壁越しの饗宴

おもちDX

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5.主導権の行方

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ぴと、と中心部にペニスが当たったのを確認して、ゆっくりと体重をかける。
熱い塊がぐっと蕾を広げた。その生々しい感覚は、おもちゃのディルドなんかとぜんぜん違う。
思ったよりも太かったせいでぴりぴりと入り口が痛いけど、ローションのぬめりを借りればにゅるっと先端が入ってきた。

ふぅ~。生身のペニスって圧迫感がすごい。
ちょっと待てば苦しさが落ち着いてきた。まだ歩が余裕そうなのも悔しくて、ずりずりと動かしながら結合を深めていく。

「君、なんでこんなこと……?」
「あゆのこと、好きだから」
「は?好きって……あっ、ちょ!」
「ぁ……あん!」

亀頭が前立腺を掠めたときの快感は予想以上だった。
一気に身体から力が抜けて、奥まで楔に貫かれる。ズンッとした衝撃が走り、ビリビリと甘い疼きがお腹の奥に溜まった。

「あぁっ。すごい。入ってる……」
「く……きみ、名前は?」
「……こう」
「コウ。その、身体とか、大丈夫なのか?」

こんなときに名前を聞いてくるなんて、ずるい。しかも俺が男なことを理解して、心配してくれている。
だから好きなんだ。
歩はちょっと抜けてて天然だけど、かなり善良な人間だ。狡猾な手を使うおれからすれば眩しいほどに。

愛しくて、絶対手に入れたいと思う。だから――まずは身体から落とす。

上下の動きは吸盤付きディルドで予習済みだ。おれは震えそうな脚に力を入れ、ペニスが抜けるギリギリまで腰を持ち上げ、落とす。
徐々にリズムをつけて動かせば、ごりごりと腔内が擦られて、押し出されるように嬌声が口からあふれ出した。

「んっ、あ、あっ……」

きもちいい。
潤んだ瞳で歩を見下ろすと、耐えるように眉間に皺を寄せていた。一瞬苦しいのかと思ったけど、尻の中に感じる存在感は相変わらずすごい。

おれは身体を前に倒し、今度は噛みつくように唇を重ねた。慣れないキスのまま思い切って舌を差し込むと、大きな舌がおれの舌を絡めとった。にゅくにゅくと舌を扱かれ、その気持ちよさに頭が痺れる。
あ~。キス、上手い……
自然と腰の動きが疎かになってくる。

「なぁ、あゆ。動いてよ」
「い……いいのか?」
「うん。もっと気持ちよくなりたくない?好きに動いていいから」

おれが煽るように許可を出すと、歩の瞳の黒さが増した。その視線に、まるで大型の獣に睨まれたかのように硬直してしまう。
次の瞬間、歩は両手でおれの腰を強く掴んだかと思うと、ズン!と下から突き上げてきた。

「んぁ!」

ガツガツと中を抉られ、腰を掴まれているせいで衝撃がダイレクトに伝わってくる。奥の狭いところに亀頭がぶつかると、あまりもの快感に腰から力が抜けていく。
セックスって、こんな感じなんだ。自分ではコントロールできない動きに翻弄される甘美さに、思わず目を閉じた。

「あ、あっ。んっ……はぁんっ」

声が我慢できない。そもそも、壁越しに聞かせるためあえて声を出すようにしてきたから、我慢の仕方がわからなくなっていた。

「ぁ、あゆ……んんっ。き、きもちいっ……」
「ああ。俺も」

パチリと目を開くと、じっくりおれの顔を見ている歩と目が合った。そのジリジリと焼かれるような視線の熱さに、顔が熱くなる。
目線も、腰を掴む手も、中を擦り上げる屹立も、ぜんぶあつい。

おれのペニスは律動のたびにビタビタと歩の腹に擦れ、先走りを垂らしていた。やばい……バレてるかな。
ちょうど心配していたそのとき、ベビードールに隠れていたその場所に歩が手を伸ばした。

「えっ!」
「イケそう?」
「いや、おれはいいから……ちょ、おい!んぁっ。んんーーーー!」

なんで!?勝手に突っ込まれてるくせに、なんで俺をイカせようとするんだよ!

中心部を握り込まれたら、もうひとたまりもなかった。歩の腰の力はどうなっているのか、ずっと規則的に下から突いてくる。それに合わせて手を動かされ、ぬるぬるの先端をぐりっと親指で抉られた瞬間、おれは腰を震わせながらイッてしまった。

「くぅっ。もぅ……~~~~~!ッ!イってるって!」

歩が動きを止めないから、促されるようにぴゅくぴゅくと白濁を吐き出す。べしべし腕を叩いてやっと、歩は動きを止めてくれた。

「なんなんだよ!」
「いやこっちのセリフだろ」

た・し・か・に!
好き勝手して挙句の果てにはおれだけイかされて、なにやってるんだよ……
さすがの歩も呆れ返っているだろう。あぁ、嫌われたら本末転倒だ……

おれが落ち込んでおそるおそる顔を窺うと、歩は楽しそうな、ニヤニヤした笑いを浮かべておれを見ていた。
笑った顔は少年の頃と変わらない。大好きな表情に思わず見惚れてしまった。

「コウ、お前エロすぎ」
「う……身体から落とす予定だったのに……」
「あはは!そうなの?……もうちょっとだから、がんばってよ」

歩は枕元にあったティッシュで手と腹を雑に拭き取ると、流れるようにおれのベビードールを脱がせ、ぽすん。とおれを押し倒した。

……ん?

おれの両脚を抱えあげ、アナルだからこの体位が、などとぶつぶつ呟いている。
おれは気づいていなかった。
というか、初めての行為にいっぱいいっぱいで、完全に忘れていた。

歩はまだ一度も達していないという事実に。そして、煽られた男はもう途中で止められないということを――
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