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向かえ!大団円
隠し事色々
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キャンディッシュ邸を奪還し、俺は倉庫の備蓄に「鑑定」を黙々と掛け続け……。
そんな俺の姿を見て、怒っていると思ったらしいシドさんとニールが気まずそうに言った。
「すまん、騙すつもりは無かったんだ」
「ごめんねロンバード」
「…いや、別にいい…んだけど、トリル叔父さんはどこへ?」
「王都のキャンディッシュ邸。
フランネルもエバンスもいるから安全だし」
別に怒ってはいない。
ただモヤモヤするだけだ。
「何がどうなってるのか説明して欲しいんだけど?
っていうか、ブレックさん…あの意味深な発言と何か関係ある?」
「えっ、私ですか」
「そうですよ!『傭兵だといいですね』って、どういう事なんですか?」
「いや、私は『そういうことにしておきましょう、今は』って言っただけですよ」
「似たようなもんじゃないですか」
ここ俺の実家なのに、俺の知らない事態が起こり過ぎなんですけど。
「私にも説明して貰いたいですな。
ロンバード殿の護衛隊長は私ですぞ」
「すみませんスミス殿、その…」
「ごめん、僕が言わないでって言ったんだ。
まだ確定の情報でも無かったし、その…」
「とにかく説明して。」
俺と同じく蚊帳の外に置かれたスミスさんと一緒に、2人に圧をかける。
ちなみにヨークさんは倒れている敵さんを目が覚めた使用人さんと一緒に片付けている最中だ。
「…ここまで関わったら、ヨークさんにも聞いて貰った方がいいよね」
「それは、……そうだな」
***
片付けや毒入り備蓄の処分、在庫確認等諸々の事は執事に任せて、俺たちは応接室に集まった。
茶を淹れてくれる人もいないので、台所から適当にカップとポットと茶葉を持ち出し、いつも通り魔法で熱湯を作って注ぐ。
「いつもながら便利だよね、それ」
「うん、ありがとう」
ニールもちょっとこの魔法の事が知りたいみたいだけど、一度セジュールに釘を刺されているからやんわりと逃げる。
「…教えてくれないの?」
「サリュール先輩にもそう言われたけど、断ったからさ。
それよりどうしてニールがここにいるのか教えて欲しいんだけど」
「ああ、うん…本当に申し訳ない話なんだけどさ……。」
ニールは「まだオーセン王家にも言ってないんだけど」と前置きして、申し訳なさそうに話し始めた。
「結論から言うね。
僕の兄が、バレン・ロフィーシュを支援しているらしいんだ…はっきりさせると戦争になりかねないから、多少ぼかさせてもらうけど」
「ええっ…なにゆえ?」
「僕がこの国への留学で大きな功績をあげたもんだから、焦ってるんだ。
だからバレン・ロフィーシュを使って、ロンバードの能力をロンバードごと手に入れようとしてる」
ニールのお兄さんは、バレン・ロフィーシュにオーセンの玉座を手に入れさせた後、2国間だけの強力な同盟関係を築こうとしている……らしい。
おまけに、失敗した場合にも亡命を受け入れると裏で契約している……らしい。
勿論、俺を婿(嫁?)にして連れて来る事を条件に。
「元々ね、兄上が『ロンバードに取り入って色々と吹き込んで、ダリル殿との結婚に不安を抱かせてうちの国に亡命させる』っていう、成功率の低そうな回りくどい作戦を立てて、僕に押し付けたんだよね。
そうして僕を排除しようとしたわけ。
僕はそれを重々承知の上で、ロンバードの友人になることを選んだんだ。
兄上が皇帝になる為に努力してるのを知ってたから、僕としては「そうする事で」恭順な態度を示せて一石二鳥…の、つもりだったんだけど」
…作戦は確かに頓挫した。
だけど、いくらかの魔法道具を開発させたりすることには成功している。
名を捨てて実を取る…じゃないけど、友人の座に収まることによって成果は上げられている…
「兄と兄の派閥は『作戦が成功していない以上成果をあげたとは言えない』って散々言うんだけど。
でも、通信用腕輪を開発してもらったのと、食糧問題解決の糸口をもらった事で、各部族と皇族の関係が改善してきているのも事実でね。
僕を推す派閥の声が大きくなってしまったんだ…」
そう言って、ちょっとしょんぼりした態度を取るニール。
ふむ…なるほど。
「…ニールは、皇帝になりたくないの?」
「うん、だって大変だし恨まれるし。
だけど民の事は大事だから、ロンバードの『魔法のあれこれ』はどうしても欲しかったし、魔法を使えない者の筆頭として踏ん張らなきゃいけないから」
ニールが言うには、ドラークでは今、オーセンの「前王の時代」に近い事が起きそうになってるんだそうだ。
「魔法が使える事を盾にして、色んな特権を欲しがってる連中がいる。
オーセンの魔術塔みたいなところがドラークにもあるんだけど、そこの奴らが中心になって権力を握ろうとしているんだ…『魔法で守って欲しければいう事を聞け』ってね」
「どこの国でもそういう人が出るんだね」
「そう、困ったもんだよ」
だから学園では、魔法を使える人間を制御するやり方を学んでいるんだ、とニール。
確かに我が国はその方面で一歩進んでるからな…。
多大なる犠牲を払ったおかげでね。
「まあ、そういう可能性も無いわけじゃ無いから、僕としても見過ごすわけにはいかないんだ。
だから異能を使ってトリル殿になりすましてここにいた」
「なるほど」
どうやら俺は転売問題だけじゃなくて、他国のいざこざにも巻き込まれているらしい。
「面倒な事になってきたなぁ…」
元はと言えば、俺が魔法の飴をホイホイ配ったからなんだろうけど…
もうすぐ量産できるようになるかもよ、って言ったら、一体どうなっちゃうんだろう。
そんな俺の姿を見て、怒っていると思ったらしいシドさんとニールが気まずそうに言った。
「すまん、騙すつもりは無かったんだ」
「ごめんねロンバード」
「…いや、別にいい…んだけど、トリル叔父さんはどこへ?」
「王都のキャンディッシュ邸。
フランネルもエバンスもいるから安全だし」
別に怒ってはいない。
ただモヤモヤするだけだ。
「何がどうなってるのか説明して欲しいんだけど?
