101 / 218
本気のざまぁを見せてやる!
魔術師は結婚を断りたい 2
しおりを挟む
王都を出て1ヶ月。
ようやく俺はオーセン北端の村へ到達した。
馬車の旅はやっぱり時間がかかる。
でも護衛の人たちは空を飛べないから、地道で行くしかない…
それに、道中で色んな人と会えるしね。
「しかし、村の診療所で治療できない人は、町の病院を紹介してもらうって出来ないかな…」
「どうされたんです、急に?」
「今まで医療施設を訪ねてきて思ったんです。
小さな診療所には大きな器具を置く場所が無いなって」
魔術師ギルドから治癒師が派遣されるにしても、ギルドは各領に一つしかない。
派遣までに時間がかかり過ぎて、手遅れになる可能性もある。
俺がそう説明すると、護衛の人が言った。
「確かにそれはそうですが、移動にも入院にも金がかかります。
そうなりますと、やはり金のある者しか治療できない事になりませんか」
「うーん…となると、小さな診療所にはいざという時の自己治癒魔法の呪文書を配布するか…」
魔力が無い人は居ない。
魔力欠乏症って病気があるくらいだから、大抵の人は持ってる。
外に出せないぐらい少ないだけで。
だけど、それが正解ではない。
喋れない人には詠唱が出来ないから。
「あの腕輪を医者に一本ずつ持たせるのは?」
「それはちょっと…材料も無限じゃないし」
どのブレスレットでも、使っているのは前世で言うところのパワーストーン…そのくらいの値段と希少性のものばかりだけど、このまま量産し続けたら枯渇するかもしれない。
「それに、何でも魔法頼みになるのはまずい。
今までの治療法を無くすべきじゃないし、薬草も活用していかなきゃ駄目だ」
「…治癒魔法で治す方が、簡単ですからね」
「ええ、そこが問題なんです」
俺は訪問した診療所の全てでこう言ってきた。
「俺がこうやって医療施設を回っているのは今の治療法でどうしようもない人を救う為であって、今までのやり方を否定する為じゃありません」
「魔法頼みは神頼み。
もうこれ以上どうしようもない時にしか使わない方がいい」
「魔法に頼り切って本来人間自身に備わってる治癒力が衰えたら、次はもっと大変な病気になる」
魔術師は常に自己治癒魔法が使える。だから大変な病気になろうが自己治癒魔法を使えば簡単に治る。
だけど…。
「魔術師がいつも味方とは…限りませんから」
***
北端の村に着いたらすぐに診療所へ向かう。
ここは魔物のすみかである森が近くにあり、全ての家が壕と壁に囲まれた中にある。
「親父の結界も確認しとかなきゃ…」
「流石ロンバード様のお仕事は幅が広い」
「いやいや、大したことはしませんよ?」
まあ、ここまで異常は無かったから大丈夫だとは思うけど…気の緩みが大惨事なのは世の常だからな。
診療所へ着くと、そこにはすでに多くの人が待ってくれていた。
基本的には「ひと目見てみたい」人が大半だ。
重病患者がそんなに多かったら困る。
人ごみの中から、多分村長さんであろう人と診療所の院長らしき人が歩み出て挨拶をしてくれる。
「お待ちしておりました、ロンバード様」
「わざわざ有難う御座います。
まずは「魔法の飴」転売の被害者がおられないか、確認させて頂けますか」
「はい、誰もおりません。そもそも「魔法の飴」を知る者がおりません」
「ああ…それは良かった!」
転売被害が一番多かったのはやっぱり王都だった。
偽物を掴まされた人もいて、誠心誠意謝罪して治療して、本物の飴を渡して…。
それで、もしもの時は証人になってもらえるように名前や住所、いつどんな人から買ったかを書き留めた。
王都から離れるにしたがって被害者は減り…
もし東でも南でも西でも同じ結果なら、やつらの活動範囲が掴めるかもしれない。
…ともかく、ここには高額で買わされた人がいなくて良かった。
俺は胸をなでおろして、診療所の院長さんに聞いた。
「この村に、診療所の治療で治らない方はいらっしゃいますか?」
「ええ、実はこの子なのですが…」
そう言って院長さんが俺に紹介した子には…
生まれつき、腕が無かった。
ようやく俺はオーセン北端の村へ到達した。
馬車の旅はやっぱり時間がかかる。
でも護衛の人たちは空を飛べないから、地道で行くしかない…
それに、道中で色んな人と会えるしね。
「しかし、村の診療所で治療できない人は、町の病院を紹介してもらうって出来ないかな…」
「どうされたんです、急に?」
「今まで医療施設を訪ねてきて思ったんです。
小さな診療所には大きな器具を置く場所が無いなって」
