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14 時には愚痴りたい時もあるさ

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 翌日はまた何もなかったかのように過ぎていった。
 いつもと変わらず四人でランチを食べて、当たり障りのない話をして笑って過ごした。
 
 実際に何事も無くて、心にちょっとした蟠りを感じているのはラナだけなのかもしれなかった。

~女の子同士の付き合いって、楽しいけどちょっと面倒くさいところもあるのよ。

 見た目一つとってもね。

 男の子は、「女の子は自分より見劣りする子を側に置きたがるんだろ?」なんて思っていそうだけれど、そうでもないのよ。

 「自分がどういう娘たちと仲良しで、どういうグループにいるか」
 っていうのが重要なわけ。

 だからブスでダサい女の子と友達になりたいって人は少ないの。

 だって、そういう子と一緒にいるってことは自分もそのランクって周りに見られるってことだから。

 特にうちの学校は派手で華やかだからファッションには気を使うわ。

 オシャレで可愛い子達と同類って思われたいから皆必死なの。


 かと言って目立ち過ぎちゃダメなのよ。

「あの子、自分のこと相当美人だと思ってるよね~?大したことないのに」

 なんて言われちゃう。

 ただし、飛び抜けて美人の場合はこれには該当しないわ。

 もう最初から負けが決まってるから、皆がチヤホヤと讃美するの。
 本心はわからないけど。

 くだらないって思うでしょ?

 でも、そんな中で神経を尖らせながらちょっとした言葉の端々や、表情の変化を読み取って上手くやらないと、次の日から突然口を利いてもらえなくなったりするんだ。

 どこで間違えたのか、さっぱり分からないけど~



 一週間ぶりに駄菓子屋に行ったらガブリエラがベンチに腰掛けて伸びる飴を食べていた。

 ラナが隣に腰掛けると、

「会いたいと思ってたのよね」

 とガブリエラが言う。

「何か用事でも?」

「別に何もないよ」

 ガブリエラはベタベタした指をラナのシャツで拭く動作をして笑った。

「約束も何にもしないで、会いたいな~って思ってる時に偶然会えると運命感じちゃったりしない?
 会うべくして会ったんだ、とか」


 『ガブリエラが私に会いたいな~なんて思ってくれるんだ』

 ラナは照れたような泣きたいような気持ちを誤魔化して、

「なんかすっごい匂いなんだけど」

 とガブリエラが口からビヨ~ンと引っ張っているものを見ながら言った。

「何の匂いする?」

「・・・イチゴかな?」

「イチゴって思うよね?私もそう思った。
 でもさ、本物のイチゴって、こんな匂いするぅ~?」

「・・・・しない」

「ほら!」

「何!また、その問答?」

 ガブリエラはヒャッヒャと笑っている。

「ガブリエラはどうして駄菓子なんか食べてるの?
 高級品ばかり食べ過ぎて舌と脳がバグった?」

「・・・バグ・・・まあ、そうかもね。普通に美味しいと思うんだけどさ、まあ、反抗的な気持ちが無いわけでもないかな」

「反抗・・・食べ物で?」

「お茶はどこ産のなにに限る、どこどこのケーキは最近パティシエの腕が落ちたとかさ~、なんかそういうの得々として喋ってる連中、まあ、主に家族なんだけどさ。
 そういう人達が優雅にお茶の時間をお楽しみの所で
 『あら、私の今のイチオシは〈弾けるキャンディーボムパッチ〉ですのよ~オホホ』
 とかやるの」

「悪いんだ~」
 
 そこでラナはなんとなく気になっていたことを聞いてみる。

「そんなんで特別クラスマドンナリリーで上手くやっていけるの?」

「そこはそれ用の私がちゃんと話を合わせて上手くやってるわよ」

「まあ、そうよね」

 ラナはフッと溜め息を吐いた。

「私はさ、カトレアって柄じゃないのよね。公立学校の方が合ってたんじゃないかな~って。正直トレンドについて行くのも大変で、って、・・・ちょっと~話きいてる~?」

 ガブリエラは飴をビヨ~ンと伸ばしている。

「てかさ、ガブリエラ。
その飴ってトイレの芳香剤みたいな匂いするんだけど」

「酷~い」

 ハハハと声を立てて笑っていると、ラナも『まあ、どうでもいいか~』という気持ちになってきた。



 


 それからまた数日経って、メグがテレンスからの手紙を渡して来た。

~女の子も色々大変なんだね。
 君は男同士の関係はサッパリしてて、喧嘩しても殴り合って決着つけたら後腐れなし!なんて思ってたりする?

 そんなこと全然ないよ。
 意外とグチャグチャしてるし、そうだな、嫉妬って言ったら男の方が酷いかもよ。

 リバティは自由な校風だし、基本的には他人のすることには口を出さないんだけどさ、成果、とか、功績、とかってことに異常に拘る人も一定数はいるんだよね。

 主に高級官僚を目指してるような奴等にとっては法科大学校とか西部第一大学とかに入れるかどうかってのが直近の懸念事項なわけ。
 リバティはエリート校には違いないんだけど、全員が希望の大学とか専攻に進学できるわけじゃないからね。そこには普段の成績も深く関係してくるわけよ。
 それで足の引っ張り合い、とか、イジメとか嫌がらせ、なんてこともあるんだよ。

 まあ、人間やってる以上どこに行ってもある程度仕方が無いのかも知れないよね。悲しいけど。

 それでもさ、友情ってのは確かに存在するし助けられることも多いよ。

 悪い奴と良い奴がいるっていうよりは、合う奴と合わない奴がいるって考えた方が気が楽だし、
悪い奴とか良い奴がいるっていうよりも、同じ一人の人間が良い時も悪い時もあるって、僕はそう思ってんだけどね。

 女の子が、どっちの方が可愛い?なんて競ってるのは僕から見たら罪が軽いって思っちゃう。ムカついたらゴメン。

 女の子達は将来奥様になった時に今度は奥様同士で牽制し合わなくっちゃいけないだろう?
 ウチの母さんもやってるよ。
 女の子達はその為の練習を学校でしてるのかもよ?~

 
 
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