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本気のざまぁを見せてやる!
魔術師は結婚を断りたい 2
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王都を出て1ヶ月。
ようやく俺はオーセン北端の村へ到達した。
馬車の旅はやっぱり時間がかかる。
でも護衛の人たちは空を飛べないから、地道で行くしかない…
それに、道中で色んな人と会えるしね。
「しかし、村の診療所で治療できない人は、町の病院を紹介してもらうって出来ないかな…」
「どうされたんです、急に?」
「今まで医療施設を訪ねてきて思ったんです。
小さな診療所には大きな器具を置く場所が無いなって」
魔術師ギルドから治癒師が派遣されるにしても、ギルドは各領に一つしかない。
派遣までに時間がかかり過ぎて、手遅れになる可能性もある。
俺がそう説明すると、護衛の人が言った。
「確かにそれはそうですが、移動にも入院にも金がかかります。
そうなりますと、やはり金のある者しか治療できない事になりませんか」
「うーん…となると、小さな診療所にはいざという時の自己治癒魔法の呪文書を配布するか…」
魔力が無い人は居ない。
魔力欠乏症って病気があるくらいだから、大抵の人は持ってる。
外に出せないぐらい少ないだけで。
だけど、それが正解ではない。
喋れない人には詠唱が出来ないから。
「あの腕輪を医者に一本ずつ持たせるのは?」
「それはちょっと…材料も無限じゃないし」
どのブレスレットでも、使っているのは前世で言うところのパワーストーン…そのくらいの値段と希少性のものばかりだけど、このまま量産し続けたら枯渇するかもしれない。
「それに、何でも魔法頼みになるのはまずい。
今までの治療法を無くすべきじゃないし、薬草も活用していかなきゃ駄目だ」
「…治癒魔法で治す方が、簡単ですからね」
「ええ、そこが問題なんです」
俺は訪問した診療所の全てでこう言ってきた。
「俺がこうやって医療施設を回っているのは今の治療法でどうしようもない人を救う為であって、今までのやり方を否定する為じゃありません」
「魔法頼みは神頼み。
もうこれ以上どうしようもない時にしか使わない方がいい」
「魔法に頼り切って本来人間自身に備わってる治癒力が衰えたら、次はもっと大変な病気になる」
魔術師は常に自己治癒魔法が使える。だから大変な病気になろうが自己治癒魔法を使えば簡単に治る。
だけど…。
「魔術師がいつも味方とは…限りませんから」
***
北端の村に着いたらすぐに診療所へ向かう。
ここは魔物のすみかである森が近くにあり、全ての家が壕と壁に囲まれた中にある。
「親父の結界も確認しとかなきゃ…」
「流石ロンバード様のお仕事は幅が広い」
「いやいや、大したことはしませんよ?」
まあ、ここまで異常は無かったから大丈夫だとは思うけど…気の緩みが大惨事なのは世の常だからな。
診療所へ着くと、そこにはすでに多くの人が待ってくれていた。
基本的には「ひと目見てみたい」人が大半だ。
重病患者がそんなに多かったら困る。
人ごみの中から、多分村長さんであろう人と診療所の院長らしき人が歩み出て挨拶をしてくれる。
「お待ちしておりました、ロンバード様」
「わざわざ有難う御座います。
まずは「魔法の飴」転売の被害者がおられないか、確認させて頂けますか」
「はい、誰もおりません。そもそも「魔法の飴」を知る者がおりません」
「ああ…それは良かった!」
転売被害が一番多かったのはやっぱり王都だった。
偽物を掴まされた人もいて、誠心誠意謝罪して治療して、本物の飴を渡して…。
それで、もしもの時は証人になってもらえるように名前や住所、いつどんな人から買ったかを書き留めた。
王都から離れるにしたがって被害者は減り…
もし東でも南でも西でも同じ結果なら、やつらの活動範囲が掴めるかもしれない。
…ともかく、ここには高額で買わされた人がいなくて良かった。
俺は胸をなでおろして、診療所の院長さんに聞いた。
「この村に、診療所の治療で治らない方はいらっしゃいますか?」