魔術師ギルドから治癒師が派遣されるにしても、ギルドは各領に一つしかない。
派遣までに時間がかかり過ぎて、手遅れになる可能性もある。
俺がそう説明すると、護衛の人が言った。
「確かにそれはそうですが、移動にも入院にも金がかかります。
そうなりますと、やはり金のある者しか治療できない事になりませんか」
「うーん…となると、小さな診療所にはいざという時の自己治癒魔法の呪文書を配布するか…」
魔力が無い人は居ない。
魔力欠乏症って病気があるくらいだから、大抵の人は持ってる。
外に出せないぐらい少ないだけで。
だけど、それが正解ではない。
喋れない人には詠唱が出来ないから。
「あの腕輪を医者に一本ずつ持たせるのは?」
「それはちょっと…材料も無限じゃないし」
どのブレスレットでも、使っているのは前世で言うところのパワーストーン…そのくらいの値段と希少性のものばかりだけど、このまま量産し続けたら枯渇するかもしれない。
「それに、何でも魔法頼みになるのはまずい。
今までの治療法を無くすべきじゃないし、薬草も活用していかなきゃ駄目だ」
「…治癒魔法で治す方が、簡単ですからね」
「ええ、そこが問題なんです」
俺は訪問した診療所の全てでこう言ってきた。
「俺がこうやって医療施設を回っているのは今の治療法でどうしようもない人を救う為であって、今までのやり方を否定する為じゃありません」
「魔法頼みは神頼み。
もうこれ以上どうしようもない時にしか使わない方がいい」
「魔法に頼り切って本来人間自身に備わってる治癒力が衰えたら、次はもっと大変な病気になる」
魔術師は常に自己治癒魔法が使える。だから大変な病気になろうが自己治癒魔法を使えば簡単に治る。
だけど…。
「魔術師がいつも味方とは…限りませんから」
***
北端の村に着いたらすぐに診療所へ向かう。
ここは魔物のすみかである森が近くにあり、全ての家が壕と壁に囲まれた中にある。
「親父の結界も確認しとかなきゃ…」
「流石ロンバード様のお仕事は幅が広い」
「いやいや、大したことはしませんよ?」
まあ、ここまで異常は無かったから大丈夫だとは思うけど…気の緩みが大惨事なのは世の常だからな。
診療所へ着くと、そこにはすでに多くの人が待ってくれていた。
基本的には「ひと目見てみたい」人が大半だ。
重病患者がそんなに多かったら困る。
人ごみの中から、多分村長さんであろう人と診療所の院長らしき人が歩み出て挨拶をしてくれる。
「お待ちしておりました、ロンバード様」
「わざわざ有難う御座います。
まずは「魔法の飴」転売の被害者がおられないか、確認させて頂けますか」
「はい、誰もおりません。そもそも「魔法の飴」を知る者がおりません」
「ああ…それは良かった!」
転売被害が一番多かったのはやっぱり王都だった。
偽物を掴まされた人もいて、誠心誠意謝罪して治療して、本物の飴を渡して…。
それで、もしもの時は証人になってもらえるように名前や住所、いつどんな人から買ったかを書き留めた。
王都から離れるにしたがって被害者は減り…
もし東でも南でも西でも同じ結果なら、やつらの活動範囲が掴めるかもしれない。
…ともかく、ここには高額で買わされた人がいなくて良かった。
俺は胸をなでおろして、診療所の院長さんに聞いた。
「この村に、診療所の治療で治らない方はいらっしゃいますか?」
「ええ、実はこの子なのですが…」
そう言って院長さんが俺に紹介した子には…
生まれつき、腕が無かった。
73
お気に入りに追加
412
あなたにおすすめの小説
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
婚約破棄される悪役令嬢ですが実はワタクシ…男なんだわ
秋空花林
BL
「ヴィラトリア嬢、僕はこの場で君との婚約破棄を宣言する!」
ワタクシ、フラれてしまいました。
でも、これで良かったのです。
どのみち、結婚は無理でしたもの。
だってー。
実はワタクシ…男なんだわ。
だからオレは逃げ出した。
貴族令嬢の名を捨てて、1人の平民の男として生きると決めた。
なのにー。
「ずっと、君の事が好きだったんだ」
数年後。何故かオレは元婚約者に執着され、溺愛されていた…!?
この物語は、乙女ゲームの不憫な悪役令嬢(男)が元婚約者(もちろん男)に一途に追いかけられ、最後に幸せになる物語です。
幼少期からスタートするので、R 18まで長めです。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる