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Scene.EX01 華沢香奈と俺のいない夜の屋上

第30話

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EX EPISODE 01

サブカルチャー研究部の僕は帰るのが遅くなってしまった。
サブカルチャーなんて言ってるけどもちろん内容はアニメとコミックだ。
他の部員と一緒に帰っても良かったのだけど、まだ部長と副部長が残ってる。
二人きりにしたくないんだ。
副部長の華沢香奈さん。
香奈さんの文化祭のコスプレ写真が僕のスマホの壁紙になってるのは内緒だ。
香奈さんの胸元やスカートから伸びた足を、部長がイヤラシイ目で見てるのに僕は気づいてる。

「片付け手伝ってくれてありがと。
 来年の副部長はあなた達かな」

香奈さんが微笑みながら言ってくれる。
この笑顔。
僕は自分の口元がだらしなく笑うのを自覚する。
副部長!
香奈さんが部長で、僕が副部長。
二人だけで打ち合わせなんかも多くなっちゃったりして。

「いーえ、当然の事ですよ。なっ」

そう言ったのは僕の友人。
迷彩帽を被ったミリオタだ。
ミリオタまで残らなくても良かったんだけど。
こいつも香奈さんへの態度が怪しいんだ。
米軍正式採用の銃がどうだとかショッチュウ香奈さんに話かけてる。
銃に興味ない香奈さんは苦笑いしてるんだ。

「よし、帰ろうぜ」
部長が言う。
今どき珍しいデブメガネ。
古き時代のTheオタク。
だけどこの人はコミュ上手だ。
誰とでも物怖じせず喋るし、話題も豊富なんだ。
デブと面と向かって言われながらも誰にも好かれてる人物。
僕も香奈さんの事さえなきゃ尊敬する先輩だ。

「はい、部長」
僕も身支度を整える。
カバンは部室に持ってきてる。
教室に寄らなくても直接帰れる。

なんだか騒がしい。
隣のゲーム研究会。
帰り支度をしてるだけにしては五月蝿すぎる。
悲鳴らしき声まで聞こえる。
ホラーゲームの音量でも最大にしてるのだろうか。

ゲーム研究会との仕切りはいい加減、ベニヤで仕切ってるだけなんだ。
校舎の三階の端、空き教室をサブカルチャー研究部とゲーム研究会で分けてる。

そのベニヤ板が倒れて来る。
危ない、香奈さん。
僕は香奈さんの手を取って、ベニヤ板から逃れる。
うわー、手を握ってしまった。

ベニヤ板の先では人間が暴れてる。
学校の制服や部活のユニフォームを着た男達。
襲われてるのは見た事ある顔。
ゲーム研究会の連中。

ああっ。
ゲーム研究会の女子が押し倒された。
サッカー服の男が女の子を上から襲ってる。

ミリオタがスマホで撮影を始める。

「おおっ、これはレイプ事件! 無修正で撮れるのか」

そんな場合かよ!

部長がカバンで男を殴りつける。
部長のデカくて重いカバン、一体何冊コミックやラノベを仕込んでるんだってシロモノ。
男が部長を睨んで唸る。
うぅううううぅー。
コイツ、バケモノ!?
その顔は青黒い、目だけが赤くギラギラと輝く。
口からは血のような赤い液体。
どう見ても普通の生徒じゃない。
何だよこれ、何が起きてるんだ!?
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