伝説は白き竜と共に再び訪れる (旧題 ドラグーン~黒と白の幻の竜と古の勇者たち~)

クイーン・ドラゴン@アヤメ

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17.いつか貴方の隣へ

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「本当に行かなくて良かったの?」

草原に立ち、空の端を飛んでいくセルスを見ているアセナは悲しげな目をしていた。

リラは知っている。

アセナがどれだけセルスを好いていたかを。

だから、アセナが自分で残ると決めた事が不思議でたまらなかった。

「うん。いいの。」

そう言うアセナは、悲しそうな顔をしていた。

「どうして、ついていかなかったの?」

リラの純粋な問いに、アセナは真剣な表情でリラに答える。

「“付いて行く”んじゃ駄目なの。私が、私の足で行かなきゃ行けない場所だから。」

「アセナが目指すのは……」

「ドラグーンだよ。」

アセナが目指すのは、誰しも一度は夢見るもの。

だが、皆ドラグーンにはなれない、といつか現実に直面するのだ。

「私にも、ドラグーンを目指してる時期があったなぁ。」

リラは小さく笑いながら、そう口にする。

「今は、目指してないの?」

アセナは、キョトンとした顔でリラに聞いた。

「目指してないんじゃなくて、目指せるほどの実力がないの。セルスとかアセナとかならなれると思う。けど、私はなれないよ。特別な力も実力も何も持ってない平凡なドラゴーネだから。」

だからアセナと一緒の空を飛べないのは悲しいな、と本当に悲しげな表情で言う。

「……何も持ってない?本当に?リラは、他のドラゴーネが持ってないものを持ってる。……リラは、契約 コントラクトして、竜とたった一つの絆を得たじゃない。叔父さんが言ってたの。ドラグーンに必要なのは、力でも特別なナニカでもないって。誰にもないたった一つの絆なんだって。だから、リラもドラグーンになれるよ。」

アセナは優しげな瞳で笑いながら、そうリラに言った。

世界中の誰もが知っている、あのドラグーンの名を継ぐなんて。

心の何処かで、それは夢のような話だ、と。

そうリラは思っていたはずだった。

リラは、アセナならできそうな気がして心がドキドキする。

白竜を従えて、甘えたりしないで、ただ真っ直ぐに夢を夢にしてない。

そんなアセナだから。

リラはアセナがドラグーンになると思うのだ。

「そう。私がドラグーンになれなくてもいいの。ドラグーンになったアセナが見たいの。…アセナならなれるわ、きっと。」

リラは微笑みながらアセナへ言った。

心地よく吹いていた風は、まるで全てを分かりきったように草原を滑っていく。

その言葉はいつか、誰かに語り継がれるのだろうか。

そして、その誰もが私と同じ気持ちになるのだろうか。

「私、今度……アファルレセティア学院の試験、受けようと思うんだ。」

突然、彼女が前を向いていった。

太陽が暖かく彼女と私を照らしていた。

太陽に照らされている彼女は私に眩しく見えた。

「アファ……アファルレセティアってあの!?」

リラは大きな声で叫ぶ。

アファルレセティア学院は、セルスの行ったコンゼルフィート学院と並ぶ世界最高峰の学校であった。

「うん。」

「あの試験がどれほど難しいか知ってるの?

きっとセルスでも、3回以上は受けなくちゃならない。合格者は、3人いればいいほうなのよ!?」

過去五年で合格者は10人。

受験者は一度に何万人。

ほとんどの生徒は、教師によるスカウトだ。

そのため、受験者が受からないときさえある。

「……知ってるよ、私なんかじゃ受からない事くらい。」

「なら!」

どうしてそんなことするの、と問いかけようとするリラの言葉を塞いでアセナはゆっくりと小さな手を太陽と風に精一杯伸ばして言った。

「それでも、頑張らなくちゃ。私、思うの。もっと、もっと、って手を伸ばすから、先があるんじゃないかって。」

暖かな風が、止まった。

時の流れが止まってしまったかのように、その景色に魅せられる。

「もしも、この手を伸ばす事を止めちゃったら、もうその先はないと思うの。」

止まった風が、また柔らかくリラとアセナの間を吹きぬけていく。

「でもね、手を伸ばし続ける限り…先があると思うの。」

その笑顔が、強さなのだと、リラは思った。

信念が、真っ直ぐに…どうしてこんなにも強い心を持ってるのだろう。

リラが探し続けるものを、どうしてこんなにも容易く持っているのだろう。

「だから、怖くない。何度落ちても、何度でも受ける。」

風の流れが変わり、空の端から白い竜が飛んでくる。

その色はまるで、アセナの心を表わすように美しくて。

朝空に唯1つ、ひらりと軽く花びらのように舞いながら、目の前に下りてくる。

「キルア」

その白竜に近寄り、笑いかけるアセナが。

リラの目に一瞬、ドラグーン7勇者が着ていたマントが風に揺れたように見えた。

アセナはどこまでも飛んでいくんだろう、ふいにそうリラは思った。

どこまでも、どこまでも、アセナは限界なんか知らず、風のようにどこまでも。

それは答えが無いからじゃなく、唯、答えのない夢を叶えるために。

そう思えば、静かに照らす太陽の光は、まるでアセナだけを照らしているようだった。
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