14 / 38
14 時には愚痴りたい時もあるさ
しおりを挟む
翌日はまた何もなかったかのように過ぎていった。
いつもと変わらず四人でランチを食べて、当たり障りのない話をして笑って過ごした。
実際に何事も無くて、心にちょっとした蟠りを感じているのはラナだけなのかもしれなかった。
~女の子同士の付き合いって、楽しいけどちょっと面倒くさいところもあるのよ。
見た目一つとってもね。
男の子は、「女の子は自分より見劣りする子を側に置きたがるんだろ?」なんて思っていそうだけれど、そうでもないのよ。
「自分がどういう娘たちと仲良しで、どういうグループにいるか」
っていうのが重要なわけ。
だからブスでダサい女の子と友達になりたいって人は少ないの。
だって、そういう子と一緒にいるってことは自分もそのランクって周りに見られるってことだから。
特にうちの学校は派手で華やかだからファッションには気を使うわ。
オシャレで可愛い子達と同類って思われたいから皆必死なの。
かと言って目立ち過ぎちゃダメなのよ。
「あの子、自分のこと相当美人だと思ってるよね~?大したことないのに」
なんて言われちゃう。
ただし、飛び抜けて美人の場合はこれには該当しないわ。
もう最初から負けが決まってるから、皆がチヤホヤと讃美するの。
本心はわからないけど。
くだらないって思うでしょ?
でも、そんな中で神経を尖らせながらちょっとした言葉の端々や、表情の変化を読み取って上手くやらないと、次の日から突然口を利いてもらえなくなったりするんだ。
どこで間違えたのか、さっぱり分からないけど~
一週間ぶりに駄菓子屋に行ったらガブリエラがベンチに腰掛けて伸びる飴を食べていた。
ラナが隣に腰掛けると、
「会いたいと思ってたのよね」
とガブリエラが言う。
「何か用事でも?」
「別に何もないよ」
ガブリエラはベタベタした指をラナのシャツで拭く動作をして笑った。
「約束も何にもしないで、会いたいな~って思ってる時に偶然会えると運命感じちゃったりしない?
会うべくして会ったんだ、とか」
『ガブリエラが私に会いたいな~なんて思ってくれるんだ』
ラナは照れたような泣きたいような気持ちを誤魔化して、
「なんかすっごい匂いなんだけど」
とガブリエラが口からビヨ~ンと引っ張っているものを見ながら言った。
「何の匂いする?」
「・・・イチゴかな?」
「イチゴって思うよね?私もそう思った。
でもさ、本物のイチゴって、こんな匂いするぅ~?」
「・・・・しない」
「ほら!」
「何!また、その問答?」
ガブリエラはヒャッヒャと笑っている。
「ガブリエラはどうして駄菓子なんか食べてるの?
高級品ばかり食べ過ぎて舌と脳がバグった?」
「・・・バグ・・・まあ、そうかもね。普通に美味しいと思うんだけどさ、まあ、反抗的な気持ちが無いわけでもないかな」
「反抗・・・食べ物で?」
「お茶はどこ産のなにに限る、どこどこのケーキは最近パティシエの腕が落ちたとかさ~、なんかそういうの得々として喋ってる連中、まあ、主に家族なんだけどさ。
そういう人達が優雅にお茶の時間をお楽しみの所で
『あら、私の今のイチオシは〈弾けるキャンディーボムパッチ〉ですのよ~オホホ』
とかやるの」
「悪いんだ~」
そこでラナはなんとなく気になっていたことを聞いてみる。
「そんなんで特別クラスで上手くやっていけるの?」
「そこはそれ用の私がちゃんと話を合わせて上手くやってるわよ」
「まあ、そうよね」
ラナはフッと溜め息を吐いた。
「私はさ、カトレアって柄じゃないのよね。公立学校の方が合ってたんじゃないかな~って。正直トレンドについて行くのも大変で、って、・・・ちょっと~話きいてる~?」
ガブリエラは飴をビヨ~ンと伸ばしている。
「てかさ、ガブリエラ。
その飴ってトイレの芳香剤みたいな匂いするんだけど」
「酷~い」
ハハハと声を立てて笑っていると、ラナも『まあ、どうでもいいか~』という気持ちになってきた。
それからまた数日経って、メグがテレンスからの手紙を渡して来た。
~女の子も色々大変なんだね。
君は男同士の関係はサッパリしてて、喧嘩しても殴り合って決着つけたら後腐れなし!なんて思ってたりする?
