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本気のざまぁを見せてやる!

王子様は、心置きなく結婚したい 4

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ロンバードが王都周辺から少し離れた、北の街に着いた頃。

ミリエッタは「ジンケン君とリンリ君」という挿絵たっぷりの物語を書き進め、セジュールはロンバードを害そうとした連中を苛烈に尋問(半ば拷問)し、その背後にいる者の洗い出しに奔走した。

俺は人権(人が人間らしく生きる為に持っている権利…なので人権だそうだ)を保護する為の法を整備すべく、現在の国勢に合わせた人権保護のあり方を考えているところだ。


「参政権か…まずは街や村の代表が王に直訴できる環境を整える所から始めるのはどうだ?」
「領主の権限を牽制する為にも必要ですわね」

参政権…本来は、自分たちの国を治める者を国民自ら決める権利の事だそうだ。
ミリエッタ曰く、魔物が蔓延る世界では強権的な中央集権国家の方が生き残るために適しているのでは?との事。
彼女がこれほど政治に明るいとは…予想外だ。


「平等権も、階級制度が機能している今は「身分を理由に搾取する事を禁ず」る事と、身分に拠って量刑に差が出ないようにする事、と…」
「少なくとも性別による差別の撤廃は必要ですわ」
「ああ、性別に限らず良い人材を登用していくことが今後のオーセンには必要だろう」

とはいえ、ミリエッタが学園に通っている事は、この国では珍しい事なのだ。
大抵の家では女を外に出さない。
悪人共から狙われやすい事もあるが、結婚して子どもを産み育てる以外の事を求められないから…

「はぁ?だから女に学はいらない?母親に学が無ければ、何を子どもに教えられるというのです?そういうことを抜かす連中に限って、子育ても家事も母親に丸投げして、子どもの不出来は全て母親のせいにして、子どもの秀でた部分は自分のおかげとふんぞり返るだけのくせに!糞オブ糞の豚どもは、そうして何の苦労もしていないのに美味しい所だけを搾取するのに慣れきって、そんなだから増長した糞野郎どもが…」
「ミリエッタ、落ち着け」

だが、これに関しては中々苦労しそうだ。
まず女性が外を歩いても平気な世の中にしなければならんし、何より女性というものを我々は知らなさ過ぎる…出会う機会もほぼ無いからな。


「それから自由権…人が人間らしく生きていくために保障されるべき権利ですね。
 不当に逮捕されない事、理由なく自分の財産や所有物を取り上げられない事、仕事を自由に選べる事…と、色々ありますけれど、問題は『経済活動の自由』ですわ。
 転売ヤーどもに口実を与える事にもなりかねませんもの」
「確かに、何がしかの注釈が必要だろうな」
「注釈…但書、そうですわね…」

奴らを取り締まろうという時に、取り締まれない法律を作るわけにはいかん…

「商取引の法律を改定するのはどうだ?」
「それも良いですわね」

何事も法律、法律…
仕方が無い事だが、将来愚昧な王が出現した時のことを考えれば仕方が無いとも言える。
少なくとも法さえ機能していれば、悪事を働く者を捉えて処罰することはできるからだ。

「善き王になる為にはこれも必要な事だ」
「そうですわね、リブリー陛下の「粛清の嵐」のもとですら裁判が開かれ記録が残されておりますもの」

偉大な父を持つと大変だが、無理に追い越そうとするものではない。
父に無いものが自分にあるかは分からないが、意思を継ぐことも十分意義のある事だ。

俺はセジュールに聞く。

「ところで、留学生たちはどうしている」
「これといって何も…と言いたいところですが、護衛の1人が頻繁に彼らと連絡を取っているようです」
「ああ、それはこちらが許可しているんだ。
 皆ロンバードに何かしてやりたいと仰ってな」
「…間諜を許したのですか?」
「そうだ、5つの大国を公平に出来るのなら大した事ではない」

ロンバードが俺と結婚出来なければ魔法の種の視察も無いのだから、あちらとて協力せざるを得ん。
それに、小国は皆そうなる事を期待して種を持ち帰ったのだから…。

「国を思う心を強く持った方たちだ…横恋慕で国を傾けるような愚か者はあの中に一人もいない」
「そうですわね」
「だからこそ手強い…という事ですね」
「そうだ。
 ところでセジュール、尋問の報告を頼む。
 ロンバードを狙った奴らは、誰に雇われたと言っているんだ?」
「はい、やはり転売で儲けていた者たちでした。
 兄を攫って治癒を出来なくし、脅して飴を作らせるつもりだったようです」

単純で短絡的。
末端の転売屋だろう…その上はすでに紐の情報を掴んでいるはずだからな。

「取り敢えずそれを捕縛するか。
 誘拐の指示は、誰が見ても立派な犯罪だからな」
「まだ飴を転売する事に固執している所を見ると、小物でしょうしね」
「大物は、髪の毛紐で騒ぎが起きるまで我慢だな」

見てろよ、転売屋ども。
必ず後悔させてやるからな。

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