【完結】ざまぁは待ってちゃ始まらない!

紫蘇

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【おまけ】第27騎士団、集合!

政争とビゼーの秘密

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ビゼーは実家に戻った。

元々使用人が多い家では無かったが、自分が第1騎士団にいた時より寂れている気がした。
門をくぐり、玄関の扉を叩く。
迎えに出てくる者はおらず、仕方なく自分で扉を開けて中へ入る。

父親の書斎に行くと、そこには誰もいない。
もしかしたら…と庭に行けば、そこで剣を振る父親の姿があった。

「父上!」
「おお、久し振りだなビゼー」
「…父上、お元気そうで何より…」

すると父親はビゼーの言葉を制して、言った。

「…汗を流したら、井戸の水を飲む。
 これが最も健康に良い」
「父上、それは…」
「気が付かなくて、済まなかった。
 頑強の能力が強いのも善し悪し…だな」
「まさか、ようやく毒に気付いたのですか?」

毒に対して超鈍感な父親は、ビゼーがいる間ずっと「毒など入っているか?」と言い続けてきた。

これを食べるとお腹が痛くなる…という言葉に「だったらこっちを食べなさい」と言って自分の料理と交換してくれる、優しい父親ではあるのだが。

「小さい頃は「こうして能力を伸ばす訓練をしているのだ」と思っていたのですが…」
「すまん…。
 しかし飯ではなく、茶だったぞ」
「いや、飯にも入っていましたよ」
「何っ!?」

父親は、伴侶の事を一瞬案じた。
だが…

「…あいつも頑強持ちだからなぁ~」
「家族全員が毒に強いとは、誰も思わなかったのでしょうな」

ビゼーの家族は特殊だ。
何が、というと、一家全員が「頑強」能力を持っており、そこそこの毒でも大して効かないのだ。
蓄積してどうこう…という事も無い。

だから、父の伴侶は今もピンピンしている。
心配する事自体、あまり意味がない…
ただ父の「伴侶への愛」を無意識に表現してはいるが。

「しかし父上が気づいたという事は、ついに猛毒を盛られましたか?」
「いや、使用人に暇を出したら、体の調子が良くなったから気づいた」
「そういう事でしたか…どうして首に?」
「いや、向こうから辞めたいと言ったんだ。
 俺は引き留めなかっただけさ」

自分のいないうちに、毒の量がエスカレートしていたのかもしれない…
盛っても盛っても死なないから、逆に犯人側が恐ろしくなったのだろう。

「皆して金のある家で働きたいと言いだしたものだから最初は戸惑ったがな。
 今更新しい使用人を雇う気にもならんし…」

子どもたちは全員独立して、家の中には二人だけ。
だったらいっそ二人きりの生活を楽しもう…と言う事になったのだ、と父。

結婚してもう30年以上が経つのに、仲の良ろしい事で…と、ビゼーは苦笑した。

***

父の素振りに付き合って屋敷の中へ戻ると、もう一人の父親が帰ってきた。
どうやら買い物に行っていたらしい。

「お父様、お久しぶりです」
「やぁビゼー!元気そうだ、今度の上司はいい人かい?」
「ええ、良い方ですし尊敬できる方です」
「そうか、それは良かった!」

荷物を台所へ降ろし、今日はクリームシチューだよ!と言いながら料理を始める父親。
ビゼーはその父親に、王宮で見てきた事を全て話し、一体何があったのかと聞いた。

「魔術師領主が、中央に寄生し始めたんだ。
 領地経営より国家運営の方が楽だと思ったみたいでね」
「は?」

何を言ってるのかな?
領地経営より国家運営の方が楽?