そんなこと全然ないよ。
意外とグチャグチャしてるし、そうだな、嫉妬って言ったら男の方が酷いかもよ。
リバティは自由な校風だし、基本的には他人のすることには口を出さないんだけどさ、成果、とか、功績、とかってことに異常に拘る人も一定数はいるんだよね。
主に高級官僚を目指してるような奴等にとっては法科大学校とか西部第一大学とかに入れるかどうかってのが直近の懸念事項なわけ。
リバティはエリート校には違いないんだけど、全員が希望の大学とか専攻に進学できるわけじゃないからね。そこには普段の成績も深く関係してくるわけよ。
それで足の引っ張り合い、とか、イジメとか嫌がらせ、なんてこともあるんだよ。
まあ、人間やってる以上どこに行ってもある程度仕方が無いのかも知れないよね。悲しいけど。
それでもさ、友情ってのは確かに存在するし助けられることも多いよ。
悪い奴と良い奴がいるっていうよりは、合う奴と合わない奴がいるって考えた方が気が楽だし、
悪い奴とか良い奴がいるっていうよりも、同じ一人の人間が良い時も悪い時もあるって、僕はそう思ってんだけどね。
女の子が、どっちの方が可愛い?なんて競ってるのは僕から見たら罪が軽いって思っちゃう。ムカついたらゴメン。
女の子達は将来奥様になった時に今度は奥様同士で牽制し合わなくっちゃいけないだろう?
ウチの母さんもやってるよ。
女の子達はその為の練習を学校でしてるのかもよ?~
いつもと変わらず四人でランチを食べて、当たり障りのない話をして笑って過ごした。
実際に何事も無くて、心にちょっとした蟠りを感じているのはラナだけなのかもしれなかった。
~女の子同士の付き合いって、楽しいけどちょっと面倒くさいところもあるのよ。
見た目一つとってもね。
男の子は、「女の子は自分より見劣りする子を側に置きたがるんだろ?」なんて思っていそうだけれど、そうでもないのよ。
「自分がどういう娘たちと仲良しで、どういうグループにいるか」
っていうのが重要なわけ。
だからブスでダサい女の子と友達になりたいって人は少ないの。
だって、そういう子と一緒にいるってことは自分もそのランクって周りに見られるってことだから。
特にうちの学校は派手で華やかだからファッションには気を使うわ。
オシャレで可愛い子達と同類って思われたいから皆必死なの。
かと言って目立ち過ぎちゃダメなのよ。
「あの子、自分のこと相当美人だと思ってるよね~?大したことないのに」
なんて言われちゃう。
ただし、飛び抜けて美人の場合はこれには該当しないわ。
もう最初から負けが決まってるから、皆がチヤホヤと讃美するの。
本心はわからないけど。
くだらないって思うでしょ?
でも、そんな中で神経を尖らせながらちょっとした言葉の端々や、表情の変化を読み取って上手くやらないと、次の日から突然口を利いてもらえなくなったりするんだ。
どこで間違えたのか、さっぱり分からないけど~
一週間ぶりに駄菓子屋に行ったらガブリエラがベンチに腰掛けて伸びる飴を食べていた。
ラナが隣に腰掛けると、
「会いたいと思ってたのよね」
とガブリエラが言う。
「何か用事でも?」
「別に何もないよ」
ガブリエラはベタベタした指をラナのシャツで拭く動作をして笑った。
「約束も何にもしないで、会いたいな~って思ってる時に偶然会えると運命感じちゃったりしない?
会うべくして会ったんだ、とか」
『ガブリエラが私に会いたいな~なんて思ってくれるんだ』
ラナは照れたような泣きたいような気持ちを誤魔化して、
「なんかすっごい匂いなんだけど」
とガブリエラが口からビヨ~ンと引っ張っているものを見ながら言った。
「何の匂いする?」
「・・・イチゴかな?」
「イチゴって思うよね?私もそう思った。
でもさ、本物のイチゴって、こんな匂いするぅ~?」
「・・・・しない」
「ほら!」
「何!また、その問答?」
ガブリエラはヒャッヒャと笑っている。
「ガブリエラはどうして駄菓子なんか食べてるの?