っていうか、ブレックさん…あの意味深な発言と何か関係ある?」
「えっ、私ですか」
「そうですよ!『傭兵だといいですね』って、どういう事なんですか?」
「いや、私は『そういうことにしておきましょう、今は』って言っただけですよ」
「似たようなもんじゃないですか」
ここ俺の実家なのに、俺の知らない事態が起こり過ぎなんですけど。
「私にも説明して貰いたいですな。
ロンバード殿の護衛隊長は私ですぞ」
「すみませんスミス殿、その…」
「ごめん、僕が言わないでって言ったんだ。
まだ確定の情報でも無かったし、その…」
「とにかく説明して。」
俺と同じく蚊帳の外に置かれたスミスさんと一緒に、2人に圧をかける。
ちなみにヨークさんは倒れている敵さんを目が覚めた使用人さんと一緒に片付けている最中だ。
「…ここまで関わったら、ヨークさんにも聞いて貰った方がいいよね」
「それは、……そうだな」
***
片付けや毒入り備蓄の処分、在庫確認等諸々の事は執事に任せて、俺たちは応接室に集まった。
茶を淹れてくれる人もいないので、台所から適当にカップとポットと茶葉を持ち出し、いつも通り魔法で熱湯を作って注ぐ。
「いつもながら便利だよね、それ」
「うん、ありがとう」
ニールもちょっとこの魔法の事が知りたいみたいだけど、一度セジュールに釘を刺されているからやんわりと逃げる。
「…教えてくれないの?」
「サリュール先輩にもそう言われたけど、断ったからさ。
それよりどうしてニールがここにいるのか教えて欲しいんだけど」
「ああ、うん…本当に申し訳ない話なんだけどさ……。」
ニールは「まだオーセン王家にも言ってないんだけど」と前置きして、申し訳なさそうに話し始めた。
「結論から言うね。
僕の兄が、バレン・ロフィーシュを支援しているらしいんだ…はっきりさせると戦争になりかねないから、多少ぼかさせてもらうけど」
「ええっ…なにゆえ?」
「僕がこの国への留学で大きな功績をあげたもんだから、焦ってるんだ。
だからバレン・ロフィーシュを使って、ロンバードの能力をロンバードごと手に入れようとしてる」
ニールのお兄さんは、バレン・ロフィーシュにオーセンの玉座を手に入れさせた後、2国間だけの強力な同盟関係を築こうとしている……らしい。
おまけに、失敗した場合にも亡命を受け入れると裏で契約している……らしい。
勿論、俺を婿(嫁?)にして連れて来る事を条件に。
「元々ね、兄上が『ロンバードに取り入って色々と吹き込んで、ダリル殿との結婚に不安を抱かせてうちの国に亡命させる』っていう、成功率の低そうな回りくどい作戦を立てて、僕に押し付けたんだよね。
そうして僕を排除しようとしたわけ。
僕はそれを重々承知の上で、ロンバードの友人になることを選んだんだ。
兄上が皇帝になる為に努力してるのを知ってたから、僕としては「そうする事で」恭順な態度を示せて一石二鳥…の、つもりだったんだけど」
…作戦は確かに頓挫した。
だけど、いくらかの魔法道具を開発させたりすることには成功している。
名を捨てて実を取る…じゃないけど、友人の座に収まることによって成果は上げられている…
「兄と兄の派閥は『作戦が成功していない以上成果をあげたとは言えない』って散々言うんだけど。
でも、通信用腕輪を開発してもらったのと、食糧問題解決の糸口をもらった事で、各部族と皇族の関係が改善してきているのも事実でね。
僕を推す派閥の声が大きくなってしまったんだ…」
そう言って、ちょっとしょんぼりした態度を取るニール。
ふむ…なるほど。
「…ニールは、皇帝になりたくないの?」
「うん、だって大変だし恨まれるし。
だけど民の事は大事だから、ロンバードの『魔法のあれこれ』はどうしても欲しかったし、魔法を使えない者の筆頭として踏ん張らなきゃいけないから」
ニールが言うには、ドラークでは今、オーセンの「前王の時代」に近い事が起きそうになってるんだそうだ。
「魔法が使える事を盾にして、色んな特権を欲しがってる連中がいる。
オーセンの魔術塔みたいなところがドラークにもあるんだけど、そこの奴らが中心になって権力を握ろうとしているんだ…『魔法で守って欲しければいう事を聞け』ってね」
「どこの国でもそういう人が出るんだね」
「そう、困ったもんだよ」
だから学園では、魔法を使える人間を制御するやり方を学んでいるんだ、とニール。
確かに我が国はその方面で一歩進んでるからな…。
多大なる犠牲を払ったおかげでね。
「まあ、そういう可能性も無いわけじゃ無いから、僕としても見過ごすわけにはいかないんだ。
だから異能を使ってトリル殿になりすましてここにいた」
「なるほど」
どうやら俺は転売問題だけじゃなくて、他国のいざこざにも巻き込まれているらしい。
「面倒な事になってきたなぁ…」
元はと言えば、俺が魔法の飴をホイホイ配ったからなんだろうけど…
もうすぐ量産できるようになるかもよ、って言ったら、一体どうなっちゃうんだろう。
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