「魔法を使った領地経営ってさ、初代の領主と同じだけの魔法が使えないと出来ないんだよね。
 でも、国家運営ってなったら、領主やその家族だけじゃなくて魔術塔の力も使えるでしょ?」
「……はぁ」
「だから、初代ほどじゃないのがこぞって息子を送り込んだり自分が乗り込んだり…」
「奴ら頭にクソでも詰まっているのですか?」
「はは、糞ならまだ肥料にはなるよね~」

その勢いが、ここ2年程で加速したらしい。
そして、王妃様がお亡くなりになったのは1年前。
王と第二王子は馬鹿みたいに泣き叫んだくせに、翌日から女漁りを再開した…と、

「待ってください、父様。
 第二王子殿下は、まだ中等部…」
「うん、だから下半身に忠実だよね。
 経験豊富な人妻が好きでね、そんな所も父親に似たのかなって裏で嘲笑わらわれてる。
 僕は自分の出世の為に妻を差し出す人間の方も大概だと思うけどね~」

王家の…いや、貴族の爛れ具合に、頭が痛くなる。
中等部の子どもを諌める者も居ないとは…
そうだ、兄であるリブリー殿下は、何故それを咎めないんだ?

「……リブリー殿下は」
「立派に葬儀を仕切ってた。
 王妃様が亡くなってからは派閥の力も小さくなって…それでも学園の経営権だけは手放してない。
 そもそも金食い虫の教育機関は誰も欲しがらないみたいでさ…馬鹿ばかり増えるよ、っと。
 …よし、後は暫く煮込むだけ…、あっ、ちょっと炒めてからだっけ?水入れちゃった…ま、いっか」
「……」
「リブリー殿下はね、第二王子も、王子に妻を差し出す貴族も繰り返し諫めていたんだけどね。
 護衛の騎士が第二王子の魔法で大やけどを負って…
 そこからは、何も言えなくなった」
「…そうでしたか」
「その騎士たちも、そのやけどを魔法で治してもらったからって第二王子派に付いたよ。
 だからもう、仕方ないんじゃない?
 何を言ってもさ…諦めちゃったみたい」
「…そう、でしたか」

こっちの父は元諜報員だ。
噂話を集める程度なら朝飯前…
料理はそうもいかないらしいが。

「まあ、安心材料になるか分からないけど、僕の後輩はみんなリブリー殿下に付いたよ」
「なんと…それは心強い!」
「あんな下半身ゆるゆる親子のケツなんか拭いてられないもんね~。
 分かるわぁ」

それは醜聞を消して回る気も失せました…という事ですよね?
つまり、ここからは王と第二王子の評判は地に落ちる一方という事で…
2人を支持している魔法持ち貴族と国民の間の溝がより深まる、という事で、
このまま行くと…

ああ、ただでさえ、最近妙に魔物が活性化しているというのに!
第2騎士団の連中も「王都周辺の魔物の討伐でもしてろ」と煽っているぐらいなのに!

「ああ、後ねぇ。
 学園でキャンディッシュの長男と仲よくしてるみたいよ」
「キャンディッシュの?」
「…ああ、随分と遊び歩いているらしい子」

キャンディッシュ家と言えば、今まで品行方正・質実剛健を絵にかいたような家風で、魔法が使えない貴族たちの筆頭であり、彼らの中では最も中央に顔が利く家…

だったが、最近では会議でも末席に置かれる事が多く、魔法が絡む事になると退出すら命じられる事もあるそうだ。

「落ち目のキャンデッシュ」

そう呼ばれる事も少なくない。
そのキャンディッシュ家に第一王子が近づくメリットは…正直、無いに等しい、が…。

「そういうのを越えた友情ってやつじゃない?
 彼と一緒にいるリブリー殿下は、年相応に見えるからね」
「…つまり殿下は孤独ではない、と言う事ですね」
「うん、そうだね。
 それにそのキャンデッシュの子、街で遊んだ相手に『王と第二王子は超クズ、リブリー殿下はあんなにも立派なのに』って、王宮の内情を面白おかしく話して回ってる…計算かどうかはともかく、貴族が話す事だから信憑性もあるでしょ?
 あれで天然なら、印象操作の達人だよね」

そう言って父親はニッコリ笑った。
まるでリブリー殿下はここで終わる人間ではない、と知っているかのように…。


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