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Scene05 高天原宇宙と俺の地下室

第29話

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「まだしばらくは屍人騒動が収まる事は無いね」

ウツが言う。
最初からこういう情報目当てでここに来たのだ。
しょうも無い話で時間がかかってしまった。

モニターに映し出される。
これは新宿駅か。
至る所が破壊されてる。
ホームに緑色の電車が突っ込み、半壊状態。
明るい所には血や肉片が散らばる。
暗い地下商店街では蠢く人影と赤い目。

「要所がやられて交通網は無茶苦茶。
 警察は最初民間人を保護しようと動いたみたいだけど」

新宿警察署だろうか。
確か日本で最大の警察署だったはずだ。
警察の建物ってのは造りが地味で区別がつかない。
区別の付かなかった建物は特徴が出来てる。
入り口にトラックが突っ込み、上階では炎が吹き上げてる。

「なんせ保護した筈の民間人が一時間後には動く屍人として襲ってきたりする。
 対応しきれなかったようだね。優秀な日本の警察だけどゾンビ対策マニュアルまでは作ってなかった。
 屍人をどう定義するかも問題だね。もしも治療可能な病人と捉えた場合、警察としては乱暴できないだろう。市民を襲う暴徒としても、それだけじゃ発砲までして良いものか」

「民間人保護は諦めて、要人保護に力を入れ出したみたいだよ」
 
都庁だろうか、バリケードが引かれ警察官が護っている。
周りには人影が多数。
普通の一般人のようだが。
警察官達は市民を中に入れない。
押し問答の様になっている。

「都庁には政治家や要人が集まってる。
 いつゾンビになるか分からない市民は招き入れかねる。
 とそういうワケさ」

「そんなメチャクチャな」
「お嬢様、仕方のない部分も有ります。
 私もお嬢様を護るためなら、
 誰を犠牲にしてもかまいません」

何故、メイドは俺に視線を向けながら言うんだ。

俺達は遅い昼飯を食べる事にした。
既に昼時を大分過ぎてる。
ネコ耳メイドは軽食を持ってきていた。
サンドイッチ、フルーツ等。

防災用食料やら飲料も大量に有った。
ウツのモニタールームの脇に倉庫が有った。

「ここの地下施設はそういった備蓄品置き場の名目で工事がされてるからね。学生達全員分考えて用意されてる。簡単に食料は尽きないね」

「こんなパニック映像や、ゾンビがうろつく街を見ながら食事も味気ないよね。
 少し学生達の映像でも楽しむかい」

ウツが笑いながら言う。
悪趣味な笑い。
どうせロクな映像じゃ無いな。
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