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026:ゲーネッツさんと飲もう

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 宿屋の一階の酒場では冒険者のゲーネッツが居た。他の冒険者と飲んでいるようだ。

「おぅ。あっジン!」

 そう俺を呼んで手招きしている。

「やぁ。ゲーネッツさん。どうしたんです?」
「どうしたんです? じゃねぇだろ。何で元カノの別嬪さんと一緒に住んでんだよ!」
「あぁ、それか。それはですね……」

 俺は正直に話す。するとゲーネッツが呆然とした様子になった。

「子種……」

 俺は頷く。

「そうなんですよ。参っちゃいましたよ」
「参っちゃいましたよ。じゃねぇ! 仕込んじまえ。めっちゃ仕込んじまえ!」
「えぇ。それはちょっと……」
「何でだよ! あんな別嬪さんと子作り。うは! 最高じゃねぇか!」

 そう言って俺の首を絞めにかかるゲーネッツさん。死ね。死んで詫びろぉとか言っている。俺たちマブダチじゃなかったのか。まぁ首を絞めると言っても軽くだけど。

「はぁ……それで?」
「それで? いえ。抱いてませんよ」
「だから何でだよ!」

 目が怖い。

「う~ん。子供。作ったって俺が育てるわけじゃないし。なんか一から十まで全部が全部、向こうの都合なんですよね。俺の意思は? 思いは?」
「あぁ。まぁそれはなぁ……」
「完全に相手の家の事情なんですよね。それにです。もし生まれた子供が優秀じゃなく普通の子だったら?」
「それは……」
「誰にとっても不幸な結果にしかなりません。そんな無責任なことは出来ない」
「…………」
「普通の子だって良いじゃないか! だから生まれてくる子が優秀であることに拘っている以上は抱けませんよ」

 するとゲーネッツさん。

「お前。良い奴だな」

 そう言って笑った。

「そうだな。普通でも良いんだよな……」

 ん?

「どうしたんです?」
「あん。ちょっとな。昔のことを思い出してた」
「なんです?」
「おう。俺な、これでも元貴族の家の子だったんだぜ」
「え、嘘だぁ」

 俺はつい本音で突っ込んでしまう。

「お前……」

 ゲーネッツさんが悲しそうだ。

「だって何処からどう見ても言動の全てが冒険者以外に見えない」
「酷ぇ。だがまぁ。そうだな。それだけ今の生活に染まったってことだな」

 ん。話の軌道修正をしよう。

「それで?」
「おう。三男坊だったんだがな。まぁ色々と優秀じゃなくてよ。12歳になる頃には見限られた」
「…………」
「まぁ今となっちゃ自由をありがとうってなぁ感じで感謝してるんだがよ。それでもやっぱり傷ついたな」

 そう言って微かに笑う。

「湿っぽくなっちまったな。少し飲んでかないか?」
「ゲーネッツさんの奢りなら」
「お前……」

 そう言って後で、大笑いを始めた。

「だぁっはっはっは。そうだな。あぁ。そうだ。飲め飲め。奢っちゃる」

 そう言って俺の分のエールを用意するゲーネッツさん。俺なそんな彼を見ながら思った。

 やっぱさ。子供に期待し過ぎては駄目だよ。

 親の思いが重すぎても軽すぎても子供にとっては不幸だ。

 子供をありのまま見つめ。それを受け入れて愛する。

 それが一番だと思うんだけどな。
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