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Scene29 女教師と俺の校舎脇

第176話

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「オマエ、一族の血が混じっているのか」

笑う『女勇者』。
顔だけは高校の教師の物だが。
すでに言動も身に纏う雰囲気も一教師では無い。

「やはりそうだったのね。
 アナタを追って来た甲斐が有ったわ」

「良く追って来れたモノだ」

「あの時、アナタを魔族の砦に追い詰めた。
 周りは人間の兵士で囲み。
 聖女の力と勇者の神器でアナタの力は封印した筈だったわ。
 『魔王』を捉えた。
 そう思ったのに。
 残っていたのは唯の抜け殻。
 魂と魔力の塊が異界に逃げ出す。
 そんな器用な真似が出来るなんて。
 思いもよらなかったわ」

「一族に伝わる秘術だな。
 魂と膨大な魔力全てがあの世へ行く。
 俺はてっきり死んで無くなるという意味だと思っていたんだが。
 この世界に来てどうやら違う意味だったらしいと気づいたよ」

「聖女と私で色々調べてね。
 どうやら似たような真似が出来そうになったの」

この女も一族の血を引いてるから可能だったんだろうな。
 
「俺を追う必要など無かろう。
 『魔王』が居なくなったんだ。
 人間に有利に調停を進められたハズだぞ。
 オマエも『魔王』を倒した『勇者』として栄光に満ちた生活を送れただろう」

「フフフ。
 そう思うの。
 アハハハハハハ」

嘲笑うような女。

「『魔王』が居なくなってしまえば、私は人間社会で力を持ち過ぎた元三級市民。
 みんな私のコトを陰でウワサしたわ。
 誰とでも寝る女、肉体を売って『勇者』になった売女。
 まあその辺は嘘でも無いわね。
 『魔王』を倒せたのは魔族も肉体でたらし込んだから。
 『魔王』を殺しそこなったのは何度も肉体を重ねて情が移ったからじゃないか。
 そんな話まで出たわね」

残念ながらあの世界で女勇者とは寝ていない。
現在考えれば、なかなか魅力的な容姿の女だった。

「そんなウワサが出るなら、本当に寝ておけば良かったな」
「……アナタ、この世界で性格変わったね。
 そんなんじゃ無かったわ。
 私が会った『魔王』は王の責任を背負わされた、真面目そうな男だった」

「それだな。
 この世界で責任から解放されたんだ。
 『勇者』、オマエもこの世界で新しい人生を楽しめば良い」

「イヤよ。
 私は文献を調べていて思ったの。
 この私の特殊な力が本当に『魔王』の一族のモノならば」

『女勇者』が俺を見る。
危険な狂った目つき。
何かを、考えている。
ろくでもない事を。

俺の後ろに誰かいた。
誰かが俺の身体を捕える。
身動きが取れない俺に女が言う

「この異性と寝ると魔力を産み出す力が『魔王』の一族のモノならば。
 どうかしら。
 私が『魔王』になっても良いんじゃないの」
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