【完結】ざまぁは待ってちゃ始まらない!

紫蘇

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本気のざまぁを見せてやる!

【ギゼル】西の石碑

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ロンバードは北だっていうのに、強引にカリーナ様に引っ張られて西の端っこへ。

「西に異常がなければ、北へ送っていくから!」
「あのなあ!俺臨月なんだけど!?」
「石碑まで飛ばすわよ!」
「産気づいたら責任とれよ!」

風の音で聞こえないから、お互い声が大きくなる。
別に喧嘩しているわけではない。
そして多分会話はかみ合っていない。

こういう時のための通信具はあるんだが、そんなのいつも持ってるわけじゃない。
なんせ王宮に報告しに行ったその場で拉致られたんだ…
勘弁して欲しい。

港の監視塔が見えた。
そこから見張りが慌てて出ていくのが見えた。
多分この真っ赤なタンデム箒が見えたんだろう…

というか、もう箒の面影ゼロだけどな。
箒の開発チームの人間は全員ここ出身だから、カリーナ様のお乗りになる物に対しては力の入り様が違う。

そんなカリーナ様が飛行ジャケットから何かを取り出す。

「頼むよ!お手紙!!」

いつの間に書いたのか、魔法のお手紙はひらりと舞い落ち…
公爵邸へ向かって一直線に飛んでいった。

***

西の石碑に着いて、魔力集積回路を確認する。
見た処異常は無さそうだが…。

「…流れてる魔力が、若干少ない…?」
「どうした、何か異常があったのか」
「いや、回路自体には異常が無い。
 だからちゃんと機能はしている…あっ!?」
「何だ!?」

石碑の石は簡単に倒れない様に、地面の下に半分埋まっている。
つまり地面の下にも、この石は途切れる事なく続いている…
はず、なんだが…。

「…石碑、誰か動かしたか?」
「は?こんな大きな物、動く訳無いだろ」
「いや、これ…見てみろ」

石碑が地面から少し浮いている。
地面すれすれの部分で石が割れて、土台部分と切り離されている…
つまり。

「…石碑ごと倒しちまえ、って事か」
「くそっ…なんてこった」

魔力集積回路を書いたプレートは、当然ながら魔法による強化が常に効いている。
だから傷つけるとなれば相当の打撃か、相当の魔法を行使する必要がある。
だが…石は。

「…石の方は、動かなければそれで良い。
 そう…思ったんだ」

当時の俺は、石碑の固定に魔法集積回路を使わなかった。
魔力の消費量を抑えるために、物理的な方法で石碑を固定した…

「くそっ、まさか、こんな事する奴が出るなんて…!」

俺は通信用ブレスレットの銀ビーズの一つに触れ、回線を開いた。

「ロンバード!おい、お前が気づいたのって」
<親父ごめん!今、逃走中>
「は!?」
<後でかけ直す!>

…切れた。
…逃走中。
…北の端。

まさか!?

「やばい、あの辺は地竜の縄張りだ。
 空は飛ばないが、とにかく堅くてデカい!」
「は!?竜は東だけじゃないのか」
「北のも竜に見えないけど竜なんだよ!」

地竜はワニガメみたいなフォルムで甲羅があり、とにかく硬くてデカい。
長らく竜だと思われていなかったが、俺は知ってる。

「あいつからは竜玉が出る、だから竜だ。
 倒してひと財産作ったから知ってる」
「何だと!?」

竜はその大きさがヤバい。
口から吐く攻撃ブレスもヤバい。
堅さがヤバい。
執念深さもヤバい。

「そういう事はさっさと発表しろ!」
「発表したけど握りつぶされちまったよ!」

東の竜を倒す前の事だ。
俺たちが竜退治に成功した事になったら都合が悪かったんだろう。

「ロンバードは魔物も殺した事が無い。
 それなのに竜と、だなんて…!」

竜は一度攻撃されると、相手の息の根を止めるまで追って来る。
そうなったらもう殺すしかない…くそっ!

「逃げていると言ったな」
「そうだ、一切の攻撃を加えずに逃げ切るしかない」
「ふむ…ロンバードなら何とでも出来そうな気もするな」
「ロンバードだけならな!」

問題は5人ほど付いてる護衛だ。
一人は連絡要員の魔術師、あとの4人は要人警護の…

くそ、頼りにならねぇな!!

っと、あれは?

「おーい、カリーナ!ギゼル!」
「おふくろ~!!ギゼルさ~ん!」
「お父様!グヴェン!」

…ようやっと援軍が来たか、これで後の事は任せて、俺は北へ…

「…カリーナ様、状況の説明を頼む。
 俺は北の端まで行かなきゃならない」
「分かった、……飛べるか?」
「だましだましでも飛ばなきゃ、間に合わねぇ…!」

実際、空を飛ぶのは体力を使う。
途中でお腹の子が流れちまう可能性だってある。
それでも俺はロンバードを、俺の息子を、守りたい。

何とか重い腹を抱えて、空を飛ぶ姿勢を作ろうとした、その時。

「そうだ…グヴェン!
 ギゼル殿を北端まで運びな、あんたが一番早く飛べる!」
「ええ~!」
「私の箒を使わせてやるから」
「じゃあ行く!ギゼル殿、乗せるぞ!」
「へ?あ、うおお!?」

身重の俺を軽々と抱き上げるグヴェン様。
王都を出る前は可愛らしい男の子だったのに、たった数年ですっかり海の男になっちまった。

もしや、海に漂ってる魔力にはプロテイン的要素でもあるのか?などと下らない事を考えながら…

俺はカリーナ様の箒にもう一度載せられて、グヴェン様の操縦で北へと飛んだ。

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