嵐は突然やってくる

白うさぎ

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第三章 二人の距離

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「廉ちゃん、百々ちゃんから聞いたよ~!苺の汁飲めたんだって?」
「・・・・」
「すごいね!甘かったでしょ?」
直人さんと母親が病室に入ってきて頭を撫でながらいう。
「次はぶどうジュース飲んでみようか!おいしいの持ってくるよ。」
「・・・・」
百々に無理やりスプーンで飲まされただけなんだけど。
「廉くん。おうち帰るためにご飯食べれるようにならないといけないんだけど頑張ってくれる?」
「・・・」
窓の外を見たまま反応をしない。
「廉ちゃん、びっくりしたわね・・・。いっぱい怖い事あったもんね。痛かったね。」
そう言って抱きしめてくる母親。
今回は俺も相当ダメージを食らっているのか、涙も出ないし何の感情もわかない。
「また来るわね。」
「点滴だけはさせてね。」
そう言って点滴を変えて帰って行った。


1週間たった日。
「廉ちゃん!!おはよ!!」
「・・・」
「いい加減目線くらい合わせなさいよ!!」
そう言って百々にほっぺを引っ張られた。
「こっち見るくらいできるでしょ!?」
そう言って手加減なしだ・・・。
痛い・・・。
痛みで少しウルウルした目で百々を見ると百々が二ィっと笑った。
「廉ちゃん屋上行かない?ママたちから許可もらった!車いす乗って!」
そう言って部屋の外から車いすを取ってきた百々。
「部屋の中ばっかにいると気がめいってくるでしょ?」
「・・・・」
「少し肌寒いからね。」
そう言って上着を羽織らされて膝には小さい毛布を掛けられた。

屋上に来ると快晴で少し肌寒いが気持ちのいい風が吹いていた。
「気持ちいぃ~!!!」
「・・・・」
「廉ちゃん痩せたから寒いでしょ。」
「・・・」
「翔さん、今ほとんど家に帰ってきてないの。仕事場に泊まりこんでるみたいだよ。文さんとかいう人がこの間直人さんに翔さんの状況を話しにきたときに言ってた。」
「・・・・」
「反省はしてるみたいですって言ってたけど。」
そう言ってこちらを見る百々。
「廉ちゃんの場合、気持ちの問題だけじゃないもんね・・・」
そう。俺の場合は許したい気持ちが強くても体が発作を起こし拒否をする可能性だってあるのだ。
「難しいね。人と人って。人間って不器用だし、体は正直だし。」
「・・・。」
「翔さんも不器用だから仕事に打ち込んでるのかな」
「・・・・。」
しばらく雲の形がハートだ!なんていう百々の独り言を聞きながら空を見つめていた。
「そろそろ帰ろうか。廉ちゃん久々の外気持ちよかったでしょ?また来ようね」
百々に車いすを押されて病室に戻った。

「うわ!なにこれ!!」
病室に戻るときれいな花束がおいてあった。
「olive一同。誰かお見舞いに来てくれたのかな?」
でも俺は気づいていた。部屋にかすかに翔さんのにおいがしたことに。
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