高級品ばかり食べ過ぎて舌と脳がバグった?」
「・・・バグ・・・まあ、そうかもね。普通に美味しいと思うんだけどさ、まあ、反抗的な気持ちが無いわけでもないかな」
「反抗・・・食べ物で?」
「お茶はどこ産のなにに限る、どこどこのケーキは最近パティシエの腕が落ちたとかさ~、なんかそういうの得々として喋ってる連中、まあ、主に家族なんだけどさ。
そういう人達が優雅にお茶の時間をお楽しみの所で
『あら、私の今のイチオシは〈弾けるキャンディーボムパッチ〉ですのよ~オホホ』
とかやるの」
「悪いんだ~」
そこでラナはなんとなく気になっていたことを聞いてみる。
「そんなんで特別クラスで上手くやっていけるの?」
「そこはそれ用の私がちゃんと話を合わせて上手くやってるわよ」
「まあ、そうよね」
ラナはフッと溜め息を吐いた。
「私はさ、カトレアって柄じゃないのよね。公立学校の方が合ってたんじゃないかな~って。正直トレンドについて行くのも大変で、って、・・・ちょっと~話きいてる~?」
ガブリエラは飴をビヨ~ンと伸ばしている。
「てかさ、ガブリエラ。
その飴ってトイレの芳香剤みたいな匂いするんだけど」
「酷~い」
ハハハと声を立てて笑っていると、ラナも『まあ、どうでもいいか~』という気持ちになってきた。
それからまた数日経って、メグがテレンスからの手紙を渡して来た。
~女の子も色々大変なんだね。
君は男同士の関係はサッパリしてて、喧嘩しても殴り合って決着つけたら後腐れなし!なんて思ってたりする?
そんなこと全然ないよ。
意外とグチャグチャしてるし、そうだな、嫉妬って言ったら男の方が酷いかもよ。
リバティは自由な校風だし、基本的には他人のすることには口を出さないんだけどさ、成果、とか、功績、とかってことに異常に拘る人も一定数はいるんだよね。
主に高級官僚を目指してるような奴等にとっては法科大学校とか西部第一大学とかに入れるかどうかってのが直近の懸念事項なわけ。
リバティはエリート校には違いないんだけど、全員が希望の大学とか専攻に進学できるわけじゃないからね。そこには普段の成績も深く関係してくるわけよ。
それで足の引っ張り合い、とか、イジメとか嫌がらせ、なんてこともあるんだよ。
まあ、人間やってる以上どこに行ってもある程度仕方が無いのかも知れないよね。悲しいけど。
それでもさ、友情ってのは確かに存在するし助けられることも多いよ。
悪い奴と良い奴がいるっていうよりは、合う奴と合わない奴がいるって考えた方が気が楽だし、
悪い奴とか良い奴がいるっていうよりも、同じ一人の人間が良い時も悪い時もあるって、僕はそう思ってんだけどね。
女の子が、どっちの方が可愛い?なんて競ってるのは僕から見たら罪が軽いって思っちゃう。ムカついたらゴメン。
女の子達は将来奥様になった時に今度は奥様同士で牽制し合わなくっちゃいけないだろう?
ウチの母さんもやってるよ。
女の子達はその為の練習を学校でしてるのかもよ?~
30
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。
石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。
ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。
そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。
真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。
気まぐれな婚約者に振り回されるのはいやなので、もう終わりにしませんか
岡暁舟
恋愛
公爵令嬢ナターシャの婚約者は自由奔放な公爵ボリスだった。頭はいいけど人格は破綻。でも、両親が決めた婚約だから仕方がなかった。
「ナターシャ!!!お前はいつも不細工だな!!!」
ボリスはナターシャに会うと、いつもそう言っていた。そして、男前なボリスには他にも婚約者がいるとの噂が広まっていき……。
本編終了しました。続きは「気まぐれな婚約者に振り回されるのはいやなので、もう終わりにします」となります。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
婚約破棄は計画的に。
秋月一花
恋愛
「アイリーン、貴様との婚約を――」
「破棄するのですね、かしこまりました。喜んで同意致します」
私、アイリーンは転生者だ。愛読していた恋愛小説の悪役令嬢として転生した。とはいえ、悪役令嬢らしい活躍はしていない。していないけど、原作の強制力か、パーティー会場で婚約破棄を宣言されそうになった。
……正直こっちから願い下げだから、婚約破棄、喜んで同意致します!
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる