「あの子らを助けてあげること・・檻から出してあげること、できへんの?」
父なら何とかしてくれる。そう思ったのです。
僕の頭にはアケミちゃんのことしかありませんでした。
けれど父は、
「あほか、そんなことしたら、あそこの連中に殺されるわ」と言いました。
更に、「あそこの女ボスの二人は、何人も人を殺しているらしいからな」と続けました。
確かに男の人より、顔が同じ女の人の方が怖く見えました。
「あの女の人らって双子なん?」
「ああそうや、あれは双子や。顔が同じなのを利用して、悪どい犯罪をしているらしい」
顔が同じなのを利用して・・まるで江戸川乱歩の推理小説みたいです。
双子の女の人の目はすごく不気味でした。
三日月みたいな笑っている目です。怒っているようにも、笑っているように見える目です。
父の「何人も殺している」という言葉、それだけは真実のような気がしました。
あの双子なら、人を殺していても不思議ではない。そう思いました。人としての情がない。もっと言えば人間の血が通っていないようにも見えました。
父の話を聞きながら、これ以上、この集落に関わると本当に殺されるかもしれないと思いました。父がよそ者には手を出さないと言っていましたが、安心はできません。
「警察に言うたらええんとちゃうの?」
僕が訊ねると、父は、「日本には、警察とか手が出せない場所もあるんや」と言いました。
愕然としました。
僕は警察というものは悪い人を逮捕してくれる正義の人だと思っています。そんな警察が手を出せないのなら、僕は何を頼りにすればいいのでしょうか。
父の話を聞くうちに、大人であるお父さんのことまで怖くなってきました。
「言うことを聞かないと、檻の中に入れるぞ!」
父の目を見ていると、そんなお仕置きのような言葉が聞こえてきそうです。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる