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18.絆

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「ねぇ、叔父さん。」

「どうしたの?」

「どうして、竜を使って戦うの?」

そこは草原に小さな木が立っていて、戦争なんかがある世界とはかけ離れた別世界のような所。

「どうして、人は戦うの?どうして、竜と一緒に戦うんじゃなくて、“竜を使う”って言うの?」

赤い林檎の色をしたワンピースを風が靡なびかせて、少女は問う。

青年と小さな少女と、それから白い竜は彷徨う風を浴びている。

その少女の質問に、叔父さんは竜を右手で撫でて答えた。

「真のドラゴーネじゃないからね。」

「しん……の?」

「真のドラゴーネなら、共に戦うものだから。」

「なら、叔父さんは……しんのドラゴーネじゃないの?」

叔父さんの答えに、少女の疑問は一層広がったようだ。

「さぁ、わからないねぇ。アイリーンに聞いてみないと。」

その大きな疑問に叔父さんは笑って、竜の瞳を覗いた。

『あら。それを、私に聞くのねぇ。』

「アイリーンっ。私の叔父さんは、真のドラゴーネだよねっ?」

少女もまた、同じような目をして竜を覗き込む。

『そうね。この人こそ、私という白竜が選んだ真のドラゴーネよ。』

そんな少女の眼に笑いかけ、白竜は優しい声を出していった。

そうアイリーンが答えると、少女は目の輝きを増して笑った。

「あれ?でも……叔父さんは戦ってないよ?」

その笑顔がすっと流れて、また疑問の顔。

「戦う事が、ドラゴーネじゃないからね。アイリーンを傷付けずにすむなら、ドラゴーネには興味はないかな。」

穏やかな顔で少女を見る。

「叔父さんは、アイリーンが大好きなんだねっ!」

また、笑顔を向ける少女に優しい風が吹く。

「当たり前だよ。」

『よくもまぁ、そんなことを言えるわね。』

「ふふ。」

2人は少女には分からない話をしていたが、それが何だかとても幸せそうで。

少女はそんな2人を見て笑っていた。

「ねぇ、アセナ。」

「なぁに、叔父さん。」

そんな少女の名前を呼んだ叔父さんに、少女は聞き返す。

「竜が声を持っている理由を知っているかい?」

「竜が?」

「いや、僕たちも。」

「竜と、私達が声を持ってる理由?」

「そう。」

少女は難しい顔をして、考え始めた。

(笑うため?泣くため?お話しするため?ん~)

「分からない。なぁに?」

「呼ぶんだよ。」

叔父さんはまっすぐと空に目を向けていった。

「よ…ぶ?」

「声が聞えるんだよ、僕を呼ぶ声が。」

「え?」

「僕も、アイリーンを呼んで。アイリーンも僕を呼ぶの。」

だから声はあるんだよ、と空に笑う叔父さん。

「そっか。じゃぁ、呼ばない竜は、私と契約はできないの?」

「どうだろうね。けど、声が聞えるまで待ってみるのもいいかもしれないね。」

叔父さんは何か遠くを見るように、少女に言った。

その時間は小川のように優しく不規則に流れていく。

そこは、風が優しく吹き抜けていく草原に木が一本だけ立っている世界の原点のような所。




鳥のさえずりが、窓の向こうから聞える。

ベッドに眠っていた少女は、目を開けて、あの日よりも少し色の濃い世界を目に映す。

「……夢?」

誰もいない部屋に、ただ一言呟いてベッドを離れる。

「アセナ!!」

「わ!もうこんな時間!!」

ドアの向こうの声に時計を見て、服を着替え始める。

「やっぱりね。新年度最初の日に、寝坊なんて。」

分かりきったようにため息をだして、リラが言った。

「わわっ!ごめんなさいっ!」

白くまっさらのマントを羽織って、リラの傍に走り寄った。

「何か、いいことでもあったの?」

リラはアセナの顔をみてそういった。

「うんっ!!私がここに立った原点の夢をみたの。」

「そう。」

リラは少し嬉しそうな顔をした。

アセナは、あの日からずっと、耳を澄まして、声を探していた。

ずっと、ずっとドラグーンになることを夢にしてきた。

今、目指すものは……ドラグーンの名を継ぐ事。

『アセナ、行きましょう。』

この白い色を放つ、キルアと一緒に。
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