上 下
177 / 191
Scene29 女教師と俺の校舎脇

第177話

しおりを挟む
「私が『魔王』になっても良いんじゃないの」

笑う女。
狂った微笑み。

「『勇者』にして『魔王』か。
 その実態は三級市民。
 前代未聞の大物だな」

俺は流すが、聞いちゃいない。
見開いた瞳孔、狂的な目つき。

俺は暴れる。
後ろから俺を羽交い絞めにしたのは何者だ。

俺の視界にチラリと入るのは黒いフード付きのローブ。

「ミクトランテクゥト!
 この女に魅入られたのか」

魔王の四将。
死霊術師、ミクトランテクゥト。
コイツはどうも調子っぱずれだった。
元々常識の無い魔導書マニア。
世間常識の無い迷惑な死霊術師ではあったが。
外宇宙邪神を召喚して湖に捨てるほど、おかしなヤツじゃなかった。

「勇者、お前が操っていたのか」

「フフ、私は大したコトはして無いわ。
 コイツが私やアナタに気付きそうだったからね。
 寝てあげたの。
 魅了して言う事を全て聞かせるなんて手間はかけてないわ。
 私やアナタの事を忘れて、少しばかり自分のやりたいように。
 タガを外して行動するよう仕向けた程度ね」


少し物事の順番がおかしい気がするな。

「コイツやジージーマインが俺を追ってこの世界に来たのは三ヶ月くらい前だ。
 オマエも同じハズじゃ無いのか」

シアカテルはそう言っていた。
俺がこの世界に来たのは三年ほど前。
三年間、この世界に来る方法を探していたのだろう。

「四将も私もアナタを追う方法を探していたのは半年程度の話ね。
 アナタが高校生、草薙真悟の中に逃れたのはこの世界で三年前。
 私が逃げたアナタを追って聖女の力を借りてこの時空に来た。
 それが二年半前、おそらくアナタがここに来た半年後。
 その時の女教師の中に入り込んだんだわ。
 あの四人はそれから二年以上経ったこの世界に移動して来たのよ。
 理由まで訊かないで欲しいわ。
 私だって分からないわ。
 私やアナタは魂だけ。
 彼らは肉体ごとジージーマインの特殊な技術で転移してるでしょう。
 それが影響してるのかもしれないし、たまたまかもしれない」

そうなのか。
道理で三年も経った割にシアカテルが少しも変わった様子が無かった。
彼女の中では半年しか経っていないのか。

「説明はこれまでにしましょう。
 じゃあ行くわよ」

女が羽交い絞めにされた俺の下半身に手を伸ばす。
ジーパンを下まで降ろし下着まで脱がせる。

女は自分のスカートに手をやりパンティーを脱ぐ。
青の縞パン。
教師にしては可愛らしい。

俺に身を寄せる女。
外見は担任教師、中身は『女勇者』。

「ナニをする気だ」
「アナタの魔力を貰うのよ。
 アナタとすればスゴイ魔力が産まれる。
 アナタの推察ではサキュバスの血もボクには混じってるのだろう。
 アナタの全て私の物にしてあげる」
しおりを挟む

処理中です...