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25 パティーからの手紙
しおりを挟む冬休みが終わり、最後の学期がはじまった。
ラナは入学試験の準備の為に放課後は図書館で勉強する毎日が続いていた。
メグ達とは相変わらずランチは共にしていたが、なんとなく溝というか薄っすらした壁というか、そんなものを感じていたが、確かな目標に向かって努力するラナにとってはあまり気にならなかった。
メグは今ではテレンスと直接連絡を取り合っているようで、
「リバティを卒業したら東部第一大学に来てくれるの」
と幸せそうに言った。
東西の第一大学はどちらも国を代表する名門大学で、旧都だった東部の方が歴史は古いのだが今や商業的発展し人口も上回る西部に一番の座を譲ってから久しい。
ユージンはハッキリとは言わないのだが、どうやらテレンスの成績はトップクラスというわけではないようだ。
彼が弁論大会で好成績を修めることに拘ったのも、少しでも入試で有利になる材料が欲しかったからかも知れない。
西部第一大学に入れない言い訳にメグを使っている気がしなくもないが、まあ、どっちにしたって東部第一大学も十分名門なことには違いない。
メグはテリー様に貰ったというペンダントをシャツの中から引っ張り出して自慢して見せた。
ピンクの花のモチーフのペンダントはいかにもな少女趣味で、ラナは心の中で
『なにそれダッサ』
と毒づいたが、
『同じペンダントをユージンがくれたんなら、きっと大喜びするんだろうな、私って性格悪いな』
とも思った。
グレイスとキャロラインが顔を見合わせてちょっと嫌な表情をしたのにメグは全く気づいていないようで、その後もひとしきりテリー様の自慢話を続けた。
放課後、図書館で勉強しているとガブリエラが現れることがある。
「金持ちは家庭教師つけて家で勉強してなよ」
「嫌味~。せっかく良い問題集見つけてきたのに」
ガブリエラはストンとラナの隣に座って首に下げたペンダントを見せてくる。
「ほらほら見て見て。コルムから貰ったの」
「やらた封筒が膨らんでると思ったらそれだったんだ」
『全く、どいつもこいつもペンダントかよ』
木を彫って彩色してあるペンダントトップはコルムの手作りだそうで、ヴェートスの伝統紋様が刻まれていてモダンでカッコよかった。
「なにそれ~。呪術とかに使うやつじゃないの?」
「失礼ね~。ラナの分も入ってたけどあげないから」
「ウソウソ」
ガブリエラに渡されたのは2回りくらい小さくて短い革紐のついた物だった。
「ありがとう。嬉しい、けどさ、明らかに手の込み具合が雲泥の差だよね・・・彩色も一色だしさ」
ガブリエラはクスクス笑って、
「そこは愛の大きさの差ってもんじゃない?」
と言った。
「こんなもん悠長に作ってて、受験の方は大丈夫なのかしらね?」
「コルムはリバティでも1,2を争う秀才なのよ」
そのことはユージンから聞いてラナも知っていた。
逆にそれくらい飛び抜けて優秀じゃなければヴェートスのコルムがリバティに入学することはできなかったということだ。
「それはヴェートスに伝わる護符なんだって。願い事が叶うのよ。
ラナの合格を願って彫ったんだって」
「先に言ってよ~。文句つけちゃったじゃない。
よーくお礼言っといてね!」
ラナはペンケースのジッパーの先にお守りを結びつけた。
「これで合格間違いなし!」
司書さんに五月蠅いと注意された二人は謝ってから顔を見合わせて舌をペロッと出した。
それから閉館で追い出されるまで二人で問題集を解いた。
家に帰るとラナ宛に手紙が届いていた。
ユージンからにしては封筒が可愛い。
記されていた差出人はパティーだった。
興奮したラナは制服を着替えるのも忘れて手紙を開封した。
~ラナへ
いつも励ましてくれたのに返事もしないでごめんね。
あなたからの心のこもった励ましを素直に受け取れなかった私を許してくれますか?
最近、やっと外に出られるようになったの。
今度用事があって東部に行くんだけど、ラナの都合が合うなら会ってもらえるかな。
私のこと忘れないでくれてありがとう。
パトリシア・ベイリー~
ラナは嬉しさに飛び上がるほどだった。
そしてすぐに、学校を休んででも会いに行くから日程を教えて、と返事を書いた。
最後に会ってから4年以上経った。
やっとパティーに会える。
ラナはその日を指折り数えながら待っていたが、楽しみ過ぎて勉強が手につかなくて困った。
そしてとうとうパティーに会える日がやって来た。
ラナはガンクラブチェック柄のウールのワンピースにサイドボタンブーツを履いた。ボタンが9個も並んでいるお気に入りのやつだ。
それから仕上げに以前パティーとお揃いで買った偽物のカメオのブローチを胸元に飾った。
そしてオーバーコートの中にユージンと交換した白いマフラーを巻いて意気揚々と出掛けて行った。
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