「ええ、実はこの子なのですが…」
そう言って院長さんが俺に紹介した子には…
生まれつき、腕が無かった。
ようやく俺はオーセン北端の村へ到達した。
馬車の旅はやっぱり時間がかかる。
でも護衛の人たちは空を飛べないから、地道で行くしかない…
それに、道中で色んな人と会えるしね。
「しかし、村の診療所で治療できない人は、町の病院を紹介してもらうって出来ないかな…」
「どうされたんです、急に?」
「今まで医療施設を訪ねてきて思ったんです。
小さな診療所には大きな器具を置く場所が無いなって」
魔術師ギルドから治癒師が派遣されるにしても、ギルドは各領に一つしかない。
派遣までに時間がかかり過ぎて、手遅れになる可能性もある。
俺がそう説明すると、護衛の人が言った。
「確かにそれはそうですが、移動にも入院にも金がかかります。
そうなりますと、やはり金のある者しか治療できない事になりませんか」
「うーん…となると、小さな診療所にはいざという時の自己治癒魔法の呪文書を配布するか…」
魔力が無い人は居ない。
魔力欠乏症って病気があるくらいだから、大抵の人は持ってる。
外に出せないぐらい少ないだけで。
だけど、それが正解ではない。
喋れない人には詠唱が出来ないから。
「あの腕輪を医者に一本ずつ持たせるのは?」
「それはちょっと…材料も無限じゃないし」
どのブレスレットでも、使っているのは前世で言うところのパワーストーン…そのくらいの値段と希少性のものばかりだけど、このまま量産し続けたら枯渇するかもしれない。
「それに、何でも魔法頼みになるのはまずい。
今までの治療法を無くすべきじゃないし、薬草も活用していかなきゃ駄目だ」
「…治癒魔法で治す方が、簡単ですからね」
「ええ、そこが問題なんです」
俺は訪問した診療所の全てでこう言ってきた。
「俺がこうやって医療施設を回っているのは今の治療法でどうしようもない人を救う為であって、今までのやり方を否定する為じゃありません」
「魔法頼みは神頼み。
もうこれ以上どうしようもない時にしか使わない方がいい」
「魔法に頼り切って本来人間自身に備わってる治癒力が衰えたら、次はもっと大変な病気になる」
魔術師は常に自己治癒魔法が使える。だから大変な病気になろうが自己治癒魔法を使えば簡単に治る。
だけど…。
「魔術師がいつも味方とは…限りませんから」
***
北端の村に着いたらすぐに診療所へ向かう。
ここは魔物のすみかである森が近くにあり、全ての家が壕と壁に囲まれた中にある。
「親父の結界も確認しとかなきゃ…」
「流石ロンバード様のお仕事は幅が広い」
「いやいや、大したことはしませんよ?」
まあ、ここまで異常は無かったから大丈夫だとは思うけど…気の緩みが大惨事なのは世の常だからな。
診療所へ着くと、そこにはすでに多くの人が待ってくれていた。
基本的には「ひと目見てみたい」人が大半だ。
重病患者がそんなに多かったら困る。
人ごみの中から、多分村長さんであろう人と診療所の院長らしき人が歩み出て挨拶をしてくれる。
「お待ちしておりました、ロンバード様」
「わざわざ有難う御座います。
まずは「魔法の飴」転売の被害者がおられないか、確認させて頂けますか」
「はい、誰もおりません。そもそも「魔法の飴」を知る者がおりません」
「ああ…それは良かった!」
転売被害が一番多かったのはやっぱり王都だった。
偽物を掴まされた人もいて、誠心誠意謝罪して治療して、本物の飴を渡して…。
それで、もしもの時は証人になってもらえるように名前や住所、いつどんな人から買ったかを書き留めた。
王都から離れるにしたがって被害者は減り…
もし東でも南でも西でも同じ結果なら、やつらの活動範囲が掴めるかもしれない。
…ともかく、ここには高額で買わされた人がいなくて良かった。
俺は胸をなでおろして、診療所の院長さんに聞いた。
「この村に、診療所の治療で治らない方はいらっしゃいますか?」
「ええ、実はこの子なのですが…」
そう言って院長さんが俺に紹介した子には…
生まれつき、腕が無かった。
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